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「人権擁護法案」をめぐる
情勢とわれわれの課題

 現在開会されている第156通常国会で、3度目の継続審議中である「人権擁護法案」の取り扱いをめぐって、与野党双方での水面下の動きが始まっている。
 野党では、3月12日、19日と民主党(中野・江田両議員)、社民党(中西・枯田両議員)、自由党(中井・樋高両議員の3党合同会議がおこなわれ、3党共闘で「人権擁護法案」にたいする統一対案を作成していく方向が確認され、現在は「対案」作成の3党実務協議(民主党・江田議員、社民党・枯田議員、自由党・樋高議員)がつづけられているところである。対案作成のポイントは、「所管問題」「地方人権委員会設置問題」「救済方法問題」の3点で、ここを中心に協議がおこなわれており、早晩、対案が出されてくる模様である。
 与党では、こうした野党の動きをにらみながら、自民党人権問題等調査会の野中会長を中心にして関係者間の協議が最近頻繁におこなわれているといわれている。
 これらの動きは、われわれが「今国会闘争の具体的な成否は、政治的に高いレベルでの与野党協議のテーブルが設定できるかどうかにかかっている」との認識のもとに、与野党にたいするとりくみをすすめてきた結果である。しかし、現段階では「与野党協議のテーブルが設定」できるという明確な見通しはまだ立っておらず、今後の「有事関連法案」などの取り扱いをめぐる政局がらみの国会運営という状況のもとで、厳しい対応が迫られることが予想される。

 このような状況認識をふまえながら、いよいよ正念場にかかってくる国会闘争で、「人権擁護法案」の抜本修正をかちとるために従来のとりくみを継続しつつ、さらに現実的で実効力ある闘いを仕掛けていく必要がある。
 一つは、4月16日に公表した「地方人権委員会に関する論点のまとめ棄)」を徹底的に討議し、地方自治体でも差別撤廃・人権侵害救済の責務と実効性から「地方人権委員会」の設置が必要であるという意志を明確にしていくとりくみをすすめ、政府・国会に反映させていくことである。各地方自治体にたいするとりくみと同時に、全国同和対策協議会や全国知事会などにたいしても積極的に働きかけていくことが重要である。
 他の一つは、「国内人権委員会の地位に関するパリ原則」にもとづく、独立性を有した人権委員会創設を実現するために、国連を中心とした国際人権勢カを有効活用することである。その一環として現在、国会期間中に「アジア・大平洋地域国内人権機関フォーラム(APF)・専門家セミナー」を開催する準備をすすめているところである。APFは、国連人権委員会第空言期で、日本での「人権擁護法案」がパリ原則に合致するかどうかの懸念を表明するとともに、「日本政府に支援や助言を提供する用意」があることを表明している(4月16日)。
 これらのとりくみを周到におしすすめながら、「人権擁護法案」の抜本修正をかちとっていく条件を整えていくことが重要である。

 われわれは、国会闘争が重大な局面にさしかかると思われる5月22日に、「部落解放・人権政策確立要求中央集会」を東京・九段会館で開催する。「人権擁護法案」にたいして、「廃案を求めず! 廃案を恐れず! 断固として抜本修正をかちとる!」という姿勢をあらためて内外に明確にするとともに、抜本修正に向けた与野党協議のテーブル設定を強く求めていくものである。
 また、「人権所掌は法務省」という霞ケ閑の枠組みを打ち破って、「人権委員会の所管」問題と「総合的な人権窓口機構」の設定を求めていくために、内閣府交渉を実施する予定である。
 さらに、「地方人権委員会」設置問題や地方自治体での「同和」行政・人権行政の確立を求めて、全国同和対策協議会や全国知事会などにたいして申し入れや意見交換の場を設定していく準備をすすめている。
 第156通常国会で、「人権擁護法案一の抜本修正をかちとるための闘いに最終的な決着をつける決意で、総力をあげた闘いを展開していこう。


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