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暴力の連鎖を断ち切り、共生と連
帯の平和な国際社会を創造しよう

 九月十一日から一年余りが経過した。私たちは、同時多発テロを厳しく批判するとともに、報復攻撃は暴力の連鎖を生むとして反対してきた。しかし米国はアフガニスタンへの武力攻撃をおこない、多くの住民をふくめた犠牲者を生み出した。そして、タリバン政権を解体させ、暫定政権を発足させたが、テロの首謀者とされたビンラディンの消息はいまだにつかめておらず、アルカイダという組織も壊滅していない。さらに米国では、テロを警戒するあまり自由が抑圧され、罪のないイスラムの人びとが監視され、拘束されるなどの人権侵害も横行している。
 いっぼう、この事態に乗じてシャロン政権下のイスラエルは、「テロとの戦い」という大義名分でパレスチナへの攻撃を始め、住民の虐殺も報じられ、報復テロとそれにたいする報復という暴力の連鎖が続いている。
 そして今度、米国ブッシュ政権は、イラク攻撃に執念を燃やしている。攻撃開始は時間の問題だという人もいるが、いまのところ武力攻撃を支持しているのはイギリスだけである。アラブ諸国は反発を強め、中国やロシアも反発し、フランスやドイツも非協力的である。幸いイラクが核査察の受け入れを表明したことで、当面は国連が武力攻撃容認決議をすることはないと考えられるが、米国が単独で武力攻撃にふみこむ可能性は消し去れない状況だ。
 ブッシュ政権が誕生し、「ユニラテラリズム(単独主義)」といわれる米国の身勝手な行動が始まり、さらに9・11以降の武力行使や軍事力を背景にした威嚇は、世界をひじょうに不安定なものにしている。

 ブッシュ大統領は、イラクの核兵器開発を脅威として、それを早くつぶさなくてはならないと主張する。しかし、他の国から見ると米国の核兵器も脅威である。一九九五年に核拡散防止(NPT)条約を無期限延長するさい、核保有国は核兵器廃絶への明確な努力と非核保有国への核不使用を約束し、それを条件に非核保有国は核兵器をもたないことを誓った。
 だが、最大の核保有国・米国ブッシュ政権のこの間の核政策は、包括的核実験禁止(CTBT)条約からの離脱、弾道弾迎撃ミサイ
ル(ABM)条約の破棄とミサイル防衛の本格的推進など、核兵器廃絶の国際的努力を踏みにじってきた。さらに、今年初頭の「核態勢見直し(NPR)」では、核兵器を保有しない国にたいしても喫緊の事態には核使用を辞さないとしている。これらは、NPT条約
の約束に違反しており、このような身勝手な姿勢は批判されなければならない。

 さらにブッシュ政権は、米国への脅威をつぶすため、先制攻撃も正当性をもつと主張し始めた。これはとんでもないことで、この論理がまかり通れば、あらゆる戦争が正当化されてしまう。
 国際法では、武力行使を禁止しており、例外として自衛権については限定条件を付けながら認めている。またもう一つの例外として、国連・安全保障理事会での武力行使容認決議がなされた場合に認めている。その意味で、アフガニスタン攻撃も国際法違反だったが、自衛権を拡大解釈して合理化した。そして、9・11テロの衝撃の大きさに国際的批判もかき消された。
 しかし、今度、米国がイラクへの武力攻撃を始めれば、国際法違反を繰り返すことになり、国際法による国際秩序は信頼性を失うことになる。軍事的にも経済的にも世界で最大の力をもつ米国が身勝手な行動をとれば、世界秩序が保てるはずがない。そして、さらに強固な軍事力信仰をはびこらせ、あらたな軍拡競争の時代を招きかねない。

 今年の原水禁世界大会で、米国最大の平和団体ピースアクションの代表は、プッシュ政権の政策を批判し、カの政策でなく法の支配による秩序をつくらなければならないと強調した。国連を中心に平和な国際社会をつくることが今、求められている。
 現在、ミサイル防衛など軍拡に使われている資金やエネルギーは膨大なものだ。それらを貧困や差別をなくし、国際理解や人権・平和教育に使ったら、紛争やテロも激減するのではないか。
 また、グローバル化がこのまま弱肉強食の「市場原理主義」の論理ですすめば、貧富の格差が拡大し、貧困層が激増し、環境破壊もすすみ、紛争もテロも増えると考えられる。どこかで流れを変えなければならない。そのような願いを込めて、反人種主義・差別撤廃世界会議や環境・開発サミットなどもひらかれてきた。そこでも熾烈な闘いがあったが、人権・平和・環境、そして共生・連帯の社会をめざす潮流も確実に育ち、手を結びつつある。私たちは、そのような人びとと連帯し、共生社会の創造に向けた課題にとりくまなくてはならない。
 そして、当面する米国プッシュ政権によるイラク攻撃に反対し、有事関連三法案の廃案をかちとるためとりくみを強めよう。


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