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小泉首相の靖国神社への
参拝強行に断固抗議する
「解放新聞」(2005.10.31-2242)

 アジア諸国をはじめ、国内外の激しい批判の声をいっさい無視し、小泉首相は10月17日、年に1回参拝するという小泉流の「公約」を守り、5年連続の靖国神社参拝を強行した。私たちは、この暴挙にたいし断固抗議する。
 靖国神社は天皇制軍国主義による侵略戦争を賛美し、「国民」が喜んで戦争に行き、死んでも軍神と祀られることで、自身も、家族も、悲哀を幸福にしていく装置としてつくられ、現在もそうありつづけている。
 小泉首相の参拝強行の目的は、アメリカに追従しながら、イラクへの自衛隊の派兵の続行、戦争ができる国をつくるなかで、靖国神社という装置を使って、喜んで戦争に行く人間をつくり出し、天皇制イデオロギーの強化をさらにはかることといえよう。
 参拝強行をつづけることが、中国や韓国、アジア諸国からの批判を「内政干渉」とし、「過去を清算し未来志向」がなぜできないのか、というかたちで、偏狭なナショナリズムを煽り、差別1排外主義をつくりあげる役割も果たしている。
 この参拝を受け、中国、韓国は予定されていた首脳会談を急遽キャンセルする、というかたちで不快感と抗議の意志を明確に示した。

 憲法をもっとも守り、実践すべきは為政者のトップに立つ内閣総理大臣である。小泉首相の靖国神社参拝にたいして、福岡地裁、大阪高裁は明確に違憲判決を突きつけた。そのため、今回の参拝は私的参拝の様相をこらそうとした。しかし、秋季例大祭という日露戦争での侵略を言祝ぐ祭礼の日取りを選んで強行した参拝は、公的なものといえる。政教分離原則違反、違憲なのだ。
 なぜ、憲法は政教分離という原則を掲げているのか。これは、過去の歴史をみればわかるように天皇制軍国主義のもと、侵略戦争での戦死を幸福だとしていく、装置としての靖国神社が、天皇制―国家神道という宗教として、国家から特別に過されてきたためだ。だからこそ、憲法には、同じ過去の轍をふまぬために、政教分離の原則が謳われているのだ。
 考えても見よう、近代という時代のなかで日本が歩んできた道を。
 日本は、国内での差別・抑圧の強化をつうじ、対外的には侵略戟争を繰り返し、アジア諸国を中心に財の強奪をはかり、「領土」を拡張し、植民地政策をとるなかで、日常的に多くの人びとをさらに雇別・抑圧し、搾取と収奪をくりひろげる構造をつくり上げてきた。
 中国、朝鮮半島などへの帝国主義的侵略戦争では、三光作戟(殺しっくし、奪lいつくし、焼きつくす)で多くの人びとを死に追いやり、強制連行-強制労働を強い、軍事性的奴隷(従軍慰安婦)を強制し、多くの人びとの人権を踏みにじってきた。
 こうした行為、戦争を食い止めることができなかったことを含め、私たち自身の戦争責任も明確にしながら、過去を克服する作業をすすめることが、敗戟後の私たちの出発点だったし、いまなお必要なことなのだ。
 口先では「反省とお詫び」を語るものの、小泉首相の姿勢は、日本をはじめアジア諸国の人びとの気持ちを訝涜しており、平和と人権をめざすものとはいえない。

 まさに、この時期に「第5回反差別国際連帯青年研修」が中国で11月1~6日におこなわれる。これは組坂委員長を顧問に、赤井中執が団長となって19人が参加するもので、中国の青年との交流、南京では日本軍による虐殺を忘れないための「大虐殺記念館」の改修作業に参加する。
 私たちの立場は明確だ。それは、松本治一郎元委員長が井戸を掛り、今日大きく育っている、日中民衆の友好・交流を深める運動をはじめ、平和と人権を基調にしたアジア民衆との友好・連帯を、さらに拡大することだ。小泉首相による靖国神社参拝強行のような、差別―排外主義を煽り、戦争への道を突きすすむのではなく、アジアを軸に世界の平和・人権の確立をはかる、共生社会の道こそが私たちがめざすものである。
 青年研修が大きな成果をあげることを期待したい。


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