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袴田事件の不当決定に抗議しよう!
えん罪をなくす司法改革を求めよう!

「解放新聞」(2018.06.25-2864)

 東京高裁第8刑事部(大島隆明・裁判長)は6月11日、いわゆる袴田事件について、静岡地裁の再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却するという不当きわまりない決定をおこなった。

 東京高裁の取り消し決定は、再審開始決定の根拠となった本田克也・筑波大学教授によるDNA型鑑定について、一般的に確立した科学的手法とは認められないなどとして信用性がない、と否定している。しかし、こうした論法でいえば、新たな科学技術によって古い資料の再鑑定をおこなうことを門前払いしてしまうことになるのではないか。鑑定に疑問があるなら鑑定人尋問などで質問し十分調べるべきだったはずだ。袴田事件の再審では、即時抗告審で48時間分もの取調べ録音テープが証拠開示された。この取調べ録音テープを分析し、ウソの自白であることを明らかにした心理学者の鑑定も新証拠として提出されていたが、東京高裁の決定は、有罪判決は警察官作成の自白調書を証拠から排除し、自白調書を証拠として犯人性を認定していないとして、これらの新証拠は再審の理由にならないとしてしりぞけている。さらに、袴田さんにたいする取調べに問題があったことを認めながら、だからといってねつ造があったとはいえないなどと決めつけている。しかし、これでは問題をはぐらかしていると、いわざるを得ない。警察はねつ造するはずがないという安易な決めつけだ。しかし、決定も認めるように、開示された取調べ録音テープで、深夜におよぶ長時間の取調べや取調室に便器をもち込ませて排尿させるなどの、自白の任意性や信用性に疑いが生じるような取調べの実態が明らかになったのであるから、なぜ、このような虚偽の自白調書が何通も作成されたのか、警察の捜査全体の問題やその他の証拠のねつ造の疑いに真摯に向き合い、総合的に再検討すべきであるはずだ。有罪判決の認定を前提にして、再審開始の根拠になった新証拠を個個バラバラに切り離して、決めつけで否定しているだけではないか。今回の東京高裁の判断は有罪の結論ありきの決めつけであり、再審請求では有罪判決に合理的疑いがないか新旧の証拠を総合的に判断するという最高裁の白鳥・財田川決定に反する不当な決定といわざるを得ない。袴田事件の再審開始を取り消した東京高裁の決定に強く抗議する。

 袴田事件の弁護団は最高裁に特別抗告を申し立てた。検察官の抗告によって大崎事件、松橋事件、湖東記念病院事件が、弁護団が棄却決定にたいして特別抗告をしている飯塚事件、北陵クリニック事件、袴田事件が最高裁に係属している。最高裁が、公正・公平な審理をおこない、えん罪を見抜き、「無辜(むこ)の救済(無実の人をえん罪から救済する)」という再審の理念を実現し、一日も早く無実を叫ぶ人たちの再審の扉をひらくよう強く求めたい。えん罪を生み出してはいけないという世論を大きくし最高裁を厳しく監視するとともに、国際的な人権の流れもふまえて、日本の司法での人権確立を求めていかねばならない。

 袴田事件だけでなく大崎事件や松橋事件などで裁判所の再審開始決定にたいして検察官が抗告し、再審裁判がはじまらないまま長引いている。多くの場合、再審請求人が高齢であることを考えても、検察官の抗告は人道上も許されない。再審開始にたいする検察官の抗告は諸外国でも認められておらず、再審での証拠開示の保障とともに、再審開始決定にたいする検察官の抗告を禁止する法(刑事訴訟法の一部)の改正が急務といわねばならない。えん罪がいかに人権侵害であるかを国会議員にたいしても訴え、再審にかかわる法改正を国会で実現するよう運動をすすめよう。

 狭山事件の有罪判決は、自白を離れた客観的証拠として脅迫状の筆跡の一致を有罪証拠の主軸としているが、弁護団は第3次再審請求で専門家による筆跡鑑定を多数提出し、石川さんが脅迫状を書いていないことを明らかにしている。また、第3次再審請求では、逮捕当日に石川さんが書いた上申書や石川さんが字を書いている場面が録音された取調べテープなどが証拠開示され、新たに専門家による鑑定が提出され、当時の石川さんが部落差別ゆえに読み書きができなかった非識字者であり、脅迫状を書けたはずがないことを明らかにしている。さらに、福江鑑定では、コンピュータが客観的に計測した字形の相違から石川さんと脅迫状を書いた犯人は99・9%別人という結果が明らかにされた。脅迫状は犯人の残した唯一の物的証拠である。それが、あらゆる角度から石川さんと結びつかないことは石川さんの犯人性を直接的に否定している。

 有罪証拠の万年筆が被害者のものではないことを科学的に指摘した下山鑑定やウソの自白がいかにつくられたかを指摘した心理学鑑定など、狭山事件の有罪判決は新証拠によって崩れている。東京高裁は鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始すべきである。

 狭山事件の第3次再審請求は東京高裁第4刑事部(後藤眞理子・裁判長)に係属している。5月14日に三者協議がひらかれ、弁護団は準備中の新証拠を順次提出し、鑑定人尋問を求めていくことを伝えた。検察官は弁護団提出の新証拠にたいする反証、反論を検討している。今後、鑑定人尋問などの事実調べをおこない再審を開始するかどうか重要な局面を迎える。

 次回の三者協議は9月中旬にひらかれる。狭山パンフや取調べDVD、狭山事件のパネルなどを活用し、下山鑑定、コンピュータによる筆跡鑑定、識字能力鑑定、取調べ録音テープを分析した心理学鑑定など、弁護団が提出した新証拠について学習・教宣を強化し、狭山事件55年をアピールするとりくみをすすめよう。狭山事件をはじめ、えん罪と闘う当事者の姿を描いたドキュメンタリー映画「獄友」の上映運動をすすめ、石川一雄さん、袴田巖さんの無実と再審開始の世論を広げ、狭山事件、袴田事件の再審とえん罪をなくす司法改革を訴えよう。東京高裁第4刑事部(後藤眞理子・裁判長)に、鑑定人尋問などの事実調べをおこない、再審を開始するよう求める世論を大きくしよう!


 

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