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<月刊「狭山差別裁判」298号/1998年10月>

東京高検は証拠リストをただちに開示せよ!
東京高裁は事実調べと証拠開示を保障せよ!

さる九月八日に、弁護団は東京高検の担当検察官と証拠開示について折衝をおこなった。担当検事は、捜査報告書など未開示の証拠がまだ多数あること、証拠のリストがあることを認めたが、開示にはおうじなかった。殺害現場のルミノール反応検査報告書については存在しないと回答したが、弁護団の追及にたいして関係者への調査を約束した。検察官が弁護団との具体的な協議におうじたことは闘いの一定の成果である。しかし、東京高検はいまだに証拠リストをはじめ手元にある多数の証拠の開示にはおうじていない。この間の証拠開示をめぐる経過を見れば、証拠リストの開示こそが必要だと言うべきである。
 検察官は証拠を特定して開示請求せよと言う。裁判所が証拠開示を命令する場合も証拠の特定が必要とされている。弁護団は、これまで「雑木林のルミノール反応検査報告書」や「足跡写真」など具体的に根拠をしめして証拠を特定しての開示請求をおこなってきた。しかし、検察官はそのような証拠は存在しないと回答してきただけである。検察官は、捜査段階で集められた証拠、警察にあった記録をすべて手元に持ち、そのリストも持っている。弁護団がこの証拠があるはずだから開示してもらいたいと請求しても、検察官が一方的に証拠の存否を回答するだけである。しかし、これは、あまりに不公平である。
 弁護団がどんな証拠があるのかわからないということじたいが根本的な問題なのである。
 国連の国際人権<自由権>規約委員会は、一九九三年に日本政府にたいして証拠開示が保障されていないことに懸念を表明し、是正を勧告した。その委員会で、ある委員は「公正な裁判の要素は、被告人とその代理人がすべての必要な文書と証拠にアクセスすることができるということです。それには、検察側のファイルも含まれます。」と日本政府に指摘している。これが国際的な人権基準にもとづいた考え方なのである。さらにべつの委員は、「弁護側は、その存在を既に知っている文書名を特定して(証拠開示を)請求しなければならない、とされているようです。しかし、それでは十分とは言えません。というのは、検察側が有している証拠については、弁護側が全く知らないかもしれないからです。」と指摘している。まさに、狭山事件で弁護団が検察側に言い続けていることがこれにあてはまる。
 国際人権B規約の規定にしたがって、公平な裁判を保障するためには、証拠の全面開示が必要なのであって、そのために、まず証拠リストの開示が不可欠なのである。プライバシーの問題は検察官と弁護側で具体的に協議すれば解決できる問題である。検察官の手元にある多数の証拠について弁護側がその内容すらまったく知らないという不公平な事態を一刻も早く是正しなければならない。公平な再審請求の審理を保障すべき東京高
裁の高木裁判長からも証拠リストの開示を勧告すべきである。
 第二次再審請求は大詰めにきている。一日も早い検察官の証拠開示についての誠実な対応が求められる。中央本部では、弁護団や法学者とともに今秋ジュネーブでひらかれる国連・規約人権委員会でも訴える。連続要請行動や10・30中央集会で証拠リスト開示、事実調べと再審開始を強く求めていこう!

 高木裁判長は、これまで提出された新証拠でただちに再審開始をすべきだとわれわれは確信している。高木裁判長が再審請求の理由となる新証拠を提出せよと言うのなら、まず弁護団に検察官手持ち証拠の全部が利用できるように保障すべきである。高木裁判長は、これまで弁護団が提出された新証拠についての事実調べにはいり、再審を開始するか、あるいは検察官にたいして、すべての証拠を弁護団に開示するよう勧告するか、いずれかの決定をすみやかにおこなうべきである。
 われわれが注目すべきことは、カナダのマーシャル事件では国民がえん罪事件を真剣に受け止め、なぜそのような誤判がおきたのかを究明する調査委員会を求める世論がもりあがり、その世論におされて政府が公費による委員会を設置したこと、そして、その調査委員会は、さまざまな当事者の団体、個人の参加する公開の委員会としておこなわれ、その結果、具体的な司法改革の提言をふくむ、きちっとした報告書がまとめられたことである。わたしたちも、狭山事件の具体的な闘いをとおして、国際的な人権基準もふまえ、もっと市民自身が人権についての意識変革をかちとり、裁判所や検察庁にせまっていくことが
だいじなのではないだろうか。


月刊狭山差別裁判題字

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