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部落解放・人権政策確立に向けたとりくみ成果を積み上げ、第2次中央集会を成功させよう

「解放新聞」(2016.10.03-2781)

 解釈改憲である集団的自衛権行使容認の閣議決定にもとづく、憲法違反の「戦争法」の強行成立は、敗戦後70年、平和憲法のもとにあったこの国のありようを大きく変化させるものであった。いまや、自衛隊が海外派兵され、米軍などとともに戦争行為をするのである。平和憲法のもとで、国際的な紛争の解決を少なくとも武力行使ではなく、協調と対話ですすめていくという、平和外交路線をみずから放棄するものとなった。
  しかも、11月に南スーダンに派遣される自衛隊には、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」のための軍事訓練がおこなわれている。いま、南スーダンは、昨年8月に停戦合意と統一政府が成立したものの、首都ジュバをはじめ、各地で政府軍と反政府軍の武力衝突がおこり、ふたたび内戦状態にある。もはや国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣する要件である「紛争当事者間の停戦合意」そのものが失われているにもかかわらず、南スーダンへの自衛隊派遣に固執するのは、「戦争法」の具体的な発動を狙うものにほかならない。
  憲法違反の「戦争法」によって、自衛隊は「殺し殺される」ことになる。まさに、憲法を変えるために戦争をするのである。こうした「戦争法」の発動と憲法改悪へすすむ安倍政権を断じて許してはならない。
  また、安倍政権は、沖縄での辺野古新基地建設、東村高江地区でのヘリパッド建設強行でも明らかなように、あくまでも米国との軍事一体化を強化しようとしている。さらに、軍事産業の育成をめざし、武器輸出三原則を放棄し、企業や大学などでの軍事研究への支援策をすすめている。
  このように、安倍政権は、「戦争をする国」づくりのために、韓国との尖閣問題、中国との南シナ海問題や朝鮮民主主義人民共和国の核実験を口実にしながら、国権主義と民族排外主義の政治をすすめている。ヘイトスピーチをくり返す「在特会」などは、差別と貧困、格差を自己責任とする安倍政権が生み出したものである。

 貧困と格差が深刻な社会問題になっているにもかかわらず、反人権主義、国権主義の政治がすすめられるなかで、そうした社会への不満や不安と差別排外主義が安易に結びついているのが今日の社会情況である。公然と差別煽動をくり返すヘイトスピーチは、国連人種差別撤廃委員会からも厳しい勧告がだされている。
  大阪市では、本年1月に「ヘイトスピーチ規制条例」が制定され、先の通常国会でも5月にようやく「ヘイトスピーチ規制法」が成立した。「規制法」は罰則規定がなく、ヘイトスピーチの対象者である「本邦外出身者」について「適法に居住していること」などの要件を設けるなど、問題点も多い。しかし、こうした理念法であっても、神奈川県川崎市では、市がヘイトデモでの公園使用を不許可にし、カウンター行動のとりくみでヘイトデモを阻止するなど、「規制法」の効果もあらわれている。
  人権の個別課題では「男女雇用機会均等法」「障害者差別解消法」「DV禁止法」や「子どもの貧困対策法」など、それぞれに不十分な点もあるが、法律での対応がされている。また、性的マイノリティに関する法案も検討されている。部落問題に関しては、33年間にわたる事業法である「特別措置法」が終了した後は、「人権教育・啓発推進法」で自治体などがとりくみをすすめてきたが、財政的な面もふくめてまだまだ課題も多い。
  この間、部落解放・人権政策確立のとりくみとしで、「人権擁護法案」や「人権委員会設置法案」制定に向けて、中央実行委員会-都府県実行委員会が一体となって活動を強化してきたが、残念ながら法制定を実現できなかった。「人権擁護推進審議会」が2001年5月に提出した「人権救済制度の在り方について(答申)」で要請されてきた人権侵害救済制度の確立という課題を放置している政治責任も大きい。一方、「人権委員会設置法案」制定に向けたとりくみの総括でも明らかにしてきたように、実行委員会の活動として、とくに当時の民主党政権にたいする国会闘争に集中せざるをえなかった情況にあったものの、社会的に部落差別の実態を強く訴えるとりくみの弱さもあった。

 今日、「在特会」などによるヘイトスピーチにみられるように、公然と差別を煽動するなど、日本の人権情況はますます後退している。中央実行委員会や都府県実行委員会では、部落問題解決をふくめた人権問題へのとりくみ強化に向けて、さまざまな行動にとりくんできた。この間、自民党政務調査会のなかに「差別問題に関する特命委員会」と「部落問題に関する小委員会」が設置され、部落差別解消に向けた論議がすすめられてきた。この小委員会でのヒアリングで、部落解放同盟は「全国部落調査」復刻版出版事件や、大阪・兵庫を中心にした大量差別文書配布事件などを取りあげ、部落差別の実態を強く訴えた。さらに、部落差別解消に向けた国・自治体の行政機構の整備、実態調査の実施、施策推進のための審議会の設置など、法案に盛りこむべき内容を強く要請してきた。また、5月の第1次中央集会では、あらためてこうした差別事件の実態を明らかにするパンフを作成、国会議員や地方議会議員への要請はもちろんのこと、各地での学習会や集会にも活用してきた。
  こうした中央―地方の一体となったとりくみの積み重ねのなかで、「部落差別解消推進法」が、自民、民進、公明の3党共同での議員提案として国会に提出された。法案は先の通常国会で、衆議院法務委員会での趣旨説明、質疑までおこなわれたが、継続審議となり、今臨時国会で審議が再開される。
  法案は、第1条で「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況に変化が生じている」とインターネット上の差別情報の氾濫などをふまえながら、「部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」としている。こうした目的をふまえ、法案では、国と自治体の責務(第3条)、相談体制の充実(第4条)、教育・啓発の推進(第5条)、部落差別の実態調査(第6条)が盛りこまれている。法案には、救済制度や差別を禁止する内容はふくまれていないが、法案の趣旨をふまえれば、鳥取ループ・示現舎などのような悪質きわまりない確信犯的な差別事件を放置することは許されない。
  差別を容認し、支える社会意識を変革していくためにも、「部落差別は社会悪」であることを明確にすることは重要だ。10月の第2次中央集会に結集し、「部落差別解消推進法」制定の実現に向けて、闘いを大きく前進させよう。


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