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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド

2014年度(第71期)一般運動方針

第Ⅰ部 基調方針
一 部落解放運動をめぐる情勢の特徴

3 人権と環境をめぐる情勢
 ①世界経済フォーラムが昨年、政治や経済、健康、教育の4分野で男女の格差を調べたところ、日本は調査対象となった136か国中、105位で前年より順位を4つ落としました。内閣府が実施した男女共同参画の調査でも「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という意見について、賛成が約52%、反対が約45%となっています。しかも、これまでの傾向として、調査開始以来減り続けていた賛成の割合が初めて増加し、逆に反対の割合が減少するという、これまでの傾向が逆転しました。
  ②2012年度の配偶者からの「配偶者暴力支援センター」への相談は、女性からが圧倒的で8万2099件となっています。また、交際相手からのものも3484件あります。12年度の警察への配偶者間暴力の相談件数も4万3950件あります。
児童虐待では、12年度の全国の児童相談所には6万6807件の相談があり、年年増加する傾向を示しています。
  ③昨年5月、橋下徹・大阪市長が「あれだけ銃弾が飛び交うなか、精神的に高ぶっている猛者集団に休息を与えようとすると、慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」などと、戦争を肯定し、女性の人権を無視し「性の道具」としてあつかう発言をくり返しました。その後も、「男性にとって性欲はコントロールできない」などと男性をも侮蔑する発言をおこないました。
  一連の発言の根底には、「日本軍性奴隷制」(従軍慰安婦制)と、さきの大戦にたいする歴史認識の問題があり、橋下市長が共同代表となっている日本維新の会の国権主義、反人権主義が露呈したものです。
  安倍首相は、麻生副首相の靖国参拝をめぐって韓国から起きた批判にたいし、「侵略の定義は国際的にも定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」などと「河野談話」や「村山談話」の見直しを語っていたにもかかわらず、橋下発言への批判の高まりのなかで、同じ歴史認識を有する橋下市長を擁護せず、沈黙をとおしました。
  ④出生前診断が血液検査でおこなわれてきましたが、10月には血液と超音波検査を組み合わせた新たな診断がはじまりました。これまでのものにくらべ費用は8分の1で、年齢制限ももうけられていません。
  また、米中の大学が受精前の卵子を壊さずに「数千種類の染色体や遺伝子の異常を判別」するという方法を開発し、臨床研究をおこなうとしています。
  いずれも命の選別などにつながるものです。障害者インターナショナル女性障害者ネットは、「人は、偶然にさまざまな特性をもって生まれます。心身の機能が他の人と違うこともそのひとつです。それが「障害」になるかどうかは、社会の側の問題であるという認識が定着しつつあります」「障害への偏見がとりのぞかれるとともに、障害があってもなくても、育てようとする人を支援する社会制度が充実してほしいと思います」という意見を示しています。
  ⑤昨年6月に成立し、16年から施行されるのが「障害者差別解消法」です。法の中核は「障害者自身が自分のことは自分で決めるということ」です。「障害者差別解消法」では、障害を理由に雇用の拒否、公共交通機関の利用の拒否などの「差別的取り扱いの禁止」と、障害をもつ当事者からの社会的障壁の除去の意思表示があったとき、その実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないとする「合理的配慮の不提供」を障害者差別としています。ただし、「合理的配慮の不提供」への対応は、国や自治体にとってであり、民間業者にとっては努力義務となっています。
  差別を解消するためには、よりこまやかな条例の制定が必要であり、とくに「地域協議会」の設置など、今後の人権救済機関創設につながるものでもあり、政府、自治体の動向に注目していくことが重要です。
  ⑥ハンセン病の隔離政策などにたいして、01年に国家賠償訴訟が熊本地裁で全面勝訴しました。08年には「ハンセン病問題基本法」が制定され、一見解決したかにみえましたが、「まったく解決していない。人権や人間としての尊厳は横に置かれ、苦しんでいる人がたくさんいる」と全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)の神美知宏・会長は訴えています。「市民の皆さんにしっかり認識してもらうことが解決の糸口になる」とよびかけています。現在の入所者は約2千人、平均年齢は83歳、年間150人近くが亡くなっています。「行革で療養所の職員は減少。病気は治癒しているが、高齢や後遺症などのために自力で食事を取れなくなった入居者の介助が十分できず、誤嚥(ごえん)性肺炎でなくなる人も少なくない」と語っています。そして、「ハンセン病問題は人ごとでない、という人が増えることが、国を動かすことにつながる」とあらためて訴えています。
  また、1950年代に熊本県で起きた殺人事件で、ハンセン病患者であるがゆえに差別視され、犯人とされ、死刑を執行された「菊池事件」で、遺族は根深い差別のために声をあげられないなかで「検察みずからが再審請求を」との声が高まっています。
  ⑦文科省の調査により、全国の9大学に1635体のアイヌの遺骨が保存されていることが分かりました。これらは、研究目的での盗掘も含め北海道内外の墓地から集められたものです。個人が特定できるのはわずか23体で、ほとんどが個人を特定で
きないという、あまりにもずさんな管理に驚きの声が出ており、アイヌ政策推進会議(官房長官を座長にアイヌ民族代表、有識者で構成)で遺骨問題の対応が検討されています。
  また、強行建設された二風谷ダムが土砂堆積しているにもかかわらず、安倍政権により新たなダム(20㌔上流に建設、平取ダム)が計画されています。この場所は、アイヌの聖地でもあり、水没の危機に陥っています。治水効果のためには、荒れた山林を再生させることが重要とアイヌの人びとは訴えています。
  ハンセン病患者の骨格標本の作製も、旧熊本医科大学(現熊本大学医学部)で明らかになっており、これも「劣っている特徴を探し、隔離の正当性を主張したかった」のだと指摘されています。いずれの作成者も、京都大学医学部のアイヌ民族の遺骨から骨格標本を作製した教授に連なる医学倫理無視につながる人脈であることが明らかになっています。
  ⑧元死刑囚で再審無罪をかちとった免田栄さん、赤堀政夫さんに国民年金を特例で支給する法案が議員立法で成立しました。これは、免田さんから相談を受けた当時参議院議員であった松岡書記長などの働きかけで成立したものです。
  ⑨最高裁判決にもとづき、婚外子の相続差別撤廃へ民法の改正案が成立しました。
しかし、出生届に嫡出子と婚外子記載の義務付けを削除する戸籍法改正は、自民党、日本維新の会の反対で実現ぜず、課題を残しています。

