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コラム

荊冠旗 第2723号/15.07.20

 存在だけで安心感があった。だが巨大な足跡を残した沖浦和光先生が8日、亡くなった。88歳だった。幼少時の交通事故で腎臓が片方ダメになったが3年前まではしのいできた。ところがもう一つの腎臓も悲鳴をあげ、週3日の透析生活となった
▼そのころから体の衰えは隠せなくなった。それでも5月には大衆演劇鑑賞と交流会に参加し演説もぶった。まだまだ大丈夫だと誰もが思った
▼部落解放運動の不祥事が06年に発覚した。この不祥事をどう総括し、今後に対応するのか。「提言委員会」がつくられ、座長が上田正昭さん。沖浦さんは提言の起草委員会の委員長を務めた
▼部落解放運動の何がどう問題か、何をどうすべきか、苦言を呈し、どうどうと持論をのべ、提言をまとめた
▼沖浦さんは知の巨人でもあった。青年時代にマルクス主義から出発した。その根底には人間解放があった。マルクスの限界とその克服をめざすなかで、部落問題の重要性に気づいた。数多くの部落を廻り、全国の人びとを魅了した
▼歴史学や民俗学だけでなく、隣接の諸学との学際的協力のもとで新たな部落解放理論の構築もめざした
▼ある党を除名されたあと、沖浦さんは新たな理論創造へ何冊ものノートを細かい字で書き込み作成していた。その努力に頭が下がった
▼どんな権力や権威にも屈服せずに生き、運動や理論を底上げした
▼12年3月、沖浦さんは上田さんとともに松本治一郎賞を受けた。

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