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主張

 

TPPに反対し国際的な動向を注視しつつ
部落の産業・畜産・食肉業の競争力を高めるとりくみを

「解放新聞」(2018.06.18-2863)

 TPPは、アメリカの離脱という状況下で、本年3月にチリで11か国が署名し発足した。もちろん、トランプ政権は、日本に二国間協議を迫ることが予想されている。しかし、いずれにしろ日本の農業や畜産に与える影響は甚大であり、とりわけ農地が中山間地域に多くを占める小規模・零細な部落の農業への影響は、はかり知れない。こうした状況にたいして農林水産省は「主要5品目は、一定死守した」「TPPとは関係なく、課題が山積している」とし、生産コスト、ブランド化をもとに、国際的競争力を高めるための施策を今後もおしすすめる方針だ。

 基本的には、農水省の方向性は誤りではないかもしれないが、私たちの農業の現状はそうはいかない。また「主要5品目」にしても一定期間の経過措置にすぎないのが現実だ。また、生産コストの課題や農産物のブランド化をはかり、国際的な競争力をという方向は、共同化など農業の大型化もふくめ、基本的にはそのとおりだと思うが、部落の多くの農村がかかえる狭小な条件不利地域、担い手の不足により高齢化する従事者などの現実からすると、相当高いハードルになっている。こうした課題や現実をもとに、先の5月22日に農水省交渉を展開した。

 農水省交渉では、まず「部落差別解消推進法」にかかわって、現場で密接な関係にある農協や土地改良区など関係団体にたいし部落問題への意識を高めるための指導の徹底を求めた。農水省では昨年、関係団体へ文書で申し入れるなどのとりくみがされているが、きわめて少額な啓発予算が減額されているという状況である。

 また、TPPにかかわって具体的なとりくみをただしたが、先にのべたように農水省の施策が部落の農家にはみえてこないのが現実である。また、農水省の施策の具体的な実施にかかわり「認定農業者制度」が大きな壁になっているのも事実で、大阪での「国の制度に頼らないとりくみ」としての独自の「認定農業者制度」を例に出しながら、小規模零細農家や脆弱な経営基盤をふまえた施策の推進を求めた。

 さらに交渉では、食の安全ともかかわって農作物の「種子」の保全についても考えを求めた。「種子」については、「主要農産物の優良な種子の生産及び普及を促進する」ための「種子法」(「主要農作物種子法」)が本年3月末をもって廃止されている。このことで一部企業や多国籍企業による「種子」の独占が危惧され、遺伝子操作による安全性、価格をふくめた安定供給にかかる問題が提起されている。このことは、きわめて重要な課題としていくつかの自治体では独自の対応策がすすめられている。この法の廃止は、いうまでもなく、現政権のアベノミクスの具体的な手法の一つである「規制緩和」にかかわるものであるが、農水省の問題意識がきわめて低いのが現状である。

 さて、各地域から出されている具体的な課題について、農水省は「経営体育成支援事業」のなかでも小規模・零細向け地域の農機具等の導入支援のための「条件不利地域補助型」の活用が有効だとしてきている。しかしながら、実際には予算枠、自治体との認識の乖離、地方農政局の対応などにかかわって、地域で農業の活性化や担い手育成に向けた事業計画が採択されないということが提起され、省としての具体的な対応を求めた。

 また、農水省交渉でも提起している具体的な課題として、これまで同和対策事業として、共同利用施設(ハウス、ライスセンター、作業場など)や農機具の共同利用、圃場整備をはじめ、さまざまな施策がおこなわれてきたが、古いものでは40年以上が経過し老朽化がすすんでいる。また、運営にかかわっても担い手不足による高齢化や耕作放棄地の増加などさまざまな状況から、運営の維持が困難になってきている状況が各地でみられる。こうした状況にたいして、制度の有効利用とともに、農業者自身の創意や工夫、意欲を高めるとりくみが必要であると思われる。そのためにも自治体への要求もふくめ、地域でのとりくみが重要である。

 部落の農業は、ひじょうに厳しい状況にある。畜産・食肉も同様で、TPPをはじめ、さまざまな社会状況が追い打ちをかけている。しかし、農業には「無限の可能性と夢」があることも事実だ。そのためにも部落の農業の変革への意識を高めなければならない。とくに、ここ数年間、京都、滋賀、鳥取などで実施してきた全国農林漁業運動部長会議および現地視察で、地域の具体的なとりくみ報告や現場の視察を通じて、可能性への提起を受けてきた。

 以前から、企業の農業への新規参入と各種のアグリビジネスなどの起業化、産直施設やインターネットの活用、アンテナショップなど産地と消費地を結ぶとりくみ、などの方向性が求められてきたが、その重要性は認識しながらも部落の農家の多くは、規模・水利・立地・高齢化などの問題をかかえている。さらに新たなとりくみのために克服しなければならない課題(資金・経営規模・コスト・従事者の確保など)の前に足踏み状況にある。しかしいま一歩、農業の「無限の可能性」に向けてふみ出さなければならないと思う。

 具体的には、「集落営農」への方向を基礎に周辺地域の農家との連携をすすめ、耕作放棄地をふくめた農地の集約化と作業の代行、共同利用施設の連携をはかるなどの方向で、さらに「法人化」を視野に入れた非農業者の参加の促進などである。また、「地域・水・空気・太陽」をベースにした環境に優しい持続可能な農業への提起として、コメ・野菜栽培と酪農・畜産などとの連携による「循環型農業」や「有機農業」についても重要な課題である。さらに他の農業生産グループとの連携や「産地」と「消費地」を結ぶネットワークの構築を早急に検討することも重要で、今回の「ブランド化」や「雇用促進」を生み出している各地の活動に注視しなければならない。さらに、そうした意味でフードバンクとの連携をはじめ、各地ですすめられているさまざまなとりくみや工夫に大いに学んでいかなければならないと思う。

 ただ、これまでも提起されているが、全国に数多くある小規模部落の場合は、集落営農や共同利用と連携をすすめようと考えても、地域のなかで圧倒的少数というきわめて厳しい状況があり、農林漁業運動部として、早急に方向を見出すための検討をすすめていきたい。

 これまで農林漁業運動部として、視察や活動交流、農水省交渉などを実施してきたが、それらを通じて部落の農業、畜産や食肉業は、全国一律の状況ではなく、その地域性に応じたさまざまな課題をかかえていることや、課題解決や要求実現への状況をめぐって農水省と地方自治体の認識や対応に多くの格差が生じていることが明らかにされてきた。そうしたことをふまえ、早急に全国の部落農家の実態把握をおこなうとともに、具体的な課題や要求をもとに自治体交渉や農水省交渉をすすめていかなければならない。

 また、部落の農業の課題は、同時に地域(農漁村)を守る課題でもある。そうした意味で農林漁業運動部として、人と人の交流や雇用創出の視点もふくめた「農業の競争力を高める」を運動の柱に、情報の交換をはじめ具体的なとりくみを強力にすすめていきたいと考えている。


 

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