4 部落のおかれている状況と差別の実態
 ①新自由主義と投機経済にもとづく経済危機は、世界的な規模で進行しています。こうしたなかで、若者層の非正規労働者化がすすんでいます。非正規労働者は現在、2000万人を突破し38・2%となり、85年に比べると2倍になっています。15歳から34歳までの非正規労働者は50%をこえています。正規労働者の率が高かった製造業は生産拠点を労働力が安い海外に移し、雇用が減り、正規労働者であった人が転職で非正規となる傾向も強まっています。
  年収が200万円以下のワーキングプアとよばれる人びとも1000万人を突破しています。若者層では、ブラック企業と分かりながらも正規労働者として就職したいという願望をかなえるために仕事に就き、心身がボロボロになり使い捨てにされるという実態もあります。
  2012年のユニセフ調査では、2047万人の子どものうち、305万人のこどもが貧困家庭で育っています。これは先進国では9番目の高さです。親の貧困が子どもの貧困に結びつき、より深刻な状況であるにもかかわらず、実効ある対応策が取られていません。そのため生育環境の不利によって教育の機会の制限が加えられ、たとえば生活保護世帯の子どもたちの高校進学率は10%も低いという現実があります。学歴が低いと、不安定就労-非正規労働にしかつけず、「教育と労働の悪循環」「貧困の再生産-連鎖」の傾向が強まっています。
  ②こうした社会構造は、部落の若い世代の教育・労働実態などにも深刻な打撃をもたらしています。2006~10年に実施された愛知・埼玉・大阪・兵庫・奈良・京都の部落女性調査結果(約1万2000人)では、20~30歳代の若者層でも、最終学歴で高校中退者を含む中学校卒業割合が約10%強と府県平均より2倍高く、非正規雇用が約6~7割と府県平均より1.5~2倍高い実態が存在します。
  2010年に中央本部が実施した部落青年に関する雇用・生活調査(約820人回答、福岡・高知・香川・大阪で過半数)では、さらに深刻な結果が出ています。また「差別を受けることへの不安」が約2分の1、「部落出身という意識がある」が約4分の3、結婚平均年齢が約24歳(全国平均29歳)という結果も出ています。さらに部落のなかで比重が高い建設業関係者も倒産・廃業の波を大きく受け、若者層の雇用不安定を招いています。
  ③経済危機と社会の不安定化のなか、社会・経済・政治的な仕組みに問題があるにもかかわらず、その原因を覆い隠すための「自己責任論」が依然として根強くあります。その結果、一方では何らかの挫折にともなう自己存在への否定感と孤立感が強まっています。そして解決しない不安や不満の解消の矛先は、偏狭なナショナリズムとも結びつき、部落をはじめとするさまざまなマイノリティにたいするインターネット上での差別・誹謗中傷・排外主義の横行、ヘイトスピーチや大量差別投書、落書事件として顕在化しています。また、相対的に安定した正社員を基本とする労働組合、とりわけ官公庁の公務員労働者や労働組合、あるいは部落解放運動や同和行政へのバッシングなどに意図的に仕向けられています。さらに基本的人権の尊重を顧みない、家族・地域・民族・国家や社会規範・道徳性が声高に強調されています。
  ④「人権教育・啓発推進法」(2000年)制定以降のとりくみにもかかわらず、意識状況にはさまざまな問題があります。「人権擁護に関する世論調査」でも、「基本的人権は侵すことのできない永久の権利として、憲法で保障されていることを知っていますか」にたいして、2割近い人が「知らない」と回答しています。さらに近年の各府県人権意識調査では、府県によって数値のばらつきはありますが、部落出身者との結婚忌避(2007年愛知県、2008年奈良県・宮崎県・兵庫県、2010年大阪府)や部落が存在する校区に住むことへの忌避(2011年大阪府)が4割以上あります。そして大阪府や京都市(2011年)の意識調査結果では、部落問題認識が10年前と比較して後退していることが明らかとなっています。
  ⑤これまでみてきたような、貧困化、孤立、社会的排除などのかたちを取り、現代社会の矛盾が被差別・底辺層にしわ寄せされています。こうしたなかで部落差別事件も増えてきています。
  一昨年から「土地差別調査事件」にとりくんできましたが、昨年は同様な問題が「Y住宅販売会社差別事件」としてあらわれました。これは、中古物件を改装するなどして再販売するY社が競売物件の仕入れ表の特記事項のなかに「同和地区」などと差別記載していた問題です。同社の支店を調査したところ、13府県のチェック表に同様の記載が26件もあることが明らかになっています。なかには「特殊地区」「D地区のど真ん中。地域性注意」「同和内ど真ん中。安く買う」という記述もありました。
  同社が、なぜ、どのようにしてこうした仕入れ表を作成したのか、第1回目の確認会でも事実関係を隠そうとしたこと、情報は本社に集中しているにもかかわらず、なぜ誰もチェックできなかったのか、調査後に「全社的にみれば発覚した件数は少ない。報告したこと自体が社の誠意であり、会社ぐるみでない」などと反省なく居直れるのか、など多くの疑問点を明らかにすることが重要です。この事件でも、部落にたいする忌避意識が背景にあることは明らかであり、大阪での土地差別調査を規制する条例を参考にしながら、国交省による積極的な行政指導とともに、業界団体にも規制に向けた自主的なとりくみを求めていくことが必要です。
  ⑥橋下大阪市長の行為を批判するために、「DNA」や「血脈」を持ち出し出自を暴き、しかも橋下市長の個人の人格が部落出身ということにあるとする、『週刊朝日』差別記事事件にたいして昨年、3回の確認会と2回の糾弾学習会をもちました。このなかで、記事を書いた佐野眞一さんと編集担当者の部落問題認識の欠如や無自覚さ、記事を校閲する人びとの認識不足などが明らかになりました。また、出自を先行掲載した月刊誌、週刊誌に部数面でも負けじと「よりインパクトの強いもの」ということで攻撃的、侮蔑的なものになったことも明らかになりました。取材の問題点として、差別につながる身元調査まがいのことがおこなわれていることなどを指摘しました。
  朝日新聞出版は、この事件は全社的な問題であり、真摯な反省をおこない、問題点を克服し、出版界全体にとりくみを広める推進役になることなどを表明しました。佐野さんも同様の姿勢を示しました。また、社として当該の兵庫、大阪の支部に謝罪に出向きました。
  今回の事件では、マスメディア界の人権意識や感覚の劣化が明らかになりました。事件は、利益追求といきすぎた市場原理の考え方が招いたものです。さらに、マスメディア界に差別と表現、人権の問題を広げていくことが問われています。
  ⑦2011年に発覚した「戸籍謄本等個人情報不正取得事件」は、プライム事件からその後も広がりをみせ、戸籍、住民票だけでなく、職歴、車両情報、携帯情報などが売買されていることも明らかになりました。また、一昨年、神奈川県で起きた「逗子ストーカー殺人事件」でも、この一連の事件に関係した探偵業者が、被害者女性の住所を不正に入手し、加害者男性に伝えていたことが明らかになっています。
  昨年6月に逮捕された関係者26人の最後の判決が出されましたが、プライム社社長と横浜の探偵社社長に実刑判決が、4人に罰金刑が、残りの20人は執行猶予となっています。東京の行政書士会が偽造を指摘されながら見抜けず被害を拡大させたこともあり、8士業などへ再発防止の働きかけも強めています。今後も、事件の全容解明、「本人通知制度」導入に向けた取り組みの強化と、導入を批判する一部弁護士の認識を改めさせることが求められています。
  ⑧NHK製作の「鶴瓶の家族に乾杯」(2012年)のなかで、ある俳優のルーツ探しに浄土真宗本願寺派の寺院の「過去帳」が開示されました。本願寺派とは、開示問題、基幹運動の継承などで意見交換もおこないました。NHKにたいしても課題の共有化と各地で部落問題に学びながら積極的な取材体制の確立を求めました。
  こうしたなか、昨年は各地で「過去帳」開示問題が起こりました。浄土宗、浄土宗禅林寺派、天台真盛宗、真宗佛光寺派などの寺院で過去帳をもとにした資料が提供され、新聞社が過去帳の写真を掲載し報道しました。それぞれ当該の都府県連や本部段階で話し合いをすすめて、問題点を解明していく必要があります。
  ⑨インターネット上の差別事件が悪質化しています。インターネット上の掲示板への被差別部落の地名や所在地などの情報の書き込み、全国の部落の地名を集めてインターネット上に画像ファイルを公開した、いわゆるインターネット版部落地名総鑑、動画投稿サイトへの大阪府や兵庫県、和歌山県をはじめ各地の被差別部落のようすを撮影した動画の掲載など、誰もが見られる状態に放置されており、人権救済制度の確立を含め早急な対策が求められています。
  ⑩その他、経済不況のもとで、雇用差別につながる公正採用選考での違反事例が急増しています。また、福岡市内大量差別落書事件をはじめ差別落書・投書・電話・電子メール事件や同和地区かどうかを問い合わせる差別事件も各地で多発しています。

