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部落問題資料室
NEWS & 主張
同和教育の甘さ露呈
「えた・ひにんを選ぶ人は、いないですよね」
元・小学校長が差別講演

「解放新聞」(2008.10.27-2392)

 「えた・ひにんを選ぶ人は、いないですよね」と、埼玉県草加市の小学校新任者指導教諭であるK元小学校長が、講師として招かれた場で差別講演をおこなったことが分かった。9月11日に、地元の鹿児島県連が確認学習会をもった。

現地で確認学習
  この差別講演事件は、今年8月1日に奄美大島北部の鹿児島県龍郷町教育委員会が主催した「龍郷町教育講演会」で起こった。地元の鹿児島県連は、9月11日、龍郷町中央公民館で確認学習会をおこない、K講師は発言の事実を認めて「同和教育の認識が甘かった」と謝罪した。
  鹿児島県連の山口武文・委員長は、「言葉尻を捉えていっているわけではない。学力だけではない、人としての生き方を学ぶ同和教育の視点から、発言を問題視している」とのべ、K講師と龍郷町教育委員会、県教育委員会にたいして今回の発言にたいする見解を求めた。

龍郷町差別講演事件の概要
 8月1日に鹿児島県龍郷町教育委員会が主催した「龍郷町教育講演会」で、「「教えて考えさせる授業」の理論と実践」と題して埼玉県のK元小学校長が講演した。
  K講師は、ビデオを使いながら、国語や理科などの授業の実践方法を解説し、社会科の指導事例として小学6年生の身分制度の授業方法を紹介。
そのなかでK講師は、子どもたちが身分制度をなかなか理解できないので、士農工商のどれか一つを生徒に選ばせ、武士や町人ばかりで「百姓」がいなければ社会が成り立たたないことを考えさせる方法を紹介した。
  そして参加した教員に向かって、「みなさんだったら士農工商を勉強したあとで、自由に身分を選びなさいといったら、何を選びますか、士を選びますか、農を選びますか。工商を選びますか。あるいは誤解を恐れずにいえば「えた・ひにん」なりますか。何を選びますか」と問いかけ、なりたい「身分」を挙手して選ばせた。そのさい「まさかと思いますが「えた・ひにん」というか、いないですよね」と発言し、「現実に、どのクラスでもこうなるんです」と続けた。
  講演の終了後に、参加していた複数の教員が主催者にたいし「今の発言は差別発言ではないか」と指摘した。
  K講師の発言は、「「えた・ひにん」は、だれもなりたくない人たち」ということが前提になっており、これがそのまま授業で実践された場合、子どもたちのなかには「同和地区の人=だれもなりたくない」という印象が植え付けられることになる。身分差別の学習の結果、「同和地区の人は、だれもなりたくない人たち」という理解や印象が残るとすれば、偏見を植え付けるようなものだ。
  K講師は、今年3月まで草加市内の校長を務め、退職したが、新人教員を指導する新任者指導教諭として再任用され、週3日勤務している。現職時代から小学生に学力をつけるための新しい指導方法として、予習を重要視する「先行教育」を提唱し、本も出版。昨年には、NHK教育テレビに出演したことから、各地で授業実践や講演をおこなっている。

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