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憲法施行56周年で
空洞化許さず活発に討議

「解放新聞」(2003.05.12-2119)

 

 施行56周年憲法記念日集会――市民で、自由に憲法を語ろう――が5月3日、労働スクウェア東京でひらかれ、市民や労組などから600人が参加した。主催はフォーラム平和・人権・環境(代表・江橋崇法政大学教授)。
 集会では、江橋代表をコーディネーターに、人材育成コンサルタントの辛淑玉さん、法政大学の五十嵐敬喜さんがそれぞれの立場から問題提起をした。
 開会あいさつを福山真劫・事務局長がおこない、「有事3法案などが山場を迎え、憲法が右からゆさぶられている。きょうを機にすすむべき道を考えよう」とよびかけた。
 江橋代表は、「9・11以降、戦争反対とイラク攻撃反対の運動を強化してきた。市民が自由に参加できる運動をめざし、日比谷には4万人、芝公園には5万人の市民が参加した。『平和運動というと固い決意がないと参加できない雰囲気があり、今回はそれがなくてうれしい』という声がたくさんあった。今後も、市民が主体となって声をあげていきたい」とのべ、「ほうっておくと日本国憲法が空洞化し、とんでもない使い方をされる。そうならないよう憲法についての認識を深めあいたい」と提起した。
 辛さん、五十嵐さんの提起のあと、会場からも質問や意見が出され、活発な討論となった。

9条は必要
1章は不要

 施行56周年憲法記念日集会(5月3日・東京)は、「都市は戦争できない」と題して五十嵐さんが「東京は、自然の危機にも人工の危機にも対応できていない。ほとんど無防備といっていい。たとえば自然の危機は地震。もし平日に地震が起きれば、阪神大震災よりも多くの被害があるだろう。人工的な危機には、テロや原発事故、戦争がある。イラク戦争で日本はアメリカを支持しているため、攻撃を受ける可能性も少なくない。しかし危機管理上、自然災害、人工的攻撃ともに無防備な日本は、自分から戦争をできる状能にない。憲法9条は都市型社会の観点からみてとても重要。アメリカの押しつけ憲法という声もあるが、制定過程よりも条文の主旨にこそ意味がある。けっして変えられてはならない。日本国憲法に足りないものがあるとすれば、自分のことを自分で決める価値だ。いま、市民が声をあげても、それが正しいとされない。たとえば住民投票で原発はいらないと意志表明しても、結局は議会など行政をとおさなくてはならず、拘束力がない。選挙に免じて権力に自分の権利をゆだねているのが現状だ」とのべた。
 つづいて辛さんが、「もう戦争はいらない」と題して提起。「私たち在日は、犯罪者予備軍とされている。それをこの3年でひしひし感じる。9・11以降だけでも300件以上、民族学校へのいやがらせがあったが、その3分の1が高校生による加害。私たちの敵はだれか、まわりにいる人びとの、無知と差別だ。暴言で一番ひどかった言葉は、『植民地のときに朝鮮人を全部殺しておけばよかった』というもの。朝鮮が日本を憎んでいるという先入観もあるようだ。日本と北朝鮮ははく似ている。それは世襲制だからだ。世襲制は能力主義を奪い、無力感をうむ。天皇こそ世襲の最たるもの。私が日本国憲法にいらないと思うのは第1章だ」と指摘した。
 また辛さんは「9・11以降、講演を中止せざるをえないことが何度もあった。講演を中止した大学に『在日とは何か』と説明を求められて出かけると、在日がなぜいるのかすら知らない学生が多かった。しかも、なぜ在日が日本にきたと思うかと聞くと、『稼ぎたいから』という答えが返ってきた。私たち在日は、こうした無知と差別においつめられている」と語った。


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