二 部落解放運動の基本課題
1 本大会の意義と任務
(1)深刻化する格差・貧困問題のなかですすむ社会的排除を許さず、差別撤廃の闘いと社会連帯のとりくみを前進させよう
 ①格差・貧困の問題や雇用不安は、世界的にもますます深刻化しています。アメリカでは財政状況の悪化と景気低迷が続き、EU圏でも経済不況にともなう政治不安や失業問題などが顕在化しています。中国、ロシア、韓国でも、いずれも国内の格差問題や雇用不安が大きな課題となっています。このように世界的な経済不況が続き、長期停滞傾向に歯止めがきかない今日、不安定な国際情勢のもとで、世界各地で宗教対立や民族対立をはじめ、国際紛争が続発しています。
  ②2008年のリーマン・ショック以来の今日的な世界経済の危機は、新自由主義路線のもとですすめられてきたさまざまな政策に起因しています。世界的に拡大する格差問題や深刻化する貧困問題と雇用不安を背景として、差別排外主義が台頭し、社会的弱者やマイノリティにたいする社会的排除が恒常化しており、私たちがすすめてきたいのちと生活を守る闘い、社会連帯をすすめる協働のとりくみがますます重要になっています。
  ③2012年12月16日の衆議院総選挙では、民主党の大敗によって自民党が政権に復帰し、安倍第2次内閣が発足しました。また、昨年7月の参議院選挙でも、民主党が大きく議席を減らし、参議院での「ねじれ」が解消され、巨大与党のもとで、「特定秘密保護法」の強行採決による成立をはじめ、労働法制の改悪、生活保護費の削減などの生活福祉政策の後退と、沖縄へのオスプレイの配備や原発再稼働の推進など、国権主義、反人権主義の政治がおしすすめられています。さらに昨年末には、靖国神社への公式参拝を強行し、中国や韓国の反発ばかりでなく、米国から「失望した」との声明が出されるなど、安倍政権は、国際的にも孤立したなかで、「戦後体制からの脱却」をめざす「積極的平和主義」を推進するとして「戦争のできる国」づくりに向けて軍備増強の方向を打ち出しています。
  ④さらに、安倍政権の「経済成長戦略」のもとで、円安進行による生活用品や電気料金などの値上げがすすみ、市民生活に大きな打撃を与えています。さらに、東日本大震災の復興支援でも公共事業を中心に据えるなど、避難を余儀なくされている多くの被災地の人びとや「もっとも困難をかかえた人たち」への視座が失われた施策がすすめられています。また、放射能汚染水の垂れ流しなど、福島第1原発の事故処理もすすんでおらず、「完全にコントロール下にある」などとの虚偽の報告にたいして国際的な批判が集中しました。
  ⑤このような厳しい社会的政治的情況のなかで、部落解放運動の果たす役割はますます重要になってきています。いまこそ、いのちと生活を守る運動を具体的にすすめてきた部落解放運動の成果を共有、発展させていくことが求められています。とくに、差別-被差別の関係を克服し、「人と人の豊かなつながり」を再構築していくとりくみをすすめていかなければなりません。部落解放運動がすすめてきた「人権のまちづくり」運動こそ、こうしたとりくみの基本方向を打ち出したものです。部落内外の協働した豊かな実践を交流しながら、それぞれの地域での具体的なとりくみに結びつけていくことが必要です。

