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狭山事件40年を契機に
幅広い運動をおこそう

 狭山弁護団は1月27日に最高裁の永井調査官と面会し、事実調べ・再審開始を求めるとともに、殺害方法など確定判決の認定がゆらいでおり、自白の再検討を求める補充書を9月末までに提出することを伝えた。同時に、最高裁が検察庁に証拠リストの開示勧告をおこなうよう求めた。
 ノートを破って素手で書き、折って封筒に入れて届けたという狭山事件の場合、脅迫状に指紋がないという事実は明らかに脅迫状を書いたことについての「合理的疑い」を投げかけている。「指紋は必ず検出されるとは限らない」という一言でしりぞけた棄却決定は明らかに審理不尽の違法があるといわねばならない。最高裁は、再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消すべきである。そして、弁護団が多くの新証拠、新鑑定を提出し、これだけ多くの「合理的疑い」を投げかけているにもかかわらず、28年以上も事実調べがないという事態はもはや許されない。最高裁は、ただちに事実調べ、とくに鑑定人尋問の機会を保証し、再審を開始すべきである。

 狭山弁護団は、2月26日、東京高検の中山純一・検事と証拠開示の折衝をおこなった。中山検事は、「2~3メートルの証拠が手元にある」ということは認めたが、そのなかには開示済みのものなども含まれ、すべてが未開示証拠ではないとした。手持ち証拠の中身を明らかにすべきだと弁護団が求めたのにたいして、手持ち証拠がどういう内容のものかを調査して回答するとした。
 さらに1か月後の3月26日、再度、東京高検の中山検事と折衝をおこなった。中山検事は「手持ちの2~3メートルの証拠」は警察にあった控えの記録を当時の担当検事がとり寄せたもので、公判提出証拠、開示済みのものと未開示証拠が混在していると回答した。弁護団は、未開示のものがどれぐらいあるのか、手持ち証拠の内容を明らかにするよう求めたが、内容については答えず、4月1日付で転勤するので、新しい担当検事に要望を伝えるとした。

 狭山事件の証拠開示を求める世論、多くの人たちのハガキ要請、あるいは司法改革での証拠開示ルール化の動きなどによって、検察庁も何らかの回答をせざるをえなくなったといえよう。
 しかし、中山検事は、「2~3メートルの証拠がある」と99年3月に回答した會田検事から数えて9人目の担当検事である。これだけの回答をするのに4年もかかっているのである。せめて、未開示の証拠がどれぐらいかぐらい回答すべきであろう。もっと誠実に弁護団の要求にこたえるべきではないか。
 また、中山検事は、証拠リストについては従来通りの回答であるとして開示に応じなかったというが納得できない。これまで東京高検はプライバシー侵害の恐れなどの弊害を理由として証拠リストは開示できないとしてきた。しかし、過去に免田事件、梅田事件で証拠リストが開示された前例があるが、そのような弊害が生じたことはない。そもそも、中山検事が手持ち証拠の内容を調査するといっているように、検察官は手持ち証拠の内容をすべて見ることになるにもかかわらず、プライバシー侵害の恐れを弁護側への不開示の理由とすること自体がおかしい。一昨年大津地裁に再審請求が申し立てられた日野町事件では、げんに大津地検から弁護団に証拠リストが開示されているという最近の例もある。どうして東京高検は狭山事件の証拠リストを開示できないのか。まったく納得できない。
 日弁連の証拠開示立法要綱でも証拠リストを弁護側に開示したうえで、そのリストにもとづいて個別証拠の開示請求をする手続を提案しているし、イギリスはそうした手続を定めた「証拠開示法」が確立している。司法改革で証拠開示の拡充をルール化する場合、警察などによる証拠隠しを防ぐためにも検察官が証拠リストをもれなく作成し弁護側に交付する義務を定めることは不可欠だし、かつ合理的な手続であろう。

 検察庁が、大量の未開示証拠をこれ以上隠すようなことは許されない。手持ち証拠の内容をただちに弁護側に回答し、証拠開示請求に誠実、迅速にこたえるべきである。弁護団は、新しい担当検事とさらに証拠開示の折衝をおこなうことにしている。さらに証拠開示の世論を大きくし、ハガキ要請などのとりくみを強化しよう。
 同時に、司法改革で公正な証拠開示のルール化を実現する闘いを強化することが重要だ。証拠開示の法制化を実現する機会はいまをおいてない。裁判員制度導入、裁判迅速化のいずれも、捜査や取り調べの適正化、透明化と証拠開示のルール化確立をぬきには考えられない。署名運動や市民集会、学習会をすすめ、誤判・えん罪をなくすための証拠開示
のルール化を求める幅広い運動をおこしていこう。

 狭山事件発生から40年を迎えようとしている。石川一雄さんにとっては、いまだにえん罪が晴れない、長い人権侵害の40年である。私たちは、このような長期にわたるえん罪、人権侵害がなぜおきたのか、40年たってもなぜ誤判から救われないのか、司法のありかたを問うとともに、われわれ自身の闘いもふりかえる必要がある。
 中央本部では、狭山事件40年を契機に、原点にかえって狭山事件の総学習運動をすすめることを提起し、そのための総合的なパンフレットを作成・活用できるようにする。また、市民に広くアピールできるように、新しいパネル用写真セットも作成する予定である。
 さらに、5月23日に不当逮捕40年を糾弾する中央集会をひらくとともに、狭山闘争の勝利をどうかちとるのか徹底した討論会やシンポジウムをひらくなど、市民へのアピールと闘いの強化に向けたとりくみを今年1年をとおして実施していく予定である。ぜひ、各地域でも、「狭山40年を問う」とりくみを創意工夫をこらして実施しよう。
 弁護団が補充書を提出する9月までの当面の闘いは、狭山事件40年を契機にした総学習運動と証拠開示の闘いを軸にし、特別抗告審闘争勝利に向けたとりくみをすすめよう。


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