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部落問題資料室
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主張

 

人権・同和教育の実践の輪を広げ創造的発展を

「解放新聞」(2012.11.12-2593)

 今年になって、大津市の中学校でイジメの被害者が自死した事件を皮切りに、各地の学校で発生したイジメに関して、あふれるばかりの報道がおこなわれている。マスコミ報道には、事件の責任者への追及に終始し、教育的視点から今日の学校や子どもたちが抱える問題を明らかにし、解決していこうとする姿勢がまったく欠如している。
  また、バッシングにさらされた教育現場も防衛的になり、イジメの早期発見や事後相談など対策的なとりくみに追われるようになっている。もちろん個個の事件が起きた原因や背景を調査・分析し、再発防止に努めることは重要であるが、それだけではイジメや不登校など問題行動といわれる子どもたちの抱える課題の根本的な解決にはいたらないだろう。

 部落の子どもたちの長期欠席や不就学問題の解決をめざすとりくみからはじまった同和教育の営みは、「差別の現実に深く学ぶ」ことを原則として、いま目の前にいる子どもたちが抱えるさまざまな困難にたいして、日頃から家庭・地域・学校が連携したとりくみをすすめ問題の解決を図ってきた。イジメや虐待など、子どもたちを取り巻く状況が厳しさを増している今日、長年にわたる同和教育のなかで培われてきた成果や教訓を継承しながら、人権を基盤とした学校運営と教育内容を創造し、人権教育として全国的に普及していくことが求められている。
  前出した大津市の中学校は道徳教育の指定校であり、それを反映した学校運営と教育目標が設定されていた。しかしながらである。目標が額縁に収まり、スケジュール消化に追われるようであれば、百害あって一利なしだ。
  いまの学校教育に求められているのは、子どもたちが教員を信頼し、安心して学ぶことができる教室であり、子どもたちが生活し、成長していくうえで、ともに支えあう仲間づくりだ。隣の席に座るのは、テストの点数や進学先など、たんに学力の優劣を競い合う競争相手ではなく、切磋琢磨する仲間でなければならない。いま一度、日日の実践を大切にする同和教育の原点に立ち戻ろうではないか。

 こうしたなか、第64回全国人権・同和教育研究大会が、12月1、2日、岡山県倉敷市・マスカットスタジアムを主会場にひらかれる。来年は、同和教育の柱の一つである進路保障のとりくみのなかから生まれた、全国高等学校統一応募用紙が採用されて40年を迎える。
  おりしも、文部科学省が、全国的に人権教育の定着を図ろうと、この間の調査研究で集約した「特色ある人権教育実践事例」をホームページで発信するなど、新たな試みもはじまっている。
  各地の人権・同和教育の豊かな実践と成果を岡山の地にもちより、全国に向けて力強く発信し、人権・同和教育の実践の輪を広げていこう。


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