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部落問題資料室
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主張
有事関連3法案に人権・平和の
視点から断固反対していこう

 いま、小泉内閣によって有事法制の整備が強引にすすめられようとしている。つまり、戦争をできる体制を整備しようというのである。これは、武力によって平和も人びとの安全も確保できないことを教訓化し、二度と戦争をしないことを誓った平和憲法を根本から否定するものである。軍隊で本当に民衆の命と安全を守ることがでさるのか、私たちはもう一度原点から考える必要がある。
 今日、国際化がすすみ、相互依存も強まり、国際協力がますます大切になっている。このような時代に戦争準備と軍拡競争に膨大なエネルギーをつぎ込むより、他にやるべきことがあるはずである。
 なぜいま有事法制なのか。ある憲法学者は、グローバリゼーションによる貧富の差の拡大がもたらす紛争に備えているのではないかと指摘している。
 現在の米国ブッシュ政権は同時多発テロにたいする報復攻撃、悪の枢軸発言にみられる威嚇など、圧倒的武力を背景に他国を屈服させようとする姿勢が目立つ。そして、みずから膨大な核兵器を保有するばかりか、包括的核実験禁止条約など、これまでの核軍縮の流れを逆行させ、京都議定書からの離脱、ダーバンでの反人種主義世界会議からの退席、国際刑事裁判所の設置に背を向けるなど、国際社会の平和・人権・環境を守る努力をふみにじる自分勝手な行動がめだっている。
 有事関連三法案は、このような米国ブッシュ政権の危険な動きと迎合する道に通じている。

 今国会に提出されている「有事関連三法案」は、「武力攻撃事態法案」「自衛隊法改定案」「安全保障会議法改定案」である。これらの法案と、昨年強引に制定された「周辺事態法」や新ガイドラインが結合すると、その危険性がさらに明確になる。
 法案では、「武力攻撃事態」の槻念が「武力攻撃の恐れがある場合を含む」とあいまいにされ、これまでの政府の有事の概念・範囲を拡大している。すでに制定されている「周辺事態法」の「周辺」のあいまいさとあわせて考えると、たとえば台湾海峡や朝鮮半島が緊迫した場合どうなるのだろうか。
 現在、日本には多くの米軍基地・施設があり五万人ほどの軍人が常駐している。そのようななかで、米国が戦争体制をとり、日本が後方支援体制をとれば日本への攻撃も十分考えられる。したがって、「武力攻撃の恐れがある」ので憲法違反の集団的自衛権も行使できるというように、どんどん戦争にふみこんでいくことにつながっていく。
 このように、これまでの政府の見解「自衛権の範囲」をも大きくふみ越えるきわめて危険な法案なのである。

 また、これらの法案は、自治体や企業、一般市民に戦争への協力を強制するものである。
 「武力攻撃事態法案」は、武力攻撃事態が生じた場合、首相に自治体への「指示権」を与え、日赤・NHK・運輸会社など指定公共機関に協力義務を課し、一般家屋などを収容する権限も与えている。さらに医療、土木、建設工事、輸送業者に「業務従事命令」で協力することを定めている現行自衛隊法を改定し、手続きや補償を定め運用可能なものに整備している。
 そのうえ「指定行政機関、地方公共団体、または指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする」と国民の努力義務を課している。
 さらに、首相が地方自治体と指定公共機関に指示し、首長がしたがわない場合の代執行の権限まで与えており、公共的機関にマスコミも含めるなど言論・報道の自由が侵される危険もある。
 また、「武力攻撃事態法案」はその基本理念のなかで、「国民の自由と権利は尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は必要最小限のものであり、公正かつ適正な手続きのもとにおこなわれなければならない」と原則を示しているが、どのような権利がどのように制限をされるかも明確でない。
 結局、戦争はどの戦争もすべてを戦争のために動員していくものであり、多くの人命を奪い、人権をふみにじり財産を破壊するものである。そして、憎しみと暴力、テロの連鎖につながり、さらに戦争の種をまくことになるのである。
 また、同時多発テロ以降「テロリストを許すな」という声のもとに管理支配体制が強化され、市民の人権が侵害される事態が起こってており、戦争と人権は基本的に両立しないことも明白である。

 戦争は突然おきるのではなく、民族・宗教対立や経済的貧困、権益争いなどの矛盾が高まり起こされるのである。これらの戦争の要因をなくす努力こそ求められている。
 国連などによって、「国家の安全保障」にたいして「人間の安全保障」の考え方が提唱され、とりくみが始まっている。貧困、病気や飢餓、失業、麻薬や犯罪、人権侵害、不平等など、市民の日常生活を脅かしたり、紛争の要因となる問題を解決することによって、個人の生活を守ることが大切であり、そのことが同時に平和を築くことにつながるという考え方である。これは「世界人権宣言」の精神とも一致している。
 その意味で、軍拡や戦争準備に費やすエネルギーを、人権擁護や共生社会の確立、貧困や差別の解決に向けることが平和な国際社会を構築することにつながると考える。日本はそのような道を選択すべきである。
 戦争の記憶が風化しているともいわれる。戦争の悲惨さを語り継ぎ、平和憲法の平和主義の意義を再確認し、平和な国際社会をつくるためにカを尽くそう。
 そして、有事関連三法の問題点を広く明らかにし、廃案をかち取るため、連帯共闘を広め、中央行動とともに、各地議会での決議採択などの行動を強化しよう。

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