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主張

 

狭山再審と司法民主化の
世論を大きくしよう
「解放新聞」(2008.05.12-2369)

 石川一雄さんが不当に逮捕され、えん罪におとしいれられて、5月23日で45年をむかえる。狭山事件再審弁護団は、この日、東京高裁に再審請求の新証拠と補充書を提出する。この日は第3次再審請求が申し立てられて、まる2年をむかえる日でもある。
  この2年間の第3次再審請求で、弁護団は、石川さんの無実を明らかにする新証拠を2回にわたって提出した。第3次再審請求にあたって、筆跡、筆記能力の相違から石川さんが脅迫状を書いていないことを明らかにした鑑定書、万年筆の疑問を示す元警察官の報告書などを提出した。さらに、昨年3月には、自白のような死体の逆さづりがなかったことを明らかにする法医学者の鑑定書などが出された。そして、今回は、殺害方法などの自白内容が真実ではないことを示す法医学鑑定などが提出される。これら第3次再審請求で弁護団が提出した新証拠は学者や元警察官など科学的知識や経験に裏付けられた専門家による鑑定書であり、鑑定人尋問を裁判所がおこなうのは当然であろう。東京高裁が事実調べ・鑑定人尋問をおこなうよう強く求めたい。

 昨年、誤認逮捕が明らかになり再審で無罪となった氷見事件で、裁判所は、自白にたよって、十分な証拠調べをおこなわないまま間違った有罪判決をおこなったといわざるをえない。裁判所が警察での取り調べの実態を厳しくチェックするとともに、自白の信用性を慎重に吟味し、十分な証拠調べをすることは誤判を生まないための必要条件である。無実の人を誤判から救済することを理念とする再審制度で、弁護側が提出した証拠の事実調べをおこなうことは当然である。しかし、狭山事件では再審請求は20年以上におよぶがまったく事実調べがおこなわれていない。
  また、氷見事件では、検察が隠し持つ証拠の検討が誤判救済に不可欠であることも明らかになった。とくに、新証拠を要件とする再審請求では、検察官手持ちの公判未提出証拠・資料の弁護側への開示が必要不可欠であるはずなのに、証拠開示が保障されていないのが現状である。
  現行制度では再審請求の審理手続きの規定はなく、鑑定人の尋問をおこなうかどうかも裁判所の判断に委ねられている。証拠開示をするかどうかは検察官の判断に委ねられており、再審請求での弁護側への証拠開示も保障されてはいない。このような現状では「無辜の救済」のための再審制度は機能していないといわざるをえない。
  この間のえん罪の教訓、裁判員制度の開始、あるいは国連のさまざまな改善勧告をふまえるならば、再審制度の充実化、事実調べ、証拠開示などの手続の保障も必要である。
  現在、参議院に提案されている取り調べ可視化法案(刑事訴訟法の一部改正案)は、取り調べ全過程の録画・録音、録画・録音のない自白調書の証拠能力の否認、証拠リストの弁護側への開示を柱とする。これは、この間のえん罪を教訓にしたものであると同時に、国連・拷問禁止委員会や自由権規約委員会の勧告にものっとったものである。裁判員制度開始をひかえて、この可視化法実現を第一歩として、自白依存の捜査・裁判を見直し、再審請求での事実調べと証拠開示を保障するように司法民主化をすすめるべきである。

 狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会の主催で5月23日、「狭山事件の再審を求める市民集会」を開催し、弁護団から新証拠提出の報告を受ける。また、ほかのえん罪事件からもアピールを受けて、事実調べ・証拠開示の重要性、取り調べ可視化、自白の厳密な検討が誤判救済のために不可欠であることを訴える。そして、えん罪防止・誤判救済のための司法民主化の第一歩として、現在、参議院に提出されている「可視化法」の実現を訴えて、国会請願デモをおこなう。
  狭山第3次再審を審理する東京高裁第4刑事部の門野裁判長が就任して2年目に入る。出された新証拠の事実調べを東京高裁がおこない再審を開始するかどうか正念場をむかえる。4月はじめには北海道内2か所で市民集会がひらかれ、第3次再審の現状が訴えられた。
  全国100万人の市民の声を東京高裁が受けとめ、事実調べをおこない、再審を開始するよう求めて各地でとりくみを強化しよう。狭山再審と司法民主化の世論を大きくしよう。

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