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<月刊「狭山差別裁判」294号/1998年6月>

弁護団、国会内外の連携した闘いで証拠開示・事実調べを実現しよう!

 石川一雄さんの不当逮捕から35年をむかえた5月22日、東京での中央集会に七千人が結集し、正念場中の正念場をむかえた第2次再審闘争に何としても勝利しようと、石川さん本人、弁護団、家族とともに決意をあらたにした。部落差別にもとづくえん罪の35年という長さと重さを、わたしたちは決して忘れることなく、一日も早い再審開始-完全無罪をかちとるため、全力で闘わなければならない。
 中央集会には、全国各地で結成されている「狭山事件を考える住民の会」の仲間も参加し、前段の要請行動では幅広い個人・団体から数多くの署名が提出された。総署名数は120万人を超え、地方自治体の首長署名も560人を突破した。
 この日の中央集会でも報告されたが、5月13日、衆議院法務委員会で、民主党の北村哲男・衆議院議員が証拠開示の問題について質問した。とくに、証拠リストの開示について、東京高検の担当検察官が、プライバシーに配慮すべきだとという法務省刑事局長の国会答弁があるとして拒否していることをただした。それにたいして、原田・法務省刑事局長は、「委員会での法務当局の答弁はあくまで一般論。開示の判断は検察官が個別に検討して判断すべきもの」と答えた。狭山事件の証拠リスト開示についても個別に弁護団と検察官が協議して判断すべきであり、高検の門前払い的な拒否は許されないことが確認されたと言える。今後の弁護団の証拠開示にむけた取り組みを支え、東京高検にたいする闘いを強化し、何としても証拠開示を実現しよう!
 北村議員はまた、国際的にも狭山事件の証拠開示の問題に関心が高まっていることを指摘、マーシャル事件を契機に証拠開示制度を確立したカナダの例や国連の規約人権委員会の勧告などをふまえて、証拠開示制度の検討も求めた。
 マーシャル事件の担当弁護人であったアーロンソン弁護士の講演を聞いても、証拠開示の保障という面でも、日本が国際社会のなかで、まったく遅れていることはあきらかである。その典型的な例が狭山事件で35年経過したいまも証拠開示が十分されていないという現状なのである。
 とくに、ことしは世界人権宣言50周年である。世界人権宣言を条約化した国際人権規約を日本は1979年に批准しており、この規約にもとづいて、日本政府が昨年6月に国連に提出した第4回定期報告書で「日本では証拠開示を受ける機会は十分保障されている」と報告しているのである。さきの国会での質疑やこの政府報告から考えても、狭山事件で、このまま、東京高検の担当検察官が証拠開示、証拠リストの開示について弁護団との具体的な協議を拒否しつづけることは許されない。
石川一雄さんは35年もの長きにわたって真実を求めているのである。石川さんは公平な裁判を受ける権利を保障されているはずである。そのためには証拠開示は不可欠である。弁護団や国会での取り組みと連携をとりながら、証拠開示・事実調べを実現し、再審闘争勝利にむけて全力で闘おう!
えん罪事件を真剣に受け止め、その原因を究明する委員会設置を求める国民世論がもりあがった。それによって政府は費用のかかかる委員会の設置を決定し、さらにさまざまな当事者の団体、個人の参加する公開の調査委員会をおこなったのである。その結果まとめられた報告書が最高裁によって証拠開示を義務づける判例で引用された。また、えん罪の原因の一つがネイティブ・カナディアンにたいする差別であることを具体的に先住民の法というかたちで司法改革に結びつけた。重要なことは、えん罪を生み出したのも国民であり、それを真摯にうけとめマーシャル事件の真相とその教訓をより多くの市民に広げよう。


月刊狭山差別裁判題字

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