(2)人権・平和・環境を基軸に、民主主義の確立に向けた政治の実現をめざして闘いをすすめよう
 ①巨大与党のもとで暴走を続ける安倍政権になんとしても歯止めをかけなければなりません。かつての革新-保守、左翼-右翼反動ということではなく、人権・平和・環境を基軸に、民主主義を確立していく政治勢力を大きく結集していくことが重要です。私たちは、民主党政権にたいしても、「社会保障と税の一体改革」やTPP問題、消費税増税、「武器輸出禁止3原則」の緩和などの問題について反対の姿勢を明確にしてきました。また、人権の法制度の第一歩である人権侵害救済制度の確立のとりくみ、具体的には「人権委員会設置法案」の閣議決定に至るまでの不十分な対応について厳しく批判してきました。
  ②一方、安倍政権がすすめる国権主義、反人権主義と対決し、人権・平和・環境を基軸に、民主主義の確立に向けた政治勢力の結集が重要です。これまでの支持・連帯関係を大切にしながら、部落解放・人権政策確立のとりくみを前進させるために、地域での差別事件や差別実態を訴え、部落問題・人権問題解決に向けた具体的な政策提言をすすめます。
  ③今日の厳しい政治情況のもとで、こうした政治にたいする基本姿勢を堅持しながら、人権・平和・環境を基軸にした政治の実現に向けて、積極的に政治と向き合うことが求められているのです。とくに、人権の法制度確立のとりくみを強化し、「人権侵害救済法」実現に向けた闘いの再構築に全力でとりくみます。
  ④当面の政治闘争として重要なのは、2015年の統一自治体選挙です。国権主義、反人権主義と対決するために、政治闘争の意義と基本方向をしっかりと論議し、民主主義を守り、憲法改悪阻止と人権の法制度確立に向けた政治情勢を創りだしていかなければなりません。

