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ネパール大地震で被災したダリット・コミュニティを支援し、国際連帯のとりくみを

「解放新聞」(2015.06.22-2720)

 4月25日、マグニチュード7.8の大地震がネパールを襲った。その後も、百回以上の余震が続いている。1934年1月のビハール・ネパール地震いらい81年ぶりの大きな地震に見舞われたネパールでは、人びとの間に不安が広がる。被害は甚大で、5月末現在、死者8664人、負傷者2万1974人、全壊家屋50万棟、半壊家屋27万棟と報告されている。被災地域も広範で首都カトマンズをふくむ30の郡(全国75郡)にとどまらず、インド、バングラデシュなどの近隣国にもおよんだ。
  反差別国際運動のパートナー団体であるFEDO(フェミニスト・ダリット協会)は、もっとも脆弱な立場に置かれているダリット女性のための運動団体であり、カトマンズに本部事務所をもち、全国に56の支部があり、5万人のメンバーを有する。地震から4日後、FEDOのスタッフたちはカトマンズから15キロ離れたゴダワリ村を手はじめに救援活動にはいり、山間部や農村の被災地をまわった。
  東西に細長く延びるネパールは、面積14.7万平方キロメートル。北海道の1.8倍くらいの土地に2649万人が暮らす。そのうちカースト制度のもと最下層に置かれてきたダリットは300~460万人を占めるといわれる。ダリットは〝積れている″とみなされ、〝不可触″としてあっかわれてきた。ネパールは家父長制社会であり、女性は男性支配のもと、常に抑圧的な位置に置かれてきた。そのためダリットの女性はカースト、ジェンダーという二重の差別に苦しめられてきた。
  ダリット世帯の多くは貧困線以下の生活で、十分に食べることができない。ダリットの子どものうち50%は栄養不良にある。文字の読み書きができる識字率は一般的には男性61%、女性33%だが、ダリットの女性となると7%という低さだ。ダリット女性にたいする暴力も深刻で、FEDOの調査によれば暴力被害の経験者も多い。また、人身売買はネパールの大きな社会問題であり、多くの少女がインドに売られている。
  こうした情況を背景に、ダリット女性の平等な権利と公正な社会の実現をめざして、FEDOは1994年に発足した。ダリット女性のエンパワーメントのための人権トレーニングやスキルトレーニング、市民的権利の平等な保障のための行政交渉など、さまざまな活動を展開している。
  ダリットの人口の大多数は、農村部に住んでいる。居住区は立地条件の悪いところにあり、大雨や台風、伝染病などの被害をうけやすい。大震災では、救助や救援活動から取り残された居住区が多数あるようだ。5月4日にFEDOから届いた、つぎの情報は、それを示している。



 (FEDOの救援活動報告)政府の援助が遅れているため、多くの被災者は地元の役場にいき、テントや食料・水などを提供するよう訴えています。カトマンズから15キロ離れたゴダワリ村では36世帯が家を失いましたが、役所は、そのうち近場の4世帯にしか救援物資を配りませんでした。人びとの訴えを聞いて、私たちはすぐに役場とかけあい、残る32世帯にもテント、食料、衣類を配ることを申し出ました。
  カトマンズのゴンガブ・バス駅から7キロ離れた所にあるサングラ村では7人が死亡、45世帯のうち41世帯が家を失いました。プトゥン村では22世帯のうち12世帯が家を失いました。私たちがいくまで、どこからも救援物資は届いておらず、村人たちはテントもないまま戸外で避難生活を続けています。「すべてなくした」と、壊れた家のがれきの山を見ながらサングラ村のラメッシュ・マン・シン・クンワルさんはいいました。さっそくテント、マット、食料、薬などを被災者に配りました。見捨てられたのではないかという絶望に似た気持ちのなか、私たちの訪問は希望の灯をともしたようです。
  カンテ・スナルさんは、サングラ村でも人里離れた所に住んでいます。家は全壊し、同じダリットの家族とともに、屋外に避難しています。「地震のあと何も食べていません。孫たちはお腹がすいたといって泣きます。どうすればいいのか…」と、スナルさんは涙を流しながら訴えました。「ぜいたくはいいません。雨露をしのげるテントと食べ物さえあれば助かります。役所からは誰もきません。私たちは貧しいダリットです。だから何ももらえないのかもしれません。お願いします。どうぞ助けてください」。私たちは被災家族に、テントなどを提供しました。「ありがとうございます。ご恩は一生忘れません」と、人びとから感謝の言葉をいただきました。


 緊急支援のよぴかけをおこなったIMADRには6月10日現在、166万1142円のカンパ金が集まった。こうした緊急支援金をもとに、これまでにFED0は21村1511世帯に救援物資を届けてきた。また、余震のうわさなどに惑わされないように情報を伝えたり、人びとを勇気づけたり、輸血をよぴかける救援活動をしながら、ダリット被災者の実態について情報を集め、つぎにとるべき行動をうちたてている。
  地震発生から1か月以上がすぎた。被災者の仮設住宅建設や授業再開などのニュースが伝えられるなか、緊急の救援からも取り残されているダリットやマイノリティ破災者が多数いると思われる。FEDOによる 〝届いていない人びとに届ける″活動と、救援・復興での平等と公正を確保するための活動を、反差別の運動にかかわる私たちは、日本から支えていかなくてはいけない。


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