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狭山再審の実現へ
各地で闘いを積み
重ね、5・25中央
集会に結集しよう
「解放新聞」(2004.04.12-2165)

 

 3月2日、政府は与党で合意した裁判員制度導入の法案と「刑事訴訟法」の改正案を閣議決定し、通常国会に提出した。衆議院法務委員会での審議が4月からはじまっている。
 われわれがくりかえし指摘してきたように、この法案では、証拠の開示・不開示の判断が一方的に検察官に委ねられており、窓意的な判断によって証拠が弁護側に開示されないという事態を招く。また、証拠を特定し、重要性を明らかにして請求するように弁護側に求めることは、検察官手持ち証拠の内容さえ知ることができない弁護側からすれば、開示請求すらできないことになり、アクセス権はまったく保障されない。げんに狭山事件では大量の証拠が未開示のまま紛糾している。
 この法案では「証拠開示の拡充」とはいえない。少なくとも、「証拠リスト」の弁護側への開示を制度化し、供述調書や鑑定書、取り調べ状況を記録したものなど類型化された証拠については請求があれば自動的に開示するような証拠開示のルールでなければ、えん罪・誤判を防ぎ、国際社会に通用する制度にはならない。
 昨年、検察官による開示義務の範囲をより客観化するための法改正をおこなったイギリスや、証拠不開示を理由に上訴裁判所の決定を破棄したアメリカ連邦最高裁など、世界の証拠開示法制をみれば、この法案では決定的に不十分であることは明らかだ。
 公正な証拠開示を求める会の「証拠開示法制要綱案」を支持する署名が30万人以上も寄せられていることを受けて、民主党では、この法制要綱をとりいれた「証拠開示法案」を独自に提案する予定である。誤判・えん罪をなくすための証拠開示法制度を実現するために、国会議員への訴えをさらに強めたい。

 3月23日に、狭山再審弁護団は、最高裁判所に特別抗告申立補充書を提出した。同時に、この3月からあらたに担当となった藤井敏明・調査官と面会し、補充書の内容について説明するとともに、棄却決定取り消しと事実調べ・再審開始の必要性を訴えた。
 今回の補充書で、弁護団は、これまで提出した21通にもおよぶ筆跡鑑定書、意見書、調査報告書の内容・意義をまとめている。これらの筆跡鑑定書、意見書は、大野晋さんら著名な国語学者や元警察鑑識課員、あるいは識字の実践・研究をおこなってきた学者など、専門知識と経験をもつ鑑定人による鑑定書である。
 にもかかわらず、これまでの裁判所は、鑑定人尋問などの事実調べをまったくおこなうことなく、主観的な判断でこれら新証拠をしりぞけている。たとえば、石川さんには脅迫状を書けなかったとする大野鑑定にたいして再審棄却決定は「(石川さんは当時)ある程度の国語知識を集積していた(から書けた)」などとなんの証拠にももとづかない独断によつてしりぞけている。
 補充書では、筆跡関係新証拠の意義を再度、最高裁に訴えるとともに、有罪証拠とされた三つの筆跡鑑定の誤りを鑑定方法批判、資料選択の窓意性、筆跡の違いの無視など詳細に批判しつくしている。
 また、斎藤鑑定人による一連の鑑定結果が石川さんの自白の不自然さ、自白と客観的事実の食い違いと一致し、石川さんが無実であることを示していることを明らかにしている。とくに、「2条線痕・抹消文字」の重要性を指摘する。「2条線痕・抹消文字」の存在は、同じ封筒上の「少時」が万年筆で書かれていることや「中田江さく」が犯行前に書かれているという斎藤鑑定の指摘をさらに補強する。
 これらは真犯人による「犯行前の万年筆使用痕跡」を示しており、万年筆と無縁であった石川さんが犯人ではありえないことを明らかにしている。さらに、「犯行前の万年筆使用」の事実は、「犯行現場で被害者の万年筆を奪って脅迫状を訂正した」という寺尾判決の認定が完全に崩れていることを示し、万年筆の疑問にも結びつく。「被告人が犯人であるとすると……ウソをついていることになる」などと最初から犯人と決めつけた事実認定をおこなった寺尾判決の誤りは明らかである。自白の信用性とそれに依拠した有罪判決を全面的に見直す必要があることは明らかだ。

 弁護団の補充書提出を受けて、特別抗告審はいよいよ正念場をむかえる。筆跡鑑定にしても斎藤鑑定にしても、有罪判決の根幹を揺るがすものであり、事実調べは不可欠である。とくに、封筒上に「2条線痕」「抹消文字」という万年筆の痕跡があることについて、裁判所はきちんと説明しなければならないはずだ。
 「抹消文字・2条線痕」を指摘した斎藤第2鑑定、第3鑑定を「推測の域を出ない」「独断に過ぎない」としてしりぞけ、「2条線痕」にまったくふれなかった異議申立棄却決定が審理を尽くしたとは到底いえない。斎藤第5鑑定補遺が明らかにしたように、封筒上の「抹消文字」は事件当時の埼玉県警鑑識課員も現認している。斎藤鑑定人の「推測」「独断」ではないのだ。最高裁は棄却決定をただちに取り消し、東京高裁に差し戻して、鑑定人尋問などの事実調べを保障すべきである。
 今回の補充書は、亡くなられた山上弁護士が提案され、最後まで執筆をつづけられたものを受け継いで作成された。石川さんが脅迫状を書いたのではないとする多数の筆跡鑑定の意義や「2条線痕」の意味、自白の矛盾・不自然さ、押収万年筆の疑問を徹底して市民に広げ、最高裁に事実調べ・再審をせまる闘いをもりあげねばならない。総学習を強化し、特別抗告審の闘いを全力でおしすすめよう。
 中央本部では、石川さんの不当逮捕から41年をむかえて、5月25日に、中央総決起集会をひらく。また、最高裁が判断をだす段階にはいったことをふまえて、最高裁に事実調べを求める署名運動を始める。各地でも学習会、決起集会などをひらき、広く市民に訴えるとりくみを展開しよう。


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