(4)5領域からの差別実態の本格的な調査実施を
  貧困の増大、格差の拡大、社会的排除の進行など社会が大きく変化してきています。部落の側にあらわれる実態的被差別の現実、心理的被差別の現実、部落以外の側にあらわれる実態的加差別の現実、心理的加差別の現実、そして差別事件の実態という5つの領域から差別の現実をとらえる本格的な実態調査の実施にとりくむ必要があります。

二 部落解放運動の基本課題
1 本大会の意義と任務
(1)世界的に拡大する格差・貧困問題と雇用不安に抗して、社会連帯のとりくみをすすめよう
  ①格差・貧困の問題や雇用不安は、世界的にもますます深刻化しています。アメリカでは、財政状況の悪化と景気低迷、EU圏でも経済不況にともなう政治不安がすすんでおり、閉塞感が深まっています。アジアでも、中国、ロシア、韓国では、それぞれ新しい指導者が生まれましたが、いずれも国内の格差問題や雇用不安が大きな課題となっています。また、世界的な経済不況が続き、長期停滞傾向に歯止めがきかない今日、こうした不安定な国際情勢のもとで、宗教対立や民族対立をはじめ、国際紛争も続発しています。
  ②2008年のリーマン・ショックいらい、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にはじまった一連の抗議行動は世界中に拡がりました。今日的な世界経済の危機は、新自由主義路線のもとですすめられているさまざまな政策に起因しています。こうした世界的に拡大する格差問題や深刻化する貧困問題と雇用不安に抗して、いのちと生活を守る闘い、社会連帯をすすめる協働のとりくみがますます重要になっています。
  ③2012年12月16日に衆議院総選挙がおこなわれ、民主党政権への批判が集中するなかで、民主党は57議席と壊滅的な敗北となる一方、自民党が294議席と圧勝し、「戦後体制からの脱却」として、憲法改悪と軍備増強をめざす安倍第2次内閣が発足しました。核武装を容認する日本維新の会も54議席となり第3党になっています。このような改憲勢力の伸長のもとで、安倍政権は、尖閣諸島や竹島、北方領土問題でも強硬姿勢を取っています。さらに高校授業料無償化法の見直しと朝鮮高校の排除、原発の再稼働や新設、防衛費を増大する一方、「自助、自立」を強要し、生活保護費の削減を明言するなど、国権主義・反人権主義の政治をおしすすめようとしています。東日本大震災の復興支援でも公共事業を中心に据えるなど、避難を余儀なくされている多くの被災地の人びとや「もっとも困難をかかえた人たち」への視座が失われた施策がすすめられようとしています。
  ③このような厳しい政治情況のなかで、部落解放運動の果たす役割はますます重要になってきています。みずからの生活圏域内で、いのちと生活を守る運動を具体的にすすめてきた部落解放運動の成果を共有、発展させていくことが求められています。とくに、差別-被差別の関係を克服し、「人と人の豊かなつながり」を再構築していくとりくみをすすめていかなければなりません。部落解放運動がすすめてきた「人権のまちづくり」運動こそ、こうしたとりくみの基本方向を打ち出したものです。部落内外の協働した豊かな実践を交流しながら、それぞれの地域での具体的なとりくみに結びつけていくことが必要です。

