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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

インターネットを活用し積極的に
人権情報を発信していこう
「解放新聞」(2008.06.02-2372)

 ネット上の差卯事件がいちじるしく増加している。これらの事件も現実空間の差別行為者が存在しており、紛れもなく現実空間の事件である。電子空間が悪用されているのである。
  差別行為者の視点からみれば差別行為をする場所が変化しただけである。しかし差別行為者が現実空間のトイレや壁、ビラなどに落書する行為とでは大きく異なる。ネットを通じて世界中の人びとが差別表現を自由に閲覧できるようになるのである。行為者にとっては差別行為自体は旧来と大差はない。変わったのは手書きからキーボードに変わったことだけであるが、社会的影響は大きく異なる。
  ネット上の差別事件は、情報環境が世界を変えたように電子空間上の差別事件が差別事件の態様を変えるような状況になりつつある。
  人権問題は社会の進歩、科学技術の進歩とともに、より高度で複雑で重大な問題になっていくといわれる。それらのより高度で複雑で重大な人権問題や差別事件に対応していく必要性が、今日の差別事件の特徴からも指摘できる。
  ネット上の多種・多様な差別事件に的確に対応するシステムが必要なのである。

 インターネットの特色は、時間的・地理的制約がないこと、不特定多数の人が対象であること、匿名で証跡が残りにくいこと。また、情報発信や複製・再利用が容易であり、場所が不要であることなどである。こうした特性を縦横に利用したネット環境のもとでの差別事件にたいしては、現実空間を前提としたこれまでのとりくみ方では不十分であり、これらの特性をふまえた新たなとりくみ方が求められている。
  高度情報化時代の差別事件に対応した社会や部落解放運動のシステムが求められているのであり、インターネットを活用した人権情報発信が求められているのである。
  ネットが普及するまでの差別事件は差別意識とそれを表出させるエネルギーが相当な量に達するまで実行行為にはならなかった。ネット社会では差別意識を表出させるエネルギーが小さくても実行行為にむすびつく。それは匿名性を高める手段としてネット社会が都合がよいからであり、そのことによって犯人不明の差別事件が増加するという傾向がすすんでいる。これらの犯人は匿名性の保障がなければ多くの場合、実行行為におよばない。
  情報化の進展が差別意識や差別事件を増幅させているのである。

 「電子版・部落地名総鑑」に代表されるように電子空間では差別や人権侵害が放置されているといっても過言ではない。人間の差別意識が極大値に達しているのではないかと思われるような記述も稀ではない。それが電子空間というグローバルな世界で進行しているのである。これらの電子空間上の差別事件や人権侵害にたいして決定的な対処法がないという状態が続いている。社会的、法的、教育的なシステムが十分に整備されていない。今こそ電子空間と現実空間を行き来する社会になっていることをふまえたうえで、インターネットを活用した人権教育・啓発などをはじめとしたとりくみが求められている。
  こうした現実をふまえた新たな社会のルールを創造するという発想が、差別撤廃・人権確立の分野にも強く求められている。

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