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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2160号/04.03.08
 歴史家の網野善彦さんが2月27日に亡くなった。肺がん、76歳だった。1929年に山梨県で生まれた。日本の歴史、とりわけ中世史の分野で大きな問題提起をしてきた。『蒙古襲来』(小学館)は、中世の歴史を、賤民層もふまえて生きいきと描いたものとして、歴史的名著といえるだろう
▼あるいは、筑摩書房の本では、「日本」という国号はいつから始まったのかという問いかけをはじめ、中世の新見庄を具体的モデルにして発達した市、交通、手形の流通などを、これまた見事に描いた。しかも中高生向けに、わかりやすく
▼網野さんの新しい本が出るたびに書店へ走った記憶がよみがえってくる
▼部落問題に限定しても網野さんは、大きな貢献をした。中世の前半の良民と賤民といった構造が、後半ではケガレ意識が発生して変化するいうことを明らかにした。それは、自然も含めて秩序のバランスを崩すもの、そこに中世後半からのケガレ意識をみる、というものであった
▼網野さんは、これまでの農民中心の日本史ではなく、百姓=農民ではなく、海民、漁民、商人、被差別民を含めた豊かな歴史を措ききろうとした
▼「人類史的な視点から差別の要因、被差別民の多様な実態とそのさまざまな役割が追究されなくてはならない」とし、自然と人間の新たな関係をも問う網野史学を、うけつぎ、発展させていくことは、私たちにとっても必要なことだ。

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