(3)組織と運動の改革・強化に向けて、全国的な議論を展開しよう
 ①この間、部落解放運動を前進させるためには、何よりも組織と運動の改革・強化が重要であることを確認してきました。同盟員の減少、高齢化がすすんでいるなかで、同盟組織をどのように改革・強化していくのか、次代の運動を担う人材育成をどのようにすすめていくのかなど、課題は明確になっていますが、具体的なとりくみがすすんでいません。
  ②組織と運動の改革・強化に向けた基本方向は、この間論議してきた「綱領」改正や「行動指針」に明確に示されています。こうした基本方向を実践していくためには、中央本部-都府県連-支部(地区協議会)が双方向での論議を重ねることで、問題意識ととりくみ課題を共有していくことが必要です。また、組織と運動の改革・強化に向けて確認しておかなければならないことは、今日的な部落差別のあらわれ方をどのように捉えるのかということです。部落差別事件だけではなく、日常生活や経済活動のなかにあらわれる部落差別にもとりくんでいくことで、生活・福祉の課題、格差や貧困を克服していく課題につなげていくことが重要です。地域のなかの一人ひとりの想いや部落差別への怒りを受けとめ、困難な課題にたいして、ていねいなとりくみのもとで解決策を見出すこと、差別の現実を変えていく、乗り越えていくことを運動の結集軸にしていかなければなりません。これまでの地域での相談活動、世話役活動を通じて蓄えてきた解決力を共有化することで、運動と組織の改革・強化をめざしていくことが求められています。
  ③さらに、全国水平社創立以来の闘いの到達点と意義、そして課題を今日的に確認しながら、これからの部落解放への確かな道筋を示していくことが必要です。部落解放運動は、国内外の差別撤廃と人権確立、平和と民主主義を守る闘いと協働しながら、「差別撤廃・人権確立」を日本社会での社会的価値観や規範として定着させつつある段階にまで押し上げてきました。また、「全国水平社創立宣言」にもとづく部落解放運動が、多くのマイノリティの権利回復と人間的誇りを取り戻すためのとりくみの発展に大きく貢献してきたことや、反差別国際運動(IMADR)の結成と活動を通じて国際人権基準を進展させる闘いでも大きな成果をあげてきました。この「全国水平社創立宣言」の世界記憶遺産への登録のとりくみも水平社博物館などの関係団体と連携しながらすすめます。
  ④また、「特措法」時代33年間の総括と合わせて、「特措法」後の地域の実態や部落差別の現実をどのように捉えるのかなど、課題克服に向けた方策を論議していくことも重要です。部落差別とは何かを根源的に問い返し、個人的な感覚論や抽象論ではなく、差別実態の正確な把握をもとにしながら、具体的なとりくみ課題を明確にしていかなければなりません。私たちは、全国水平社創立以来の闘いのなかで、継承すべきものと克服すべきものを明確にしながら、継承・発展させるべき成果を共有化していく必要があります。さらに、克服すべき誤りや弱点を隠蔽することなく真摯に教訓化することが求められています。そうした真摯な論議のなかから、これからの部落解放運動を発展させていくための組織論や運動論を打ち立てていくことが急務の課題です。
  ⑤こうしたとりくみを具体化していくために、「起業(企業)・農水・生労・人材育成本部」を設置し、論議を開始しました。まだまだ不十分ですが、各運動部の課題を整理し、明確化するなかで、横断的なとりくみをすすめています。また、組織と運動の改革・強化につながる人材育成をすすめていくためのとりくみも不十分ですが、中央解放学校での学習を含め、青年・女性を中心にとりくみ課題の共有化や実践交流を具体的にすすめていきます。
  ⑥以上のような現状認識、問題意識のもとで、今大会では、「全国水平社創立宣言」にある自主解放の思想と各地での部落解放運動の実践をふまえ、社会的排除を許さず、部落内外の社会連帯の実現をめざす闘いを大胆にすすめ、厳しい情勢を乗り越える部落解放運動のあらたな方向を論議していくことが求められています。

(3)組織と運動の改革・強化に向けて、全国的な議論を展開しよう
  ①昨年は全国水平社創立90年という大きな節目の年でした。3月の京都での記念集会では、90年にわたる部落解放運動が、国内外の差別撤廃と人権確立、平和と民主主義を守る闘いと協働しながら、「差別撤廃・人権確立」を日本社会での社会的価値観や規範として定着させつつある段階にまで押し上げてきていることをあらためて確認してきました。さらに、「全国水平社創立宣言」にもとづく部落解放運動が、多くのマイノリティの権利回復と人間的誇りを取り戻すためのとりくみの発展に大きく貢献してきたことや、反差別国際運動(IMADR)の結成と活動を通じて国際人権基準を進展させる闘いの重要な一翼を担う、反差別国際連帯の中心的な闘いをすすめてきたことを明らかにしてきました。
  ②こうした全国水平社創立90年の闘いの到達点と意義を今日的に確認しながら、これからの部落解放への確かな道筋をつかみとる真剣なとりくみが求められています。この作業は、「特別措置法」時代33年間の総括と合わせて、「特別措置法」後の現状認識と総括の論議をもとにすすめることが重要です。部落差別とは何かを根源的に問い返し、具体的な差別克服への方策を打ち出すために、90年かけてなお克服できていない部落差別を、個人的な感覚論や抽象論ではなく、差別実態の正確な把握をもとにしながら、具体的なとりくみ課題を明確にしていかなければなりません。
  ③この間とりくんできた「綱領」改正や「行動指針」の策定も、こうした部落解放運動の基本方向と当面の目標を明確にするためのものです。そのためにも、組織と運動の改革・強化を最重要課題として、中央本部-都府県連-支部(地区協議会)が双方向での論議を重ねることで、問題意識ととりくみ課題を共有していくことが必要です。組織と運動の改革・強化に向けて確認しておかなければならないことは、今日的な部落差別のあらわれ方をどのように捉えるのかということです。部落差別事件だけではなく、日常生活や経済活動のなかにあらわれる部落差別にもとりくんでいくことで、生活・福祉の課題、格差や貧困を克服していく課題につなげていくことが重要です。地域のなかの一人ひとりの想いや部落差別への怒りを受けとめ、困難な課題をていねいなとりくみのもとで解決策を見出すこと、差別の現実を変えていく、乗り越えていくことを運動の結集軸にしていかなければなりません。これまでの部落解放運動には、地域での相談活動、世話役活動を通じた、そうした解決力を蓄えてきた素地が必ずあります。このとりくみを全国的に経験交流、共有化することで、運動と組織の改革・強化をめざした課題を明確にしていくことが必要です。
  ④昨年の第69回全国大会以降、こうした課題のとりくみを具体化していくために、「起業(企業)・農水・生労・人材育成本部」を設置し、論議を開始しました。まだまだ不十分ですが、各運動部の課題を整理し、明確化するなかで、横断的なとりくみをすすめています。また、組織と運動の改革・強化につながる人材育成をすすめていく方向を打ち出しています。全国水平社創立いらいの90年の闘いのなかで、継承すべきものと克服すべきものをしっかりと峻別する作業をすすめ、継承・発展させるべき成果を明確にしていく必要があります。一方、克服すべき誤りや弱点を隠蔽することなく真摯に教訓化することが求められています。そうした真摯な論議のなかから、これからの部落解放運動を発展させていくための組織論や運動論を打ち立てていくことが急務の課題です。「全国水平社創立宣言」にある自主解放の思想と反差別共同闘争の実践をふまえ、部落内外の社会連帯の実現をめざす闘いを大胆にすすめ、厳しい情勢を乗り越える部落解放運動のあらたな展望を内外に示すことが求められています。

