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部落解放・人権政策確立に向けたとりくみを強化し人権と平和の確立をめざそう

「解放新聞」(2016.05.16-2762)

 安倍政権のもとで、人権や平和の課題が大きく後退している。憲法違反の「戦争法」が施行され、自衛隊が、米軍などとともに戦争をするために海外派兵される。敗戦後70年間、歴代の自民党内閣さえ認めてこなかった集団的自衛権の行使を、安倍政権は解釈改憲によって閣議決定し、「戦争法」を強行成立させた。
  安倍政権は、沖縄での辺野古新基地建設でも明らかなように、あくまでも米国との軍事一体化をすすめ、「戦争をする国」として、国際社会、とくにアジアのなかでの孤立を深めている。しかし、全国では、この「戦争法」の廃止を求める2000万人統一署名活動を中心に反安倍政権のとりくみがすすめられている。
 一方、安倍政権は、今夏の参議院選挙で改憲を争点 にすると明言している。参議院で3分の2の改憲勢力を獲得し、憲法改悪をすすめようとしている。自民党改憲案では、第9条の全面改悪だけでなく、「緊急事態条項」を創設し、「大規模な自然災害」などを口実に、内閣が法律と同様の命令(政令)を定めることが可能になるなど、人権を無視した戦前回帰の内容になっている。まさに「戦後レジーム(体制)」からの脱却をめざす安倍政権の暴走を許してはならない。
  貧困と格差が深刻な社会問題になっているにもかかわらず、反人権主義・国権主義の政治がすすめられるなかで、そうした社会への不満や不安と差別排外主義が安易に結びついている。公然と差別煽動をくり返すヘイトスピーチには、国連人種差別撤廃委員会からも厳しい勧告がだされている。大阪市では、今年1月に「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」制定がされたが、差別を放置することは許されない。差別を容認し、支える社会意識を変革していくためにも、部落解放・人権政策確立に向けたとりくみを前進させよう。

 部落解放・人権政策確立要求第1次中央集会を5月23日にひらく。中央実行委員会では、すでに第36回拡大役員会でこの間のとりくみ経過や、さまざまな人権をめぐる情況をふまえた集会基調などを協議し、情勢認識を共有してきた。とくに安倍政権のもと、厳しい政治情況のなかで、昨年11月にひらかれた和歌山県実行委員会などがとりくんだ東京集会で、自民党の稲田朋美・政務調査会会長が講演し、部落差別問題にかかわる法制定に前向きの姿勢が示された。
  その後、自民党への要請行動などにとりくんできたが、本年2月には政務調査会内に「差別問題に関する特命委員会と、その委員会のもとに「部落問題に関する小委員会」が設置された。小委員会(委員長=山口壯・衆議院議員、事務局長=門博文・衆議院議員)では、法案作成に向けて、部落解放同盟などの運動団体や学識経験者からヒアリングを受け、今日の部落差別の実態や、「特別措置法」による環境改善、その後の人権教育・人権啓発のとりくみでの成果と課題などについて論議をすすめてきた。また、法務省からの人権擁護行政にかかわる報告もふまえて、部落差別解消に向けて、どのような内容の法案が必要なのかを精力的に協議してきた。
  われわれも、ヒアリングでは、「全国部落調査」の発行・販売や大阪・兵庫を中心にした大量差別文書配布事件のほか、結婚差別や差別身元調査、インターネット上の差別情報の氾濫など、悪質きわまりない部落差別事件の実態を報告し、ヘイトスピーチと同様に、こうした確信犯的な差別事件にたいして、実効ある措置が必要であることを明らかにしてきた。

 安倍政権は、「人権委員会設置法案」などの人権侵害救済制度の創設には否定的な一方、人権行政については、「差別や虐待のない社会の実現を目指し、個別法によるきめ細かな人権救済を推進する」としている。そうしたなかで、「障害者差別解消法」が制定され、本年4月から施行された。
  しかし、策定が義務付けられている「対応要領」を実際に作成した全国の市区町村は、21%にすぎない。また、相談窓口である「障害者差別解消支援地域協議会」も、設置されている市区町村は6%である。
  このように、法律の実効性の確保のためにも、まずは差別や人権問題に向き合う政治の姿勢が重要である。今国会では、ヘイトスピーチ禁止に向けた法案が審議され、与野党で修正協議がすすめられている。
  また、この間の自民党に設置された委員会では、「部落差別の解消の推進に関する法律案」がとりまとめられた。法案の目的では、「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、…日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」として、「部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする」と明記されている。
  人権確立の第一歩は「部落差別は社会悪」であることを明確にすることだ。5月の中央集会に結集し、闘いを大きく前進させよう。


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