「非国民」のすすめ

斎藤　貴男　著　　筑摩書房（定価1700円）

　朝、目覚めたときから夜、眠りにおちるときまで、全行動が監視される「ユピキタス」社会が刻一刻と近づいてきている。この国家プロジェクトが総務省ですすめられている。けっして間違いのない生活、人生をすべての人に保障するために…。
　「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ」
　これは海上自衛隊の護衛艦『むらさめ』がペルシャ湾に向け横須賀基地を出航した2004年２月16日の出陣式で、玉沢徳二郎・元防衛庁長官が叫んでいたこと。
　この発言や「ユピキタス」社会構想が、けっして突飛なものでなく、一人ひとりの日常生活に根ざしたものになりつつある、いまの社会をえぐりだすのが本書。
　支配されたがる人びと―「生活保守主義」とは何か、国家による監視、戦時国家ニッポン、拡大する差別などを、事実を積みあげながら、相互の関連を示す。
　反戦平和、反差別、憲法改悪反対、教育基本法改悪反対などを政治スローガンとしてだけでなく、日常生活で考えさせてくれる一冊。　（E）