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運動方針案の豊富化に向けて、全国で積極的な討議をすすめよう

「解放新聞」(2018.02.12 -2846)

 「それで何人死んだんだ」

 1月25日の衆議院本会議での野党側の代表質問で、沖縄で米軍機事故が続発していることを追及したときの自民党の松本文明・内閣府副大臣のヤジである。在日米軍基地が集中するなかで、米軍関係者による婦女暴行、飲酒運転、強盗などの悪質な犯罪が多発するとともに、米軍ヘリコプターからの部品落下や不時着事故が相次いでいる。まさに日本社会のなかの構造的な差別問題として沖縄の米軍基地の存在がある。

 しかも、いまもなお飛行が続けられているなかで、日常的にいのちとくらしが脅かされている沖縄県民にたいするまったく許せない言語道断の暴言である。副大臣の辞任などは当然であり、強く議員辞職を求めたい。

 「・・・たいへんな痛みと犠牲と傷を負ってきた沖縄県民にたいして、この法律が新しい沖縄振興のスタートになりますように、そして多くの皆さんのご賛同を得て、この法律は成立しようとしています。しかし、この法律が、これから沖縄県民の上に軍靴で踏みにじるような、そんな結果にならないことを、そして私たちのような古い苦しい時代を生きてきた人間は、再び国会の審議が、どうぞ大政翼賛会のような形にならないように、若い皆さんにお願いをして、私の報告を終わります」

 これは、1月26日に死去された野中広務・元官房長官が、1997年4月11日の衆議院本会議で、当時の自民党幹事長代理時代に、衆議院安保土地特別委員長として、「駐留軍用地特別措置法改正案」の採決にあたっての委員長報告の最後の発言である。この発言は「改正案」が沖縄の米軍基地の土地使用を継続させる内容であり、ほぼ9割の賛成で可決されることにたいするものであるが、当時の新進党の要求で議事録から削除されている。

 野中元官房長官は「国旗・国歌法」を強引に成立させるなど、その政治姿勢、手法を全面的に評価することはできないものの、この発言から約20年後、沖縄県民に犠牲を強いることが当然のような今回の許せない暴言である。この暴言が、沖縄の民意を無視し、強権的に沖縄新基地建設をすすめ、憲法改悪策動を強める安倍政権の本質をあわらすものであることは明らかだ。

 昨年10月の衆議院総選挙で、ふたたび改憲発議に必要な3分の2以上の議席を確保した安倍政権は、年内の改憲発議に向けて、自民党内の論議を加速させている。一般運動方針案でも、こうした厳しい政治情勢のもとでの部落解放運動のとりくみ課題として、差別と戦争に反対し、憲法改悪阻止の広範な闘いの必要性を強調している。

 今年は、世界人権宣言70周年である。第2次世界大戦の深い反省をもとに、人権と平和の確立こそが人類普遍の、共通の課題であることを明らかにした、この世界人権宣言の意義をあらためてふまえ、安倍政権による戦争推進政策に反対する闘いを強化しよう。

 国際情勢でも明らかにしているように、世界的に、この間の新自由主義政策が生み出した貧困や格差への不満、不安を背景に、公然と差別や暴力を煽動する差別排外主義の政治勢力が伸張している。また、米国のトランプ政権は、「米国第一主義」を掲げ、武力外交で朝鮮半島情勢を緊迫化させ、エルサレムをイスラエルの首都に承認し、中東情勢も悪化させている。しかも、新核戦略指針では、核兵器使用を排除しない新方針を追加している。こうしたトランプ政権に一方的に追従し、憲法違反の「戦争法」強行成立をはじめ、防衛費の増大で「戦争をする国」づくりによる日米軍事一体化をすすめているのが、安倍政権である。

 日本でも、在日コリアンにたいするヘイトスピーチ、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」での殺傷事件など、差別と暴力が日常化している。東京都町田市では、市内の小中学校にJアラートによる避難訓練の指示を出しているが、同じ市内にある朝鮮学校には出していない。町田市行政は、2013年には、市内のすべての小学校1年生に配布する防犯ブザーを朝鮮学校だけに配布せず、厳しい批判を受けて撤回したこともある。

 こうした日本の人権状況の実態こそ、反人権主義、国権主義の政治をすすめる安倍政権が生み出したものだ。差別排外主義と断固対決し、反差別共同闘争を軸にした部落解放運動をすすめよう。

