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労働法制の改悪に反対し、雇用での差別構造を是正する法整備を実現しよう

「解放新聞」(2015.04.13-2710)

 21世紀に入り格差社会がさらに深刻化し、非正規労働者が増え続け、現状では2千万人をこえ全労働者の38%となった。非正規労働者が1千万人をこえたのが1996年ごろで、その頃から正規労働者は減り続けている。正規労働者が担っていた業務を非正規労働者が担うようになってきた。経営者にとっては、非正規労働者を極端に低い賃金と労働条件で雇えるからだ。とくに将来を担う15歳から34歳までの若者でみると、非正規労働者は50%をこえており深刻だ。そして年収200万円以下の労働者も1千万人をこえている。その一方で、富は一部の者に集中し、「カネ余り」と投機マネーが経済を歪めている。いま、このような格差社会の是正こそが求められている。
  そのような状況のなかで、政府は3月13日、「労働者派遣法改正法案」を閣議決定し、国会に提出した。同法案は、派遣期間の制限を実質的に撤廃するとともに、均等待遇原則の導入を見送るなど、〝生涯派遣で低賃金″の労働者を拡大させるものだ。格差社会をさらに深刻化させる法改悪であり、廃案に追い込まなければならない。

 現在の労働者派遣法では、派遣先の企業などが「同じ業務」に継続して派遣労働者をうけいれることができる期間は、専門業務などを除いて「原則1年(最長3年)」とされている。それが改正案では、①専門業務もふくめた全業務で「原則3年」とされ、3年ごとに人を入れかえれば、無期限でその業務を派遣労働者に任せることも可能となり②派遣会社に無期雇用されている派遣労働者は無期限でうけいれてよい、となっている。3年経過する時点で労働組合から意見を聞くことも明記されるが、労組は意見がいえるだけで拒否権はない。つまり、正規労働者が派遣に置きかえられるのを防ぐために設けられた歯止めがなくなり、派遣は「臨時的・一時的」という原則を担保する制度が骨抜きにされるということだ。
  派遣労働者の賃金・労働条件は、派遣先の正規労働者に比べて極端に低いのが現状だ。本来、派遣先の労働者と同じ仕事をしている派遣労働者は、賃金などの労働条件が同じであるべきだ。この「均等待遇」を実現する法制度こそが必要なのである。オランダなどでは、「均等待遇」が法制化され、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)も実現し、社会を豊かにしている。日本でもそのような制度が必要だ。


 もうひどつ今国会で焦点になりそうなのが、「残業代ゼロ」法案といわれるものだ。正式には「労働基準法等の一部改正」で、「高度プロフェッショナル制度」の創設や「裁量労働制の対象業務の拡大」が焦点になる。
  現在、労働時間に関しては、「1日8時間以内、1週間40時間以内、それ以上働かせたら残業代を払う」というルールがある。しかし政府は、「多様で柔軟な働き方」の名のもとに、「高度」な業務の「一定年収以上」の労働者を、その労働時間ルールの対象外にし、「成果」のみが求められる労働者にしようとしている。いくら働いても残業代はでないし、労働時間の制限はない。「高度の専門的知識、技術または経験を有する」業務が対象とされるというが、あいまいな規定だ。具体的には対象業務と年収の要件を省令で定めるとされており、将来、対象が拡大される可能性も強い。
  さらに、現在も同じような制度として「裁量労働制」(企画立案業務に限定)があるが、この対象業務について営業職にも拡大しようとしている。
  このように、制度がいったん導入されると、対象が拡大し、労働者の人権を守る労働時間ルールが破壊される恐れがある。そして現在も問題となっている長時間労働に拍車がかかり、過重労働による精神疾患や過労死等が増加する危険性がある。「蟻の一穴」にならないよう、この制度の導入を阻止する必要がある。
  いま日本では、毎年100人をこえる人が過労死で亡くなっている。昨年の通常国会では、過労死防止に関する国の責務などを定めた「過労死等防止対策推進法」が成立した。それをふまえ政府は、実効的な長時間労働抑制策こそ優先して実現すべきだ。
  また、解雇の金銭的解決制度の導入、問題点が多い外国人実習制度の拡大、などの動きもあり、これらも大きな問題である。
  安倍内閣がすすめる労働法制の改悪は、格差拡大と貧困化、労働者の人権侵害をさらにすすめ、社会を荒廃させるものである。
  格差社会をつくりだしている、雇用での差別構造の是正を求めよう。


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