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秋の臨時国会で「人権侵害救済法」
制定への闘いを全力ですすめよう
「解放新聞」(2006.09.18-2286)

 8月30日に与党人権問題懇話会が久びさに再開された。法務大臣直轄の「人権擁護法案検討チーム」から論点整理の状況報告を受けるためである。
 与党懇は、ひきつづき古賀誠・議員(自民党元幹事長)が座長を務めることが確認され、検討チームから報告された修正論点に関して熱心な議論がおこなわれた模様である。
 マスコミ各紙は、個個の情報取材から推測記事を一斉に報道している。各紙の見適しは、つぎのようなのものである。「人権擁護委員資格 日本人限定の条項」(読売)、「一部修正方針与党懇に報告」(産経)、「人権擁護法案見直し確認」(日経)、「人権擁護委員国籍条項盛る」(朝日)、「人権擁護委員 日本人限定固める」(毎日)。
 しかし、当日の与党懇の会議終了後は配付資料もすべて回収されたという。与党懇の議論が、きわめて緊張した政治状況のもとでおこなわれていることと政府与党間での意見がまとまっていないことの反映である。
 重要なことは、与党懇が開催されたことで、人権侵害救済に関する法律の「修正論議」のボールが法務省検討チームから与党懇に投げられたことで、しばらくは政府与党間のキャッチボールがつづくとしても、主導権が与党懇に移ったということである。
 与党懇の終了直後に、中央実行委員会の役員代表がおこなった「法案の早期制定」の要請にたいして、与党懇の中心メンバーが「ボールは与党懇の手の中にある。慎重にしっかりと議論を煮詰めていきたい」と語ったことは、その事情を物語っている。
 今後、「人権侵害救済法」の早期制定に向けて与党懇や野党の各政党にたいする強力な働きかけが重要になってくる。

 何をどのように働きかけていくのか。第1のポイントは、秋の臨時国会で「人権侵害救済法」の提出・成立をめざしていくということである。
 小泉首相は、昨年9月29日の参議院本会議での答弁にひきつづき、今年1月23日の衆議院本会議で「人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるように努めてまいります」と答弁している。
 差別・人権侵害の実態からしても「早期提出」という答弁は当然のことである。しかも、人権擁護施策推進審議会が「法」の必要性を指摘する答申を出してから5年の時間が経過していることを考えれば、政府責任からいってもなおさら当然のことである。むしろ、第164国会で法案提出できなかった政治責任が問われてしかるべきである。
 しかし、政府の動向は、今年4月段階の閣僚懇談会での「次期通常国会での提出をめざす」という杉浦法務大臣報告が既定路線として定着化しつつある。しかし、これは、小泉首相の度重なる「早期提出」の答弁からしても、無責任の誹りを免れない。早期提出が政府の基本路線であるならば、直近の秋期国会での提出をおこなうということが本筋であり、政府としての責任ある姿勢である。
 したがって、われわれは、自民党内の意見の不統一や継続法案の審議が山積しているという状況をふまえながらも、「人権侵害救済法」の秋期国会での制定をめざすというとりくみを求めていくことが重要である。
 わけても、人権や平和が危機に晒されるという政治状況が進行しているもとでは、「人権侵害救済法」を国会審議の上に乗せていくということで危険な状況への有効な歯止めをかけることができるという意味でも秋期国会での制定をめざす闘いは重要である。

 第2のポイントは、これまでも議論してきたように「独立性・実効性」を軸にして提出する法案の充実化を図るということである。
 自民党内の国権主義的・民族排外主義的な反対意見を考慮して、法務省検討チームは人権擁護委員の選任資格に国籍条項を入れ定住外国人を排除するという修正案を与党懇に提示したといわれている。
 これは、人権擁護施策推進審議会の答申が、今後の国際化という時代要請に応えて「人権に国籍はない」との観点から、定住外国人にも人権擁護委員選任にあたって門戸を開くべきとした積極的な方向に逆流するものであり、許されるべきことではない。
 秋期国会での「人権侵害救済法」の制定をめざす闘いで、再度法案充実に向けたわれわれの基本的な立場を確認しておきたい。①独立性を確保するために創設される人権委員会は内閣府の外局とすること②実効性を確保するために地方人権委員会も暫時的に設置すること③メディア規制条項は削除すること④人権擁護委員の選任資格は原案どおり国籍条項を削除すること⑤差別・人権侵害の定義を明確にすること、などである。これらの考え方は、すでに繰り返し公表してきたことである。
 政府・与党は、これまでの議論の経過をしっかりとふまえながら、差別・人権侵害で苦しんでいる当事者の実態を直視して、差別・人権侵害の救済に本当に役立つ法律を真撃な与野党協議にもとづいて仕上げ、秋期国会で法律制定の実現をはかるべきである。542の自治体議会決議や国連諸条約委員会からのあいつぐ勧告という国内外世論もそのことを求めているのである。
 われわれは、困難な諸条件が存在していることは認識しているが、秋期国会での「人権侵害救済法」の制定をめざす闘いを着実に積み上げ、その実現に向けて全力を傾注していこう。

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