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部落問題資料室
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主張

 

土地差別調査事件の真相を解明し、
闘争本部とともにとりくみを強化しよう
「解放新聞」(2009.09.14-2435)

 「地域下位地域」「同和の人が住む地区と見られており、住宅地としての評価は低い」などと書かれた差別報告書の存在が明らかとなった。
  これは、マンションなどの開発業者―いわゆるディベロッパーなどから依頼を受けて、建設予定地周辺の地域評価や価格の動向などを調査し、報告書にまとめ依頼主に提出していたマーケティングリサーチ会社(大阪市内)が、同和地区の所在地などの情報を差別表現を使い報告していたことが明らかとなり、部落解放同盟中央本部は重大な土地差別事件であるとして闘争本部の立ち上げと真相究明にとりくむことを決定した。
  差別的な報告書を作成していたのは東京に本社のある調査会社で、事件を起こしたのはそのK社の大阪営業所。不動産の折り込み広告をつくる広告代理店などからの依頼を受け、とくに近畿圏内のマンション建設について、周辺の聞き込みなどをおこない、校区評価や地域評価などをおこなうもの。同和地区がマンション建設予定地の近隣にある場合、その同和地区を名指しで「○○1丁目 問題地域」や「○○は、地域的に問題を抱えるエリア」「○○地域は、地元で有名な問題あるエリアとして敬遠されている」などの表現を使い、低レベルに評価し、しかもその近くにマンションを建設するのであれば、価格帯についても低い設定でないと販売できないのではないかと受けとめられる内容となっている。
  さらに、われわれの調査で、新たなマーケティングリサーチ会社数社も同じような差別表現を使い、報告書を作成していたことが判明しており、報告書作成の依頼をした広告代理店や、差別的な報告書を受けとっていたディベロッパーは、相当数にのぼることがわれわれの調査で明らかとなってきている。
  これまでの真相究明では、依頼があるとリサーチ会社の調査員が実際に現地に出向き、周辺の不動産業者や近隣住民などから聞き取りで同和地区の所在地を確認。集められた所在地情報はリサーチ会社で共有され、報告書は社内のだれもが閲覧できる状況にあったと報告されている。

 リサーチ会社が作成した報告書は、5万から15万円ぐらいの価格で、依頼した広告代理店に手渡され、受けとった広告代理店は、差別表現などが記載されている事実を知りながら報告書の表紙を自社の広告代理店名に書き換え、ディベロッパーにサービスとして提供するという関係にあったと関係者による証言で明らかになっている。
  つまり、リサーチ会社は、どこが同和地区かを調べ、それが敬遠される地域であるかのような表現を使い、さらには、問題ある地域として差別評価した報告書を作成し、それを理解したうえで対価を支払い購入するという広告代理店と、差別記載を放置したまま作成された報告書を何の抵抗もなく受け取り続けるというディベロッパーという、3者による差別の構図が、数10年にもおよんで続いていたという実態が明らかとなった。
  中央本部の調査では、現在、マンション建設にかかわり差別的記載のある報告書を282件把握しており、その広がりはいまだ止めどもなく、さらなる真相の究明が求められている。

 リサーチ会社が作成してきた報告書は問題がある表現があったことを認識していたが、指摘できなかった(広告代理店社員の証言)。地域性のページに問題表現があったが、そこが知りたい情報のメインでなかったため、問題にしなかった(ディベロッパー社員の証言)、との認識を示している。この事件に関与した関係者のほとんどが、同和地区の表現に問題があると認識しながら訂正すら求めていない事実が明らかとなっている。
  「いつかは問題になると思っていた。しかし、私ぐらいの立場では指摘できなかった」と関係者の証言が物語るように、リサーチ会社―広告代理店―ディベロッパーという構図が、マンション建設にかかわる差別システムとしてできあがっており、個個の社員の人権感覚など、寄せつけることのない差別の仕組みが存在しているのである。さらに、リサーチ会社への確認作業、広告代理店・ディベロッパーへの事情聴取などにとりくんでいかねばならない。また、宅地建物取引業法の抜本的改正を求める運動など、土地差別にかかわる課題は山積している。
  事件のさらなる真相究明と再発防止への法改正などを求め、差別糾弾闘争のとりくみを強化しよう。

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