 2016年12月に「部落差別解消推進法」が公布、施行され、われわれは、この「推進法」の活用、具体化に向けてとりくみをすすめてきた。

 「推進法」の周知徹底では、都府県、市区町村の広報紙への掲載、テレビでの紹介、リーフレットやポスターの作成など、行政をはじめ都府県実行委員会、共闘団体による成果が報告されている。また、大阪では、公布・施行された12月16日にあわせたグッズ作成や街宣活動がとりくまれた。

 「推進法」は、いまなお部落差別が厳しく存在することをふまえ、部落差別を許さない社会をめざすと明記している。「推進法」の周知は、こうした「推進法」の意義を広く訴え、ともに部落差別撤廃のとりくみを前進させていくことをよびかけるものである。部落解放運動の拡がりに向けて、今後とも積極的なとりくみをすすめよう。

 相談体制の充実と教育・啓発の推進の課題では、いまだに多くの自治体が、国の動向をふまえながらという消極的な姿勢であるが、兵庫県たつの市では、「推進法」をふまえた条例が制定された。これらの課題では、自治体にたいして「推進法」制定の意義をふまえ、積極的な施策を求めていかなければならない。都府県知事、市区町長への要請行動や行政交渉を強化しよう。
 「推進法」は部落解放行政を推進するための指針であり、基本理念を明確にしたものである。行政交渉では、あらためて部落問題解決に向けた行政責任を明確にさせ、行政機構の充実をふくめ、施策の推進を求めていくことが必要である。

 また、教育・啓発の推進についても、「推進法」の内容や意義についての職員研修をはじめ、部落問題研修の充実を求めていかなければならない。さらに、学校現場での同和教育推進に向けて、教職員のための部落問題学習教材の開発や同和教育指針の見直しなども重要な課題である。

 こうした「推進法」具体化に向けた行政交渉のとりくみでは、部落差別の実態を明らかにし、必要な施策を要求していくことが求められている。実態調査については、現在、国が調査方法、内容を取りまとめている段階であるが、部落差別の実態を正確に把握できる調査内容を要求していくことはもちろんのこと、大阪府連が実施したアンケート調査のように、運動の課題として、われわれ自身があらためて地域の実態を明らかにし、要求の把握、集約と組織化にとりくむことも必要である。さらに、施策の推進に関する財源確保の課題では、自治体が積極的に国に働きかけるように強く求めていこう。

 「推進法」の具体化に向けたとりくみは、今後の部落解放運動の重要な課題である。「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」などの個別人権課題の法制化をふまえ、差別禁止をふくむ包括的な人権侵害救済制度の確立についても論議を深めていきたい。

 狭山の闘いは事件発生から55年を迎えた。この間、弁護団の精力的なとりくみで、多くの新証拠が提出され、石川一雄さんの無実は明白になっている。1月に提出された福江鑑定は、コンピュータを使用した筆跡鑑定で、脅迫状は石川さんが書いたものでないことを科学的に明らかにしたものである。

 こうした新証拠の学習、宣伝を強化し、事実調べと全証拠開示を軸に、全国での意見広告運動など、広く狭山事件55年をアピールするとりくみをすすめよう。さらに、「全国部落調査」復刻版出版事件裁判では、意見陳述書を提出し、口頭弁論で悪質な差別言動を徹底的に糾弾することになる。全国的な裁判傍聴体制で完全勝利をかちとろう。

 安倍政権は、「働き方改革」として「残業代ゼロ法案」や解雇の自由化で、非正規労働の固定化、拡大をすすめようとしている。また、生活保護費などの社会保障費を削減する一方で軍事費を増大させている。

 一般世帯の低所得傾向などを口実にしているが、そのことこそ、アベノミクスの失敗の結果にほかならない。「人権のまちづくり」運動を活性化させ、隣保館などとの連携を深め、生活や福祉の課題を中心にしたとりくみを前進させよう。

 運動方針案では、人材育成と組織強化や男女平等社会の実現に向けた課題なども取りあげている。全国の実践やとりくみの成果を交流し、今後の闘いの基本的な方向の討議を深めていきたい。都府県連や支部でも運動方針案の討議をすすめよう。

 われわれは厳しい情勢のなかでも、荊冠旗のもとに団結し、部落解放運動を前進させてきた。全国大会での討議で運動方針案を豊富化し、部落解放-人間解放に向けた大道を切り拓こう。


 

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