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狭山事件の証拠開示と事実調べの実現へ運動の輪を広げよう

「解放新聞」(2012.05.14-2568)

 4月23日に東京高裁で狭山事件第3次再審請求の第10回3者協議がひらかれた。死体を埋めるために使われたとして有罪証拠の一つになっているスコップの捜査に関する書類や筆跡資料など19点が開示された。検察官がスコップの指紋検査報告書を「不見当」としたことを受けて、弁護団がスコップの捜査にかかわる証拠の開示を求めていたものだ。弁護団が求めた証拠が一部開示されたことは重要だが、一方で、検察官は、万年筆の隠し場所の自白図面の開示や番号の抜けている証拠の特定などについては回答していない。
  これまで90点近い証拠が開示されたが、重要な証拠がまだ開示されていないことを忘れてはならない。弁護団は、4月19日付けで、3物証、「犯行現場」「出会い地点」や目撃証言、手拭いなどについての証拠開示を求める開示勧告申立書を提出した。
  3者協議に先立つ4月20日、証拠開示の法制化を求める院内集会がひらかれ、えん罪当事者や再審弁護団、刑事訴訟法学者から、弁護側への証拠開示を保障する法律の制定が訴えられた。提出された取り調べ可視化と公正な証拠開示の法制化を求める署名は74万1379筆にも達している。この市民の大きな声を力に、足利事件、布川事件の教訓を訴え、狭山事件の証拠開示と事実調べを実現するために、さらに運動の輪を広げ、世論を大きくしていこう。

 弁護団は、開示された筆跡資料の番号が飛び飛びになっていることを指摘し、番号が抜けている多数の証拠に筆跡資料が存在するのか、内容を特定するよう求めていた。検察官は、筆跡の資料1点を開示したが、そのほかの証拠は開示せず、内容も明らかにしていない。筆跡に関する証拠がほかに存在することは明らかだ。
  2010年に47年ぶりに証拠開示された逮捕当日の石川一雄さんの上申書は、当時の石川さんの筆跡、国語能力が脅迫状とまったく異なることを示す重要な新証拠である。脅迫状は狭山事件で犯人の残した唯一の物証である。その脅迫状には筆跡の違い、指紋の不存在、筆記具の食い違いなど多くの疑問が指摘されている。今回の3者協議で、未開示の筆跡資料の存在が浮かびあがったのだ。東京高裁は、最大の物証である脅迫状にかかわる筆跡資料をすべて開示するよう検察官に勧告し、逮捕当日の上申書や筆跡鑑定とあわせて事実調べをおこなうべきである。「隠された筆跡資料を開示し、事実調べをおこなえ」の声を大きくしていこう。

 弁護団は、「殺害現場」とされる雑木林の隣にいて「悲鳴・人影はなかった」と証言している0さんの証人尋問の早期実施を求める要請書を4月19日付けで提出した。裁判所による「犯行現場」の血痕検査報告書の開示勧告にたいして、検察官は、報告書を「不見当」であり、犯行現場のルミノール反応検査はおこなわれなかった可能性があると回答している。また、殺害現場を裏付ける捜査書類も「不見当」と回答した。殺害現場の自白を裏付ける証拠はまったく出されていないのである。この間の3者協議のなかで「犯行現場」の疑問はますます深まった。弁護団は、こうした3者協議の経過をふまえて、0さんの証人尋問を強く求めているのである。
  自白が真実かどうかが中心の争点である狭山事件の再審で、自白の核心である「犯行現場」の客観的裏付けがまったくないということがそもそも重大な問題である。0さんの証人尋問をはじめ「犯行現場」にかかわる証拠開示・事実調べは不可欠である。

 検察官は、3月30日付けで筆跡についての警察庁科学警察研究所技官による意見書、殺害方法などについての法医学者の鑑定書2通を提出した。これらは、弁護団が提出した筆跡鑑定、法医学鑑定を批判、対抗するものである。弁護団は、これら検察官提出の鑑定意見書にたいする反論の鑑定書、補充書を今後、提出するための作業をすすめている。また、開示された証拠の取り調べテープなどを精査し、新証拠として提出することにしている。双方から鑑定が出されているのであるから事実調べは不可欠である。
  次回の3者協議は10月におこなわれる。弁護団の反論の鑑定書や補充書の提出を受けて、鑑定人尋問や0さんの証人尋問などの事実調べを求める声を大きくしていくことが重要である。石川さん不当逮捕から49年を迎える5.23を中心に、新しく作成されたDVD「石川一雄さんは無実だ」を活用し、開示された上申書をふくめた筆跡や0さん証言、自白の疑問について学習・教宣活動を強め、高裁、高検にたいする要請ハガキにとりくもう。


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