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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張
5・23狭山中央闘争に向け大きな世論をまきおこそう

 東京高裁第五刑事部の高橋省吾裁判長が事実調べもおこなわず、不当な異議申立棄却決定を強行した。弁護団と石川さんが特別抗告を申し立てて四か月になる。
 特別抗告審で弁護団は、東京高裁第五刑事部の高橋裁判長の異議申立棄却決定、および高木裁判長による再審棄却決定が、まったく審理を尽くさず、弁護側の新証拠の評価、判断を誤って請求を棄却した不当決定であり、ただちに取り消すことを最高裁に求める。狭山事件の特別抗告審は最高裁第一小法廷が担当することになっており、今後、最高裁第一小法廷に棄却決定の取り消しと狭山事件の再審開始を強く求めていかなければならない。
 狭山事件の再審請求は今年で二十五年になるが、弁護団が数多くの新証拠、それもさまざまな分野の専門家による科学的な鑑定書を提出しているにもかかわらず、一度の鑑定人尋問もおこなわれていない。
 今回の異議申立棄却決定もまた事実調べをまったくおこなわず、長年警察の鑑識課に従事してきた齋藤鑑定人の重大な新事実の指摘にたいして、鑑定の中味の判断もしないで「独断に過ぎる」「一つの推測の域を出ない」というだけで、しりぞけている。真実に誠実に向きあおうという姿勢などまったく見られない。これでは、異議申立棄却決定も再審棄却決定も、最初から弁護側の新証拠は価値がないもの、聞くに値しないものと決めてかかっているとしかいいようがないではないか。
 三十九年にわたって無実を叫びながら、二十七年も一度の法廷も開かず証人尋問もやらない裁判が世界にあるだろうか。膨大な証拠があるのにいっさい開示しないで新証拠はないとして再審の請求を棄却する司法にだれが正義と人権を感じるであろうか。
 東京高裁の二つの棄却決定の誤りと不当性は、その実態を聞けばだれもが納得するであろう。そのためには、狭山事件の真相と裁判の不当な実態をさらに広く国民に、全世界の人びとに訴える必要がある。
 私たちは、齋藤四鑑定をはじめとする弁護団提出の新証拠の意義をもう一度学習するとともに、これらの新証拠の事実調べも証拠開示も保障せず、新証拠の評価を誤った異議申立棄却決定、再審棄却決定の誤り、審理をまったく尽くさなかった不当性を広く国民に知らせていかなければならない。
 部落解放同盟、共闘団体、住民の会で、棄却決定批判学習会や特別抗告審勝利に向けた真相報告会を全国各地でひらこう。さらに、狭山・住民の会を各地で結成し、えん罪と司法の問題をふくめて市民ぐるみの幅広い運動をつくりだそう。

 私たちは、今回の棄却決定に見られる刑事裁判と司法の現状そのものを問題にしていかなければならない。事実調べも証拠開示もやらないことにしても、鑑定の評価にしてもあまりに一方的、裁判所の勝手すぎるではないか。えん罪の現実にたいする認識がなく誤判救済のためのルール、権利の保障がまったく確立していない。
 棄却決定直後の一月二十八日付の『読売新聞』の解説は、「ルールなき審理の改善必要」として、再審請求の審理の手続きの不備を指摘している。再審請求の審理方式の法的規定がなく、免田事件や松山事件など鑑定人尋問
がおこなわれている例が多くあるいっぼうで、狭山事件では鑑定人尋問も現場検証もまったくおこなわれておらず、裁判所の裁量に幅がありすぎると指摘する。
 また、今回の棄却決定は、検察側が再審請求で提出した鑑定を裁判所が棄却の理由としてとりあげているが、これも反対尋問も保障しないまま裁判官が検察側の証拠を受け入れることの問題が指摘されていた。こうした審理のやりかたは「無実の人を救済する」という再審の理念に反するものであり、改善が必要との指摘は正鵠をえたものであろう。
 また、東京高検の検察官が二~三メートルもの狭山事件の公判未提出証拠とそのリストをもっていることが明らかとなっていた。弁護団は、証拠開示を求め、東京高裁にたいしても、証拠リストをとりよせ、弁護側に提示するよう求めていたが、まったくおこなわれないまま棄却された。再審請求は新証拠を要件としながら弁護側に証拠開示を受ける機会を保障するルールがないのである。
 国連規約人権委員会は、一九九八年に「弁護側が検察官手持ち証拠にアクセスでさるよう実務および法律において保障する」ことを日本政府に勧告した。証拠開示の公正なルール化は国際的常識であり、国連からも指摘されている。
 私たちはもっと積極的にこうした司法の問題をとりあげ、幅広い市民運動として、司法改革の問題を考える学習会をひらくなどして、えん罪の問題、弁護側の権利としての証拠開示の保障、再審手続さの公正なルール化、国民の司法参加、裁判員制度のありかたなどを考え、訴えていくことが必要である。市民常識が通じる裁判、人権擁護と正義を実現する司法、誤判救済・えん罪防止という本来の姿勢に刑事裁判を変えていかなければならない。公的にえん罪の実態を調査し、誤判救済のための改革、証拠開示の公正化のための立法化などを国会議員にはたらきかけていく必要もある。
 なんとしても、狭山特別抗告審の闘いに勝利し、最高裁でこそ、市民常識、公正さと正義からかけ離れた現在の司法を正さねばならない。

 五月二十三日は石川一雄さんが被差別部落にたいする見込み授査によって不当逮捕された日である。狭山事件は来年で四十年になろうとしている。石川さんは、今回の棄却決定にたいしても、「身の潔白を晴らすまで闘う」として早智子さんとともに各地を訴えている。
 中央本部では、共闘の仲間とともに、五月二十三日に、石川一雄不当逮捕三十九か年糾弾・狭山再審要求・特別抗告審闘争勝利中央総決起集会をひらくとともに、最高裁、最高検への要請行動、街頭宣伝などにとりくむ。
 より大きな世論をまさおこしていかなければならない。特別抗告審で、審理を尽くさなかった不当な棄却決定の取り消しをかちとり、事実調べ、全証拠開示、再審への道をきりひらこう。

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