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部落問題資料室
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主張

 

就職差別撤廃のとりくみを
いっそう強化していこう
「解放新聞」(2007.12.10-2348)

 「統一応募用紙」違反が繰り返されている。
 ハローワークに報告され厚生労働省に集約された違反件数(事業所数)は、2003年度799件、2004年度879件と、それ以前の10年余りをみてみると800件前後で推移してきた。その後、2005年度1041件、2006年度1147件と増加した。
 この増加の理由を考えるとき、大きな要素として、2005年9月に厚生労働省から各都道府県労働局に通達が出され、高等学校との連携強化、とくに違反事象の把握についても連携を強化するよう指示が出されたことがある。私たちは、厚生労働省交渉で、各都府県連や県同教などの把握した件数に比べ、厚生労働省の把握した違反件数が少なすぎることを指摘し、学校との連携をしっかりとり、指導を強化することを求め、そのことがこの通達に結びついた。
 しかし、実際には依然として多くの違反事象が見逃され、放置されているのではないかと考えられる。

 具体的にみていくと、いま、岐阜県に本社がある1部上場企業が、採用内定後に「家族の状況届出書」を提出させていたことが明らかになり、とりくみをすすめている。「届出書」には本籍地(地番まで)、家族状況と家族の続柄、生年月日、職業など詳しく書かせるようになっていた。
 この会社には、岐阜、愛知、三重、滋賀の50校から149人の採用内定者があったが、問題を指摘できたのは、50校のうち1校だけであった。「受験報告書」のとりくみができていない県もあり、違反を防ぐ点検システムの構築と啓発の内容が問われている。
 また、高知県の金融機関は、応募書類の「履歴書」には違反項目はなかったが、採用試験の当日、試験の直前に「受付カード」を配って記入させ、回収していた。「受付カード」には、本籍地(地番まで)、家族状況と続柄、生年月日、職業、勤務先、学校など詳しく具体的に書かせるようになっていた。応募書類とは別に、就職差別につながる求職者の情報をわざわざ「受付カード」で収集したことは、悪質であり言い逃れができないものである。また、応募書類として「健康診断書」の提出も求めていた。この件については、県人権教育研究協議会や共闘会議、連合と連名で労働局に申し入れをおこない、とりくみがすすめられている。
 これらは、両方とも大手の企業であり、なぜこのような違反が続けられてきたのか真相究明が必要である。また、この他にもいくつかの都府県連でとりくみ中の事件もある。本来、就職差別撤廃に向けた啓発をすすめるべき自治体でも、違反が多数発見された深刻な実態もある。
 これらの一つひとつの事件について、真相を明らかにし、再発防止と就職差別撤廃に生かしていかなければならない。

 これらの背景には企業内公正採用選考人権啓発推進員制度の形骸化やハローワークによる研修の不十分さがある。また、「職業安定法第5条の4」と「大臣指針」に違反する法令違反であり、厳しい対応が求められる。
 学校とハローワークの連携も重要だ。現在は高等学校が中心だが、大学との連携も強化し、すべての求職者を対象に研修と「受験報告書」のとりくみが必要である。
 また、雇用差別を禁止したILO第111号条約は、ILO条約のなかでも、とくに重要な中核的条約とされており、差別は犯罪であるということは国際的な認識である。日本でも同条約批准と、就職をはじめ雇用全般で差別を禁止する法整備が急務である。
 「部落地名総鑑」のあらたな発覚、「電子版・地名総鑑」の発覚、さらにあいつぐ戸籍等大量不正取得事件と身元調査の実態を考えたとき、就職差別撤廃に向けたとりくみをいっそう強化しなければならない。

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