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深まる人権・平和・民主主義の危機に抗して、部落解放運動をいっそう強化し、協働・共生の闘いをすすめよう

「解放新聞」(2015.12.28-2744)

 今年は敗戦・被爆70年であり、大きな節目の年に、あらためて平和や民主主義、人権確立社会に向けたこの国のありようを考える出来事や闘いが続いた年であった。
  安倍政権は、「特定秘密保護法」の強行成立にはじまり、集団的自衛権容認の閣議決定と、それにもとづく「戦争法」(安保関連法制)の強行採決で、米国などとともに、戦争のために自衛隊を海外派兵することを可能にした。この「戦争法」反対の闘いでは、12万人ともいわれた8月30日の国会包囲闘争だけでなく、9月19日の参議院本会議の強行採決までの期間、全国各地でも多くの市民が結集して闘いが続けられた。
  この「戦争法」反対の闘いでは、さまざまな考え方はあるものの、憲法違反の法律を強硬に成立させようとする安倍政権にたいして、戦争反対と民主主義破壊を許さない行動が持続的にとりくまれ、「戦争法」成立後も、廃止に向けた統一した反対運動が継続されている。部落解放同盟も「戦争をさせない1000人委員会」に結集するとともに、関東ブロックの各都県連を中心にした国会包囲闘争はもちろんのこと、全国各地で積極的に反対運動にとりくんできた。戦争は最大の差別であり人権侵害である。
  この間、パリでの無差別襲撃をはじめ、IS(イスラム国)による各国での襲撃が続いており、報復として、シリアなどへの空爆も激化している。一方、ISに参加する若者たちの行動の背景には、差別と貧困がある。もちろん無差別襲撃には断固反対である。しかし、欧米の一方的な価値観の押しつけと恣意的な軍事介入もまた、泥沼の戦争状態を長期化させ、ISをうみだしてきた。いま求められているのは、差別、貧困、格差の解消であり、そのための支援策の強化である。
  沖縄の新基地建設反対闘争でも、同じように本土から強制された差別構造のなかで坤吟している沖縄の闘いと連帯していく運動の質を獲得していかなければならない。それは、危険な原発施設を地方に押しつけてきた社会のありようを問う反原発の闘いでも同様だ。まずは、みずからの運動の質を問い直し、あらためて差別と戦争に反対する闘いを強化していこう。

 今年はまた、「同和対策審議会」答申50年、「部落地名総鑑」発覚40年という、これまでの闘いやとりくみの成果と課題をあらためて検証する大きな節目の年でもあった。「同対審」答申は、いうまでもなく、部落問題の解決を国の責務であり、国民的課題であるとして、その後の「特措法」制定の原動力となったものである。「特措法」によって、部落内の住環境は大きく改善され、部落解放運動の求心力は増し、組織の拡大にもつながった。「部落地名総鑑」糾弾闘争では、差別を商うことと、多くの企業がこの差別図書を購入していたことなど、部落差別の根深い実態が明らかになり、就職差別撤廃や公正採用のとりくみもすすめられるようになった。さらに、全国各地で「同和問題企業連絡会」などの、部落問題の解決に向けた企業自身の組織づくりや運動もはじめられるようになるなど、部落解放運動との連帯、協働も前進した。
  このように、2つの闘いは、部落解放運動の成果として大きく取りあげられるものであった。しかし、一方で「特措法」のもとでの同和対策事業をめぐる不祥事が、部落解放運動の社会的信頼を大きく失墜させてきたのも事実である。部落解放同盟は、この不祥事を構造的な問題、体質として、その原因・背景を切開し、社会的信頼の回復に努めてきたが、途半ばである。部落解放運動の再生に向けて、さらに努力を重ねよう。
  部落解放運動は、部落差別撤廃と人権確立の闘いのなかで、その真摯で献身的な活動によって、これまで多くの人びとの共感と連帯をかちとってきた。この大きな運動の財産を失ってはならない。いまなぜ部落解放同盟なのか、部落解放運動なのか、この重い問いかけに、真剣に向き合うことが求められている。

 「同対審」答申50年のとりくみでは、中央本部と都府県連が協働して、行政への要請行動にとりくんできた。多くの自治体では、知事や教育長に直接、要請書を手渡し、あらためて部落問題解決に向けた自治体の姿勢を確認することができた。今回の全国行動では、これまでの運動や行政交渉の成果を積みあげ、知事要請にまで結びつけた多くの組織の努力があった。全国行動の成果を、今後の地域でのとりくみの強化につなげていこう。そのためにも、支部段階でのとりくみへの都府県連の支援、都府県連へのブロックの支援の強化などにとりくむ必要がある。今回の全国行動をとおして、そうしたブロック内での都府県連どうしのネットワークを強めていく方策の検討も課題となった。
  また、地域での要求・課題の集約も重要なとりくみになっていることが明らかになっている。この間、組織の高齢化や、若者の運動離れが、全国の組織の共通した課題であると指摘されているが、有効なとりくみが打ちだされていないのが現状である。全国的な問題意識と課題の共有化をはかり、組織強化、拡大と人材育成に向けたとりくみをすすめていこう。
  差別糾弾闘争では、差別身元調査事件や土地差別調査事件などとともに、戸籍や住民票の不正取得防止のための本人通知制度の導入などに全国的にとりくんできた。さらに、ヘイトスピーチをはじめ、ネット上の差別情報の氾濫にも、カウンター行動や削除要請以外の有効な対策がないままであり、人権侵害救済制度の早期確立は急務の課題だ。また、部落差別が現代社会のさまざまな問題を背景にした人間どうしの関係性を媒介にしたものであり、その変革をめざす部落解放運動は、匿名性のもとに拡がるネット社会のなかのこの関係性の欠如に対抗しうる運動の質を獲得することも必要だ。
  狭山再審の闘いでは、3者協議が続けられている。この間、「証拠リスト」の開示をかちとった。こうした成果をもとに、弁護団は新証拠を提出するとともに、徹底した証拠開示、事実調べを求めている。この間の高裁前アピール行動や再審要求市民集会などでの多彩な訴えなど、狭山の闘いのすそ野は確実に大きく拡がっている。裁判所を動かすには、弁護団の活動とともに、石川さん無実の世論の高まりが必要だ。狭山の闘いは、一貫して反差別共同闘争として闘い抜かれ、労働者、学生、市民の大結集を実現してきた。それは、半世紀以上におよぶ石川さんの無実の訴えにこそ真実があるからだ。今年の闘いに倍するとりくみで、必ずや再審勝利をかちとるために全力をあげよう。


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