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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2615号/13.04.15
 川筋者という言葉を知ったのは1972年、映画のパンフレットでだった。高倉健主演の任侠映画の解説を五木寛之が書いていた。筑豊の炭鉱地帯を流れる遠賀川流域の男の気質をあらわす
▼死をも恐れず、信義をもって人の困難を救う、という感じか。東映任侠映画のヒーローとダブらせて解説は書かれていた
▼はじめて知ったときの羽音豊さんは中央執行委員で、全国大行進隊の副隊長だった。鹿児島から出発した隊員の面倒をみた。温和な笑みを浮かべながら、漢方の知識を生かし、若い隊員に健康上の注意点を教えた
▼その羽音さんが川筋者の典型であることはあとで知った。鉱害闘争でおばあちゃんが羽音さんの後ろ姿に手を合わせていた。「いまだに忘れんね。その時にわしは鉱害に命をかけようと決意した、神や仏のように頼られているとわしは思ったわけよ」
▼多くの人の思いを受け、命がけで闘った。暴力団とも渡り合った。あるときは白装束に身を包み日本刀を背に交渉を要求した。地元の田川では鉱害闘争と識字運動を軸に闘いを組織した
▼「最低生活の保障や環境改善のためにモノよこせ運動は必要だろう。しかし、それを中心にしてはいけない。われわれは差別をなくす運動をしているのだから」が口癖だった
▼あの笑顔は修羅場をくぐり抜けた人間がもつものだ、と遅まきながら気づいた。「生きてりゃ、また会えるよ」といわれ4年。それはかなわなかった。合掌。

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