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差別主義集団によるヘイト・クライム、ヘイト・スピーチを許さず差別撤廃へ取り組みを続けよう

「解放新聞」(2013.09.23-2636)

 安倍政権のもとで、憲法改悪をはじめ、いよいよ反人権主義、国権主義的な政治が強行されようとしている。とくに麻生副総理兼財務大臣の、憲法はナチスの手口を学んで変えてしまえ、とした発言でも明らかなように、すでになりふり構わないやり方で、憲法改悪策動を強めようとしている。
 さらに、福島第1原発の放射能汚水漏れ問題でも、安倍首相は、7日の五輪招致演説で「状況はコントロールされている」「完全にブロックされている」と発言したが、その後も汚染水の海洋流出は続いており、東京電力の担当者である技術顧問さえ「いまの状能はコントロールできていないと考える」としており、ウソ八百の演説内容であったことが明らかになっている。
  また、安倍首相は「侵略の定義はない」などと発言、日本の侵略戦争を認め、反省を明確にした「村山談話」の見直しに言及し、橋下徹・大阪市長と同様に、「慰安婦」問題で強制連行を否定するなど、虚言、暴言をくり返している。
  しかも、日本政府は拷問禁止条約にもとづいて設置された委員会からの勧告に「従う必要はない」との閣議決定を公表した。国際的な批判はもちろん、加盟している人権関係諸条約の勧告さえ無視するというのがいまのわが国の姿勢なのだ。

 こうした反人権、人命無視の言動が公然とくり返されるなかで、ヘイト・クライム、ヘイト・スピーチが大きな社会問題となっている。在日特権を許さない市民の会(在特会)は、これまでも京都朝鮮学校襲撃事件、徳島県教組乱入事件、そして水平社博物館前差別街宣事件など、社会的マイノリティや平和と民主主義を守るために活動してきた個人や団体に、差別と暴力を浴びせかけてきた。
  最近では、東京の新大久保や大阪の鶴橋など、在日朝鮮・韓国人が多数居住する地域におしかけ、「朝鮮人を殺せ」「たたき出せ」などとの暴言をくり返しながらデモをおこなうなど差別・排外言動をエスカレートさせている。
  まさに、安倍政権のもとで増長した反人権主義、差別主義集団の暴挙であり、絶対に許すことはできない。
  安倍政権のもとでくり返される差別言動、人権侵害に断固として反撃をすすめよう。差別を社会悪、犯罪と認めず、どんな差別も暴言も表現の自由だと主張する、こうした差別主義集団の蛮行を許しているのは、政府の責任であり、政治の怠慢である。

 水平社博物館前差別街宣事件では、差別街宣をおこなった行為者にたいして、2012年6月、奈良地裁は差別は社会悪であり、差別街宣は名誉毀損にあたるとして慰謝料150万円の支払いを命ずる判決を出した。
  しかし、この裁判の大きな意義は、差別街宣を名誉毀損ということでしか問えない現行の法体系をするどく問いただすものでもあったことだ。この国には、差別を禁止する法律がないばかりか、人権侵害被害救済の制度もない。
  そのうえ、安倍政権のもとで、政治家が差別言動をくり返し、謝罪もせずに、差別主義集団にエールを送り続けているのが現状だ。さらに拉致担当大臣は13日、拉致問題の啓発活動について、都道府県別の実施状況を集約し「通信簿」として公表した。もちろん拉致問題は許されない犯罪であるが、いま、こうしたことが、悪質化する在日朝鮮・韓国人へのヘイト・クライム、ヘイト・スピーチを煽動することにつながるという政治的判断もできないのが、いまの安倍政権の人権感覚の実情である。まさに差別を放置しているに等しい情況だ。
  一方で、生活保護費をはじめとした社会保障費の削減や、さらに非正規労働者を増大させる労働法制の改悪など、社会的閉塞感がますます強まるなかで、社会的マイノリティにたいする暴力的な差別言動が激増している。とくに、インターネットを通じて、事前に周到な準備をし、排外主義を煽り、組織的な行動をよびかけているのが最近の特徴だ。
  われわれは、こうした差別主義集団によるヘイト・クライム、ヘイト・スピーチを許さず、差別が社会悪であり、犯罪であることを広く社会に訴え、差別撤廃に向けた広範なとりくみをすすめよう。


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