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声明

名古屋刑務所等における法務省職員による
暴行死傷事件に対する抗議声明

 中央本部は十一月十五日、名古屋刑務所など法務省職員の暴行死傷事件にたいし抗議声明を発表、法務省と名古屋刑務所宛に送致した。

 十月四日、名古屋刑務所は、ことし五月二十七日に、一名の受刑者が保護房で革手錠を使用され、死亡したこと、また、九月には革手錠を使用し保護房に収容されていた受刑者が腹部内出血で病院に移送されたことを発表した。さらに、その後、名古屋刑務所で昨年にも死亡事件がおきていたこと、さらに、この四年間だけでも、府中、横須賀、岡山刑務所等において保護房における死傷事件が発生していたことも判明している。
 一九九八年三月の国際人権自由権規約委員会の勧告においても、日本の刑務所における「残酷で非人道的な取り扱いと考えられる革手錠のような保護手段の多用」をあげて、日本の刑務所制度に深い懸念を表明していた。今回の死傷事件は法務当局が国連勧告にもかかわらず、なんら改善策をとってこなかったことを示している。国際的な人権基準にもとづいて、日本の矯正施設における処遇の改善をはかるとともに、刑務官、警察官、検察官や入管施設職員などにたいする人権教育を一層すすめる必要がある。社会のあらゆるところで差別と虐待を根絶しなければならない。そうした努力を真剣におこなわず、あろうことか、それをひた隠しにしてきた法務当局に強く抗議する。
 また、今回の名古屋刑務所における受刑者死傷事件は、法務省職員の人権感覚のなさを示し、今国会で提案されている人権擁護法案の問題点をあらためて明らかにしていると言わねばならない。
 法務省管轄下の拘禁施設において、これまでにも同様の暴力や虐待が発生していたからこそ、国連等から人権救済機関の独立性の確保が求められていた。
 今回の九月に発生した受刑者の重傷をおった事件は、この受刑者が名古屋弁護士会に人権侵犯救済の申し立てをおこない、その調査がおこなわれる二日前に発生しているという。すなわち、人権侵害の申し立てにたいする刑務官の報復であった疑いももたれている。
 こうした事態を見るとき、矯正施設等を管轄下におく、法務省の外局に人権救済機関をおくことはとうてい認められない。人権委員会事務局を同じ法務省職員がしめる人権委員会で今回のような公権力による虐待、差別、人権侵害がきちんと調査・救済できるとは考えられないし、そのような信頼性のない人権委員会では機能しないことは明らかである。今回の一連の矯正施設における事件は、法務当局から完全に独立した人権救済機関が必要であることを示している。
 われわれは、今回の事態に関して法務省に強く抗議し、現在、国会に提案されている人権擁護法案の抜本修正と、完全に独立性を確保した実効性ある人権救済機関を一刻も早く設置することをあらためて強く求めるものである。

部落解放同盟中央本部
委員長 組坂 繁之

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