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今年の闘いをふりかえり
運動の発展をかちとろう
「解放新聞」(2004.12.27-2200)

 

 今年3月に開催した第61回全国大会は、「小泉政権の危険な反動『改革』路線と対決し、生命・人権・平和・環境を基軸とした部落解放・人権政策確立への闘いを果敢におしすすめ、松岡参議院選挙の必勝をかちとろう!」を大会スローガンとして掲げた。
 これは、部落解放運動の新たな転換への方向付けが、国権主義・新保守主義・反人権主義に貫かれている小泉政権との対決なしには展望できないという情勢認識にもとづき、その変革への連動の基軸を「生命・人権・平和・環境」として押し出し、これを政治の場に具体的に反映させていくために松岡書記長を参議院比例区選挙に推挙して闘うということであった。
 このスローガンのもとに、「8つの重点課題」を設定し運動を展開してきた。第1は、松岡参議院選挙闘争に勝利する課題、第2は 「人権侵害救済法」制定を中心とする行政闘争の強化の課琴第3は狭山闘争に勝利する課題、第4は「人権のまちづくり」運動を地域に根づかせる課題、第5は教育の反動化にたいする闘いの課題、第6は生活と仕事を守る課題、第7は反差別国際連帯強化の課題、第8は組織・財政強化と理論活動を活発化させる課題であった。

 2004年のおもな活動をふりかえってみると、まず第1には、全同盟員が一丸となって勝ちとった松岡参議院選挙闘争をあげることができる。
 10年ぶりに「解放の議席」を回復したということは、大きな喜びであるとともに、今後部落解放運動が政治に何を求めていくのかを明確にしていくという重大な責務をもつことを意味している。当面は、松岡選挙を勝利に導いてくれた多くのマイノリティ団体や各方面の人権団体の人たちと協働して、「人権立国」を目指すための人権政策マニフェストを確実に実現していくことが求められているのである。
 第2は、「人権侵害救済法」の早期制定の闘いである。昨年10月に廃案になった「人権擁護法案」に代わる法律は、この1年2か月の間、国会へ再提案されることなく、いたずらに時間だけが経過している。これは、政治の立法不作為であり、怠慢である。
 われわれは、「人権擁護法案」の抜本修正を求める論議と経過をふまえ、今年2月に対案として「人権侵害救済法案要綱」を公表して広く各界の意見を集約しながら、人権侵害救済に関する法律のあり方を提示してきた。日本での「人権の法制度」確立への重要な一環である人権侵害救済に関する法律の1日も早い制定実現をはかるために、政治がその主導的役割を果たす責任がある。来年1月から開会される第162通常国会では、なんとしても「人権侵害救済法」の制定を実現させなければならない。
 第3は、狭山再審闘争の勝利への闘いである。勝利への重要な鍵を握るとりくみとして、証拠開示のルール化を求める闘いを司法制度改革問題と連動させてすすめてきた。立法化は実現しなかったが、日本の司法制度の問題点を国内外に明らかにし、全証拠開示への条件を粘り強く整備してきている。
 狭山事件の公正裁判を求める新たな100万人署名も短期間のうちに50万人を突破し、堅実な広がりを示している。だが、最高裁は、来年3月頃までには何らかの判断を出すのではないかともいわれている。石川さん無実へ早期決着を勝ちとるために、緊張したとりくみの継続が必要である。
 第4に、政治の反動化、長期経済不況、社会不安の増大などのもとで、潜在化していた差別事件が急増してきていることである。
 犯人が逮捕された東京の連続・大量差別ハガキ事件や京都での司法書士が絡んでの身元調査がおこなわれた結婚差別事件、さらにはインターネット上の差別事件なビ枚挙に暇がない状況になってきている。悪質化・頻発化する差別事件にたいする糾弾闘争の集中したとりくみが重要である。
 第5に、「法」失効後3年を迎えようとしているもとでの同和・人権行政を確立させる闘いである。各地の地方行政にたいして、部落問題解決への行政責任を再確認させながら、人権行政を発展させる行政闘争の強化が決定的に重要である。
 率直にいって、この行政闘争が弱体化している。地方分権の流れのもとで、同和・人権行政の原則を改めて位置づけながら、「三位一体改革」や「指定管理者制度」の問題などを検討しつつ、建設的な「人権のまちづくり」運動を推進していく闘いを地域に根づかせる必要がある。
 以上のようなとりくみに加えて、国際連帯活動も「人権教育の国連10年」のとりくみを「人権教育の世界プログラム」に継続させるなど着実に成果を生みだしてきている。しかし、組織・財政強化や人材育成の課題ではまだ十分なとりくみがすすんでいないという反省点もある。

 2004年の闘いを振り返ってみると、日本社会が今歴史的な分水嶺に立っているとの認識をあらためて強く感じさせられる。
 戦後60年の営営とした努力によって築き上げられてきた「平和と人権」が危機に立たされている。物質的豊かさを追求した経済の行き詰まりが、社会の不安と閉塞感を生み出している。
 これを打開するためにということで、「戦争のできる国」、「弱者切り捨ての構造改革」、「強い日本」を標樗して政治が反動化してきている。国権主義、新保守主義、新自由主義が台頭し、憲法や「教育基本法」などを改悪しようとする動きが挑戦的に露骨化してきている。だが、このような危険な動きを許さず、「平和と人権」をさらに確かなものしていく「人権立国ニッポン」というあらたな方向をめざす人たちも大きく存在している。
 あらゆる分野で、「国のあり方」、「社会のあり方」、「人間のあり方」が鋭く問われている。部落解放連動は、80有余年の差別撤廃・人権確立を求め続けた経験と教訓から、これらの問題にたいして「生命・人権・平和・環境」の視点を基軸にしながら、誠実にかつ大胆に政策提案を発信していきたい。来年は、部落解放運動の真価が掛け値なしに問われる年になる。


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