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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2423号/09.06.15

差別と日本人

野中広務・辛淑玉 著  角川Oneテーマ21(定価724円)

書籍画像  これは、まったき応援歌ではないか。部落出身の保守政治家である野中広務が被差別のなかを生き抜いてきた軌跡(辛淑玉がじつにうまく引き出している)をもとに、そこに詳細な注釈を挟み込むことで、いま後退戦からようやく反転しようとする部落解放運動への。
  この書からは、講演などでは聞いたことのない野中の呻吟が聞こえてくる。あるいは人間としての本音がさらけ出されている。それは、被差別者としての辛と野中が、たがいにすべてをさらけだし、肝胆相照らす関係の場をつくり得たからにはかならない。だから、気負いもない。
  だからといってへ辛のいつもの鋭い舌鋒がおさまるわけでもない。ときには、野中への厳しい批判が投げかけられる。ここまで書いて大丈夫かと思わせるほど。しかし、相手に攻めさせ、受けてみせるのも芸のうちと、たがいの信頼関係からか野中は動じない。ここのところのおもしろさは、実際読んでもらうしかないのだが。
  辛と野中がつくった被差別者の絆に、最後は小森龍邦・元中央書記長が加わる所にも心が揺さぶられる。
  この書は、いま、現在、進行形の部落問題への格好の入門書ともなっている。(A)

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