pagetop
部落問題資料室
NEWS & 主張
石川さんの新春メッセージ
狭山裁判は台風の目の中に
どっぷりと居座っている感が

再審開始の年へ

「解放新聞」(2012.01.23-2553)

 謹んで新春のお喜び申し上げます。
  全国の狭山支援運動に於いて、昨年も多くの御協力を賜り誠にありがとうございました。昨年を振り返ると3月の東日本大震災、東電の原発事故など大きな災害があり、今私はそれらの出来事を思い返しながら年頭に当たり、私の決意・抱負と、支援者各位に今年こそ勝負の年になる気配から一層のご尽力を切望したい気持ちでペンを執った次第です。
  私自身は昨年中に「えん罪を晴らすんだ」との強い考えで、少なくとも「事実調べ」「再審開始」が実現できるのではとの予測の下で全国各地に「真相」と私が置かれている立場のご理解を求めて「支援」のお願いに精力的に取り組んで参りました。中でも昨年は特に多忙を極め、「教育関係」「宗教関係」の学習会は取り分け多く持って頂けた様に思いました。其れだけになんとしても皆さん方の応援を無に帰すまいと訴えにも熱が入り、切磋琢磨に明け暮れた1年間でしたが、私の力及ばず、「勝利の目処」も立てられない儘、新しい年に突入して終い、全国の支援者に大変申し訳なく思っています。
  しかし、2009年12月の門野裁判長の証拠開示勧告から数十点の証拠開示がされた上、昨年5月就任の小川裁判長も証拠開示に積極的な姿勢であり、確定判決で有罪の大きな根拠となった「秘密の暴露」といわれている物証の「カバン、腕時計、万年筆」の捜査資料や、供述調書などの提出を検察に対し促したところ、昨年12月の9回目の三者協議に於いて14点の証拠開示がありました。これらは弁護団の努力や、支援者の皆さんのこれまでのさまざまな闘いの成果であり、狭山の闘いはゆっくりではあるけれど、確実に前進しています。
  然しながら、一万に於いて検察側は「殺害現場」とされた雑木林での「ルミノール反応」検査報告書や、同所で撮影された筈の「8ミリフィルム」、死体の「写真」やスコップの指紋検査報告書など、相変わらず「不見当」の回答で逃げ切ろうとしております。「公益の代表者」としてこれらのことは許されるべきでなく、弾劾されなければなりません。
  支援者皆さん方もご承知の様に、弁護団は第一次再審請求審以来、今日まで検察官手持ちの証拠の全面開示を求め、交渉を積み重ねて参りましたが、2009年の門野裁判長の証拠開示勧告に因って、やっと現在の流れに引き継がれてはいるものの、検察の姿勢は不十分であり、不正義です。刑事裁判の再審に於いては「新しい証拠」の発見が前提条件になっているのに、検察官が膨大な資料等、警察・検察の強権的、強制的な捜査で収集した物証を手元に置き、且つ自分たちの不都合、不利益と思われる証拠は隠して出さない訳で、これでは弁護団はとても太刀打ち出来ないのが現実であります。検察官の姿勢を例えていえば、涸れた井戸を大衆の力で掘って、水が出た途端、検察官だけが独占してしまうようなものです。
  それでも弁護団は地道に努力を重ね、運動の力とあわせ裁判官を動かせたので、この流れを変えたり、止めたりしないように今後とも更に皆さん方のお力添えを心から願うばかりです。
  今狭山裁判は台風の目の中にどっぷりと居座っている感がありますが、恐らく狭山再審が動けば、他のえん罪事件への波及効果のみならず、取調べの可視化、証拠開示の法制化等の必要性も強く求められるでありましょう。「急がば回れ」の格言もあり、大地に根を張っては困るけれど、着実に確実に一歩一歩足を進めていることは確かですが、然しながら、半世紀に近い足取りでは、あまりにも遅すぎないかと自問自答します。
  昨年は東京高等裁判所前で何十回もマイク情宣を行い、その都度支援者に多くのサポートを頂き、マイクを通して「……刑事裁判の鉄則を踏まえた再審開始を求めます」の声に歩道を歩く人々が足を止めて聞き入り、また「公平・公正」な裁判を求める署名用紙に積極的に応じ、或はビラを読んでから署名してくださったりと、様々な人の善意、正義感に直接触れ、感謝感激で目頭が熱くなるのを禁じえないことも再三でした。
  この様に多くの人たちが関心を寄せて下さる一方、現在も憲法の精神を無視し、自白を強要したり、証拠の隠蔽、捏造をし、犯人に仕立て上げる事件が相次いでいることは最近の報道でも明らかで、現在に至っても、えん罪事件が後を絶たない根本は、人権蹂躙の犯罪行為を擁護する検察庁、法務省の体質にあります。警察、検察の持つ捜査権力は絶大であり、検察が見繕った証拠に因って裁判官は真実を見誤り、誤判、えん罪が生まれます。真実を明らかにし、警察、検察の犯罪行為を明らかにするためには「法廷」の場以外にはないので、なんとしても狭山事件の法廷を開かせるべく私自身精一杯努力をして参る決意です。
  昨年5月、布川事件が「再審無罪判決」を勝ち取りました。今年は狭山事件が大きく前進し、再審開始の年になりますよう、どうか皆さん方も検察に対し、真実発見の見地、ならびに公益という観点から積極的に証拠の開示を求めると共に、裁判所には大局的、総合的な判断をすれば最早一刻も早く「再審開始決定」を出すべきだと強く求めて下さるよう心からお願い申し上げます。
  長文化しましたが、私の今年に懸ける意気込みと支援者皆さん方のさらなるご協力を切望して年頭のご挨拶といたします。
  2012年1月1日
         

石川一雄


吾痛み共有されしは支援者の 叱咤激励元気に越年

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)