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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張
実行ある人権救済制度の確
立めざし「人権擁護法案」の
抜本的修正をかちとろう

 「人権擁護法案」が三月八日、閣議決定され、近く参議院先議での国会審議が開始されようとしている。
 これにたいして、わが同盟は、三月八日、組坂委員長談話を発表し、「人権擁護法案」には重大な問題点が含まれおり、国会での審議をとおした抜本的な修正を求めたところである。
 この間、わが同盟だけでなく、人権フォーラム21、日本弁護士連合会、自由人権協会、さらには日本ペンクラブやマスメディア関係団体から、「人権擁護法案」にたいする反対、もしくは抜本的な修正を求める見解が公表されている。また、民主党や社民党も独自の法案大網を公表している。

 わが同盟はもとより、各方面から出されている「人権擁護法案」にたいする見解を分析したとき、つぎに指摘する共通した問題点と修正の方向が浮き彫りになってきている。
 ①政府案では、人権委員会が法務省の外局とされているため、独立性に欠けるという問がある。具体的には、拘置所や刑務所さらには入国管理施設などでおこなわれる人権侵害もっとも深刻であるが、これらはいずれも法務省の管轄下にあり、ここでの人権侵害にたいして、はたして法務省の外局としての人権委員会が有効な救済ができるのかという疑念である。他方で、人権侵害はあらゆる省庁に関連して生じてくるものであるから、内閣府の外局とすることがのぞまいい。
 ②一億二千万人もの人口を有し、昨年の人権侵害の相談件数が一万七千八百件にのぼる日本の人権救済にかかわる委員がわずか五人、しかもそのうち三人が非常勤で、実効性のある人権侵害の救済ができるのかという問題がある。人権侵害が地域で生じてくるものであることを考慮したとき、少なくとも都道府県ごとにも人権委員会を設置しなければならない。
 ③この②の問題点を補うものは事務局であるが、その事務局が政府案では法務省の人権擁護局や法務局人権擁護郡などの職員がそのまま横滑りするというものであり、これでは従来と何ら変わることがなく、まったく独立性に欠けるといねねばならない。その点では、事務局は人権について精通した人材を委員会が独自に採用する必要がある。
 ④政府案では、マスメディアの取材や報道、わが同盟をはじめとした人権団体によって実施される人権侵害を救済するための自主的な活動が不当に妨害されるおそれが多分にあるという問題がある。マスメディアによる人権侵害については、基本的には、マスメディア自身によって設けられた救済機関にゆだねるとともに、人権団体との関係については積極的な連携をはかる必要がある。
 ⑤政府案では現行の人権擁護委員制度を若干の手直しで活用することとされているが、これでは「名誉職化」している現状は変わらない。やはり、人数を絞り込んででも「有給化」し一定の研修を義務づけたうえで、人権委員会との連携をもって地域に根ざした活動ができる制度の抜本的に改革すべきである。

 このさい、日本の人権擁護制度のあり方が抜本的な変革を求められることとなった原点をあらためて確認しておく必要がある。
 まず第一点としては、一九六五年八月に出された「内閣同和対策審議会答申」が、差別が法的に規制されていないこと、現行の人権擁護局が法務省の内局とされていること、人権に精通した専門的な職員が配置されていないことなどの問題点を指摘し、国家としての本格的な検討を求めていること。
 第二点としては、一九九三年に総務庁地域改善対策室によって実施された「同和地区実態把握等調査」で、被差別体験を有する人のなかで「法務局または人権擁護委員に相談した」と回答した人は、わずか○・六パーセントにすぎなかったという事実である。
 第三点として、一九九三年の国連総会で国内人権機関を設置する際の原則として「パリ原則」が採択(日本政府は賛成)され、そのなかに国内人権機関の「独立性」と「多元性」が強調されていること。
 第四点として、日本が締結した人権に関する条約と委員会からの勧告、とくに一九九八年十一月に日本政府から出された第4回政府報告書を審査した国連自由権規約委員会が、現行の日本の人権擁護委員制度は独立性がなく、警察や入国管理施設での人権侵害などの救済ができるものとはなっておらず、独立した救済機関の設置を求めていること。

 近く国会で審議されようとしている新たな人権侵害救済機関の設置という課題は、なによりもまず、私たちが一九八五年五月以降その制定を求めつづけている「部落解放基本法案」のなかに盛りこまれていた「規制・救済法的部分」の実現に深くかかわっているものである。しかしながら、この課題は、それにとどまらず今後三十年、五十年先の日本の人権救済制度のあり方にかかわる重大な課題でもある。
 したがって、国会での審議は慎重かつ十分に時間をかけることを求めるものである。そのため拙速をさけるとともに、関係各方面からも参考人を招致した審議などを求めるものである。
 そして、与党のみによる一方的な強行採決といったかたちでではなく、与・野党の合意が作り出され、圧倒的な多数の国会議員の賛同を得たものとすることが必要である。さらには、国内では圧例的な人びとから歓迎されるとともに、国際社会でも高く評価されるものとなることが求められている。
 このため、わが同盟としても国会審議に向けて中執とオルグ団による常駐体制をとり、重大な決意でもって臨んでいく。
 各都府県連、各地協・各支部でも集会の開催、地元選出国会議員への積極的な働きかけなど創意工夫をこらしたとりくみをおこなおう。

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