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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

政権交代実現をふまえ、建設的な緊張関係のもと、
差別撤廃・人権政策の本格的な確立へ前進しよう
「解放新聞」(2009.09.07-2434)

 2009年8月30日は、120年を数える日本の憲政史上で歴史的な日となった。有権者白身が、圧倒的な民意として政権を交代させたのである。新自由主義路線により格差拡大社会をつくりだした自公政権にたいする明確な拒否の意志を示し、生活者の視点を大切にしながら政権交代を訴えた民主党をはじめとする野党に絶大な支持を与えたのである。たしかに、自公政権にたいする度し難い怒りが受け皿としての民主党への期待として結実しただけという側面もあるが、民意を離れた政権を国民の意思で交代させることができるという「主権在民」を名実ともに具現化したことの歴史的意味には大きなものがある。
  今回の総選挙では、小選挙区代表比例制が導入された選挙では最高の70%近い投票率のもとで、民主党は308議席(選挙前比193議席増)を獲得し、自民党は119議席(同181議席減)、公明党は21議席(同10議席減)で、社民党(7議席)、共産党(9議席)などは現状維持という結果であった。4年前の郵政総選挙での与野党の状況を入れ替えたような民主党の歴史的大勝であり、自公の惨敗である。
  私たちは、民主党や社民党を中心に推薦・支持した171人の候補者のうち9割以上の154人の当選を勝ち取った。もちろん、組織内候補である松本龍副委員長は、得票(123441票)を大きく伸ばし、3万5千票近くの差をつけて7選を果たした。大阪の中川治候補も自民党の重鎮である中山太郎候補に3万票近くを上回る得票(132399票)で返り咲いた。

 歴史的な政権交代は実現した。新たな政権の枠組みに向けて政局は激しく動いている。9月中旬には特別国会が開催され、鳩山民主党代表を首相とする新政権が誕生する。自民党は9月28日に総裁選をおこなうことを表明している。それ以降直ちに臨時国会がひらかれることになるだろう。臨時国会では、来年度予算の概算要求の従来方式の阻みかえや政権公約であるマニフェスト実現のための政治の仕組みや政策をめぐって攻守逆転した与野党の激しい論争が展開されることになるのは必至である。
  私たちも当然のことながら、民主党や社民党の候補者との間で交わした「政策協定」の内容を実現していくために全力を尽くすことになる。「政策協定」6項目の概要を再度確認しておきたい。①憲法や同対審答申などの基本精神をふまえた部落問題の根本的かつ速やかな解決に向けた国政活動の展開②国内人権機関の創設を含む「人権侵害救済に関する法律」の早期制定③「人権教育及び人権啓発推進に関する法律」の積極的な具体化と推進④人権行政推進のための体制と法整備の推進⑤狭山事件などの冤罪根絶と「証拠開示の公正なルール化」などの司法の民主化⑥差別撤廃・人権確立に向けた国際潮流への合流である。
  とりわけ、国内人権機関の創設を含む「人権侵害救済に関する法律」の早期制定は、麻生政権のもとでは実現不可能であると判断して、政権交代実現後の新政権のもとでの実現をめざすとした課題であり、早期の国会提出を求めていかなければならない。

 私たちは、民主党を中心とする新政権が誕生したからといって、容易に「人権侵害救済法」が制定できるとは考えてはいない。1994年の自社さの村山政権の時に、「部落解放基本法」が頓挫した苦い経験をもっている。今回の新政権は政党の枠組が基本的に違っているとはいえ、巨大化した民主党の議員のなかには私たちとの政策協定を交わしていない議員が半数以上いるのである。その意味では、自民党内で法案提出をめぐって2005年以降続いてきた混乱が、民主党のなかで起こらないという保証はない。
  しかし、この「人権侵害救済法」の早期制定は、人権・平和・環境にたいする新政権の基本姿勢が問われる重要な政策課題である。民主党自身もすでに独自法案を策定しているし、社民党も同様の法案要綱をもっているのである。新政権与党は、蹄躇することなく直ちに野党(自民党・公明党)との協議を開始し、「人権侵害救済法」の国会提出の準備をおこなうべきである。
  私たちも「部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会」を中心にして、多くの人たちとの協働の力で、今秋期の臨時国会で、新政権にたいする「人権侵害救済法」制定の闘いを果敢に展開していく決意であり、その準備をすすめていく。
  また、民主党マニフェストの個個の政策の精査・検証を行いながら、是々非々の政策提言をおこなっていくことが重要である。たとえば、地方分権化の政策には基本的に賛成であるが、国庫補助金の全面廃止ということで、隣保館事業などの人権政策での国の責任放棄になるような政策は慎重に議論すべきであると考えている。

  私たちは、政権交代という歴史的な偉業については高く評価する。同時に、自公政権時代の数の横暴にたいする教訓をふまえ、民主党自体が単独での絶対安定多数という数の力に決して騎ることなく、人権・平和・環境を軸とした政策を誠実に展開していくことを強く求めるものである。
    部落解放同盟の新政権にたいする立場は明確である。社会的マイノリティへの合理的な政治配慮を欠落させることなく、人権・平和・環境を軸にした政治をおこなう限り、これを支持するということである。いいかえれば、これまで私たちが支持してきた民主党や社民党が政権についたからといって、この政権が打ち出す政策を無条件に支持することはあり得ないことである。私たちが政治に求めてきた人権・平和・環境という視点から政策の是非を問い、積極的な政策提言をおこなっていくことが私たちの基本的立場である。
  歴史的な政治転換の情勢をふまえて、建設的な新政権との緊張関係を保ちつつ、部落解放・人権政策確立への大胆な闘いを広範な人たちとの協働の力で押しすすめていこう。

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