pagetop
部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

臨時国会での有事法制化許さず
平和と人権確立社会を求めよう
(2001.10.03-第2038号)

 第一五三臨時国会が九月二十七日からひらかれている。会期は、十二月七日までの七十二日間の予定である。当初は、低迷をつづける日本経済の景気回復と、七月の完全失業率が五パーセントを超えるなどの事態をふまえての「雇用対策国会」と位置付けられていた。
 しかし、九月十一日に起きた米国での民間機乗っ取りによる世界貿易センタービルや国防総省への自爆攻撃の大惨事によって、米国が主張する「国際テロ包囲網」への協力を口実に、「周辺事態法」を上回る後方支援のための新法や「自衛隊法改正」など「危機管理」体制の強化をはじめ、有事法制化が最優先でとりあげられようとしている。
 もちろんこうした大量殺数を目的とした行動は断じて許すことはできない。また、国際社会がこの行動を非難し、いまだにつづいている救援活動や再発防止のために最大限の協力をすることは当然のことである。ただ、米国プッシュ政権のように、感情的に「報復行動」を起こせば、同様の惨劇を繰り返すばかりで、限りない憎悪と新たな犠牲者を生み出すだけである。こうした殺戮行為の責任者は、法で裁くことを米国に要求すべきであり、「新たな戦争」に協力することがあってはならない。
 八月に南アフリカでひらかれた「反人種主義・差別撤廃世界会議」でも、シオニズムへの批判や過去の奴隷制度についての各国の対立を対話と協調によって克服し、「宣言」を採択することができた。しかし、米国は会期中に代表団を引き上げるなど、差別撤廃や人権問題の解決に向けて最大限の努力をしたとはいいがたい。
 今臨時国会では、「戦争こそ最大の人権侵害」であることを明確にし、平和と人権確立を求める立場から、対話と協調をもとにした、今後の国際社会のあり方、安全保障の実現に向けた方策を論議すべきであり、有事法制化などの拙速な対応を許してはならない。

 また、今臨時国会は、「地対財特法」後をめぐる今後の「同和」行政推進のとりくみにとっても重要な国会である。わが同盟は、「同和」行政発展・継続全国大行動を、全国各地で自治体交渉を中心に、とりくんできた。各都府県交捗では、「差別のある限り「同和」行政にとりくむ」とする姿勢を明らかにさせてきている。自治体での推進体制や方策については、さらに具体化させるように早急に交渉を重ね、「法」後の「同和」行政を後退させることのないようにしていかなければならない。われわれの働きかけで、与党・人権問題懇話会は、六月に奨学金制度や旧建設省関係の環境改善事業について「法」後の施策のあり方、さらに人権侵害救済機関の設置について政府に申し入れをおこなった。
 「同和」行政の推進は、国と自治体が一体となってとりくむことが重要である。しかし、この間の総務省(地域改善対策室)交渉では、「法」後の「同和」行政の推進については、差別実態を意図的に軽視し、「同和」行政の打ち切りを画策している。こうした地対室の姿勢を断固許さず、全国大行動の成果を今臨時国会のとりくみに生かして、「同和」行政・人権行政の確立を迫っていこう。

 「部落解放基本法」中央実行委員会は、今臨時国会に向けてのとりくみを強化するために、十月二日に拡大中央実行委員会をひらく。また、十月三十日には、第19波中央行動を展開し二同和」行政・人権行政の確立を強く求める。とくに、「人権教育・啓発推進法」の活用では、「基本計画」策定にかかわって、「国連人権教育10年」など、これまでの自治体やさまざまな団体がとりくんできた成果が反映されるようにしなければならない。差別の実態をふまえ、その解決に向けた「基本計画」策定を求めていこう。また、人権侵害救済制度についても、差別糾弾闘争を意図的に歪曲する法務省の攻撃を許さず、政府から完全に独立した人権委員会を設置させ、迅速で実効ある救済制度を確立していかなければならない。法務省は、みずからの省益のみを求め、地方法務局の改組や人権擁護委員制度の改革といった技術的な方策しか打ち出していない。われわれが求めているのは、これまでの法務省人権擁護局や地方法務局、人権掩護委員による形式的な調査やまったく効果のない啓発活動ではなく、人権侵害への被害を真に救済するための組織体制であり、方策である。
 また、「同和」行政の推進体制の課題も重要である。「特別対策」による「同和」行政からの転換期だからこそ、総合調整機能をもった推進体制のもとで、これまでの成果を損なうことのないように、国は部落問題の解決に責任をもってとりくむことが必要なのである。
 今臨時国会では、こうした課題を中心にしながら、全国大行動の成果をもとに、全日本同和対策協議会(全同対)や各自治体とも協力しながら、各都府県での独自の中央行動を波状的かつ果敢に展開し、第19波中央行動の成功に結びつけよう。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)