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部落問題資料室
NEWS & 主張

 

2012年を勝利の年にしよう

「解放新聞」(2012.01.16-2552)

 新たな年、2012年がはじまった。皆さんとともに、希望に満ちた年、新たな展望を切り拓く年としたいと思う。しかし、いまだにこの社会をおおい、ただよう閉塞感ははれない。
  社会や文化、伝統、農林漁業、自然、経済などを守り、育むために各国がとる独自の政策や規制にたいして、そうした政策の転換や規制緩和が、アメリカを中心とした勢力によって求められ、強要されている。そのことが世界的な思考の規準、グローバルスタンダードとされるのである。しかし、実際には、国際的な金融資本が新たな市場開放を好機に、蓄積されてきた国民の富を、社会・経済など、あらゆる領域で食い荒らしつくすのだ。じつに、日本のTPPへの加盟は、この現実を促進することになる。
  富を搾取、収奪された各国、とりわけ欧州では、金融危機が叫ばれ、国民の生活水準がどんどん切り下げられていく。日本でも、ほんの一握りの富裕層と圧倒的多数の貧困層が増大し、その格差はますます深刻な社会問題となっている。国民は、こうした結果をもたらす政治家、政治に不信感をつのらせる。そうしたなかで、「維新」や「改革」を叫ぶポピュリスト(大衆迎合主義)の景気のいい話にのせられ、そうした連中が勢力を伸ばし続けているのが、いまの現状だ。
  ポピュリストが煽るのは、たとえば、身近にいる公務員が「優遇されすぎている」というねたみであり、「外国人労働者がわれわれの仕事を奪っている」という排外主義や差別である。あるいは、社会的弱者に落とし込まれた人びとに偏狭なナショナリズムを注入し、優越感をもたせたり、差別・排外主義を実行させることだ。ポピュリズムからファシズムへの途は通じているのだ。
  こうした、社会の土壌そのものを、私たちの力と運動で変革していく必要がある。

 今年は、部落解放―人間解放を高高と謳いあげ、全国の部落を組織し、運動を重ねていった全国水平社が結成されて90年をむかえる。全国水平社が一貫して追求したのは、人間の尊厳であり、「人類最高の完成を期す」ことであった。それはいまある市民社会への融合ではなく、差別-被差別の関係をのりこえた、人と人、人と自然、人と社会などの関係を変革した社会だった。
  こうした方向性を受け継ぎ、部落解放運動は、つねに日本社会の最深部から、民主主義の実現を求め、不条理な社会を変革し、闘い続けるものだった。私たちは、差別されるものの問の連帯や団結から、差別そのものに反対する人びととの共同した闘いへと大きく運動を発展させてきた。
  先人の汗と涙と血にまみれた苦闘の軌跡を忘れず、現在の成果と限界を明らかにしながら、90年を契機に、新たなとりくみを続けよう。また、その原点ともいうべき、全国水平社結成時の「宣言」の歴史的意義を理解しながら、これまでフランス人権宣言など245件が登録されている「世界記憶遺産」にしていくとりくみも、あわせてすすめよう。

 今年の通常国会では、「人権侵害救済法」が成案を得て、閣法として上程される予定である。成立のためには、まず3月の閣議決定が山場になる。各地の実行委員会とも連携を保ちながら、国会議員などへの要請行動にとりくもう。差別や抑圧、排外、人間として生きることができないという人権侵害に苦しむ人びとに光をあて、解決のための希望とその現実を分かち合える法案にし、実現へ努力をつくそう。
  狭山第3次再審では、弁護団の地道なとりくみ、市民の会や住民の会などを中心とした証拠開示の署名運動の成果として、12月に東京高検は14点の証拠を開示せざるを得なくなった。証拠開示から再審開始決定へという波は、多くの再審事件をおおい、大きな潮流となってきている。今年こそ、この潮流をさらに大きくし、世論で東京高裁・高検を包囲し、弁護団が求める、事件の核心に迫った部分での証拠開示、そこからの事実調べ、そして再審開始決定をかちとろう。
  差別され抑圧された国内外の人びととネットワークを築きながら、力を合わせ、心通う多くの人びととともに、人権確立社会の実現をめざし、今年も奮闘していこう。


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