2 2014年度(第71期)の重点課題
(1)「人権侵害救済法」実現に向けた闘いの再構築をすすめよう

 ①人権の法制度確立をめざす闘いとして、「人権侵害救済法」早期実現に向けたとりくみをすすめてきました。とくに「民主党政権のもとで法制定を実現する」という基本方針を確認し、「人権委員会設置法案」制定に向けながら、中央集会や国会議員要請行動をはじめ、政府・与党への働きかけを中心に全力をあげてきました。
  ②「人権委員会設置法案」は、国内人権機関としての「人権委員会」について、その独立性を担保するために国家行政組織法の第3条にもとづく機関として提案されました。また、メディア規制条項を外すなど一定の評価ができますが、法務省外局としての所管問題や人権委員会の権限問題など、多くの問題点も指摘されてきました。しかし、中央実行委員会での論議の集約として、多くの不十分点があったとしても、現実的に成立可能な今日的な条件である3条委員会として、「政府から独立した人権委員会」の設置を最優先し、法実現に全力をあげてきました。将来的に、「望ましい人権委員会」としての充実・改革に向けては、「5年後の見直し」を視野に入れて、確かな条件を担保することとしました。この基本姿勢を堅持しながら、法制定実現に向けた集中的な国会闘争態勢のもとでとりくみをすすめてきました。中央実行委員会および都府県実行委員会はもちろんのこと、日本労働組合総連合会(連合)や部落解放中央共闘会議をはじめ、行政・企業・宗教関係団体などがそれぞれの立場でさまざまなとりくみを展開し、閣議決定をさせた闘いの到達点を確認することが必要です。
  ③こうしたこの間の闘いの到達点や成果をふまえ、あらためて「人権侵害救済法」制定に向けた闘いの再構築にとりくみます。これまでのとりくみでは、差別事件や人権侵害による被害救済という立法事実をもとに、何よりも3条委員会としての独立性を最優先した現実的な闘いを展開してきました。政府にも、「パリ原則」をふまえた国内人権機関の設置が必要であるとの姿勢を明確にさせてきました。こうした成果をふまえ、憲法を具体化していくという人権の法制度確立に向けた闘いの原点を確認しながら、「人権侵害救済法」制定のとりくみを再構築していきます。とくに「障害者差別解消法」が成立したことをふまえ、差別の定義や被害救済機関の創設などの課題について、「人権侵害救済法」との関連も含めて学習、検討をすすめます。
  ④当面、中央実行委員会や都府県実行委員会の加盟団体との協議をすすめ、さまざまな人権課題についての制度・政策要求を集約し、それをもとに政府交渉などにとりくみます。こうしたとりくみをすすめながら、法制定に向けた運動の裾野を拡げ、有利な政治的社会的条件づくりをすすめます。また、中央行動と都府県段階のとりくみを効果的に結合して闘いをすすめます。
  ⑤これまでも明らかにしてきたように、「人権侵害救済法」制定の闘いは、人権の法制度確立に向けた当面の最重要課題です。法制定の政治責任、政府責任、国際的責務をしっかりとふまえながら、独立性、実効性のある国内人権機関の設置を中心にした「人権侵害救済法」制定の意義を再確認し、厳しい情勢のもとでのとりくみを全力ですすめます。

