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NEWS & 主張

差別性などを指摘~取材の不十分性など認める
『路地の子』で話し合い

「解放新聞」(2018.02.26-2848)

 新潮社発行の『路地の子』のなかの事実誤認と、その差別性について、著者の上原善広さん、新潮社ノンフィクション編集部の担当者との話し合いを、2月5日午後、東京・中央本部でもった。中央本部から赤井広報教宣部長(中央財務委員長)、大西副部長(中執)が出席、解放出版社の高野事務局長も同席した。

 話し合いでは、赤井部長から、昨年12月29日付で送付している「抗議と申し入れ」の趣旨と内容について、あらためて説明。新潮社と上原さんから、事前に送付されている回答書のなかで、とくに、大阪府連松原支部の結成年や支部名称を更池支部などとした事実誤認については、増刷の際に訂正するとしたうえで、あくまでも同和利権をめぐる作品ではなく、部落差別を助長するものではないことが強調された。

 しかし、当時の企業融資制度が無利子でおこなわれていたり、輸入肉の手数料が「更池支部」に支払われていたりなど、事実無根の記載があり、こうしたことが、同和利権として描かれることで、部落差別を拡大していると厳しく指摘。上田卓三・元中央執行委員長や大阪府中小企業連合会の記述も明白に間違いで、名誉毀損にあたると抗議した。

 上原さんは、事実誤認、取材の不十分性は認めたものの、地元の風聞として聞いてきたし、こうした社会的な差別意識をもとにしたこと、結果として事実誤認であっても、それに「寄り添うような」表現をすることによって、部落問題への関心をもってもらう入口にしたいと主張。登場人物をふくめて、事実でないことを描くなら、「怒濤のノンフィクション」という宣伝帯はふさわしくないという指摘に、新潮社の担当者は「文芸的ノンフィクション」として取り扱っていると回答。

 しかし、上原さんが、被差別部落のなかの父子の物語として描いているにしても、それをとりまく部落の実態が誤った内容で書かれ、そのことが事実でもなく風聞される部落差別に根拠を与えていることは間違いなく、物語の舞台となった更池地区や部落解放運動に関する記述の誤りが、「身内の書きたくないことまで書いた」という上原さんの作品そのものの質を低めることにならないか、などと問いかけたが、話し合いはかみ合わないままで、今後も、話し合いの機会をもつこととした。

 なお、新潮社にたいしては、回答書が著者の上原さんまかせの内容が多く、出版社として無責任であることを追及、まずは事実誤認の訂正に責任をもつことを要請。訂正文の差し込みだけでなく、最大限、読者に向けた措置をとり、その内容を文書で回答することを確認した。

 こうした抗議と要請を受けて、片山参議院議員は、総務大臣のほかにも、自治省時代の振興課長や岡山県副知事などを経験するなかで、「部落問題を理解してきたつもりだったが、今回、皆さんのご指摘の内容をしっかりと受けとめたい」と反省を表明。

 西島書記長が「抗議、申し入れの趣旨と発言の差別性は十分理解してもらったと思う。政党の役員、国会議員の差別発言ということで、同盟としても重く捉えている。今後は、部落差別撤廃の立場でのとりくみ、発言を要請したい」とまとめ、あらためて反省内容を文章で提出するように求めた。なお、話し合いには、日本維新の会の馬場伸幸・幹事長(衆議院議員)が同席した。

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