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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2117号/03.04.28
 映画「ぼくんち」(西原理恵子原作、阪本順治監督)をみた。舞台は関西のある島。うらぶれた島の裏の港町はさらに貧乏人ばかりが住む。一太、二太のもとに、ある日、半年前に買い物に出たままだった母親が、姉をつれて帰ってくる。物語は、ここから始まる
▼ところが母親はすぐ男のもとに出ていき、姉と三人の生活が始まる。フツーの地道な生活をめざしながら、あらかじめそこから排除された者として実現できない人びとが、描かれる
▼母親の生き方を許すことで母になり、故郷を捨てることで一人前になり、姉と別れることであらたな出立を手に入れる三人。一太に投げかけられる「ちったあ、使える男んなったれや。それまでは、この町を憎んでも懐かしがるな。憎んで、憎み切るんやで。フルサトゆんは、そうゆうとこや」とのせりふは胸に迫る
▼つげ義春、ロマ映画の移植ありと、ペーソスたっぷりな描き方に、映画ファンを魅了する隠し味もきいている。とくにオクラホマミキサーを葬儀で踊り、クジャクの求愛のダンスを姉が二太に向けてするシーンは美しい
▼大阪の日之出の部落を描いた絵本『おたまさんのおかいさん』が講談社絵本賞を受賞した(本紙前号参照)。この映画が描く世界も、同じく共同体のなかで、人間がともに生きていくことでのあたたかさだ。映画のなかの設定、島の名前が「水平島」であることが、そのことを象徴している。

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