(2)狭山再審闘争の勝利とえん罪防止のための法制度確立に向けて全力をあげた闘いをすすめよう
 ①狭山の闘いは、事件発生から50年を迎えました。第3次再審闘争では、2009年9月に裁判所、検察官、弁護団による三者協議が開始されて以降、130点をこえる証拠開示がおこなわれています。とくに、石川一雄さんが逮捕当日に書いた上申書などが証拠開示で明らかになり、筆跡鑑定とともに新証拠として提出されています。また、万年筆、鞄、腕時計の3物証に関する捜査報告書などの証拠も開示されています。弁護団は、腕時計に関する新証拠も提出しました。石川さんの「自白」によって発見されたという腕時計が被害者のものでないという疑いを示す重大な証拠です。さらに被害者を後手に縛った手拭いが石川さんの家のものではないことを示す新証拠や石川さん宅で発見された万年筆が被害者のものでないことを示す新証拠など、これまでに120点の新証拠を提出しています。このようなとりくみの成果をふまえ、狭山第3次再審の実現と石川さんの無罪をかちとるために、証拠開示と事実調べに向けた闘いをすすめます。
  ②一方、検察側は、その後の弁護団の証拠リストの開示要求も拒否し続けています。あらためて証拠開示とともに証拠リストの開示も要求していかなければなりません。この間、開示された証拠によって、石川さんの無実を示す120点の新証拠が提出されています。こうした証拠開示をさせてきたのは、弁護団のとりくみとともに、石川さん、早智子さんの高裁前でのアピール行動や全国各地での署名活動、証拠開示の法制化要求のとりくみ、住民の会や中央共闘会議、同宗連などによる要請行動の成果です。
  ③この間、「東電社員殺害事件」での再審無罪判決をはじめ、足利事件や布川事件など、あいついで再審無罪判決が出されましたが、いずれも証拠開示と鑑定人尋問などの事実調べが再審開始の大きな力となっています。こうしたえん罪事件のとりくみを教訓にし、えん罪防止に向けた証拠開示と取り調べの全面可視化の法制度確立に向けた全国運動を強化していく必要があります。
  ④狭山事件50年の闘いをふりかえるとともに、証拠開示と事実調べを求める世論を高めるために、当面、映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」の上映会や、各地での集会とパネル展示などのとりくみを強化します。また、闘いの財政基盤を確立するために、狭山闘争基金の検討など創意工夫した闘いをすすめます。

(3)差別糾弾闘争を強化し、差別撤廃に向けた協働のとりくみを前進させよう
 ①差別糾弾闘争は、差別が社会悪であることを訴えるとりくみであり、「差別糾弾闘争強化基本方針」にもとづき、差別事件の背景と原因、課題などを明らかにすることが重要です。また、差別事件の実態を広く社会的に明らかにし、再発防止に向けた制度改革につなげていくことが必要です。
  ②そのためにも、都府県連での差別糾弾闘争の成果の共有化と、今日的な差別事件の集約、分析をすすめます。とくに、土地差別調査事件や戸籍等不正取得事件などのように、全国的にとりくむ差別事件については、全国糾弾闘争本部長会議などで論議し、統一的な闘いをすすめていくことが重要です。この間の「過去帳」開示問題や全国的にとりくんでいる「Y住宅販売会社差別事件」など、中央本部と関係都府県連での協議をふまえ、課題ととりくみ成果の共有化をすすめ、広く社会に差別事件の実態を訴え、関係省庁、業界の体質改善や制度政策の変革を実現します。
  ③差別事件だけでなく、生活圏域内であらわれるさまざまな差別の実態を集約し、中央糾弾闘争本部で闘いの基本方向を論議します。たんに事件対応的なとりくみだけではなく、差別のとらえ方や差別糾弾闘争の理論的な深化は、部落解放運動の今日的な重要な課題です。こうした論議は、さまざまな立場からの問題提起も含めて、差別撤廃と人権確立社会に向けた協働のとりくみとしても、部落解放運動を活性化させることにつながります。
  ④このように差別糾弾闘争は、差別をめぐる真摯な議論の場です。現代的な差別のあらわれ方や差別の実態をていねいに論議していくことが必要です。あらためて差別糾弾闘争を、地域の日常的な活動の基本に位置づけて、差別-被差別の関係性の克服に向けた実践としてすすめることが求められています。本人通知制度の導入に向けた全国的なとりくみのように、差別撤廃に向けた制度変革や政策要求につながる差別糾弾闘争の前進が、地域での支部組織の強化と信頼される運動の再生にとっても重要な課題です。

(4)地域の生活に密着した闘いをすすめ、運動と組織の改革・強化にとりくもう
 ①この間継続的にすすめている運動と組織の改革・強化の基本方向は、新たな「綱領」や「行動指針」にもとづき、地域の生活圏域でこれを具体化する実践にとりくんでいくことです。とくに、今日、安倍政権の新自由主義路線によって、格差拡大がすすむなかで、もっとも困難が集中するとされる部落の実態も格差や貧困の問題が深刻化しています。また、部落内の生活要求も、階層別によってさまざまな違いが生まれてきています。こうした部落の厳しい実態とともに、階層別の実態などを正確に把握し、それぞれの要求を集約する運動のスタイルを基本にすることが重要です。
  ②さらに要求を集約することで、行政交渉を強化するとともに、その実現に向けた手段を具体化していくことが必要です。生活・福祉のとりくみでも、一般施策では解決できない課題を、部落解放運動だからこそのとりくみで克服していくことが、部落内外で信頼される組織と運動づくりにつながります。同時に、地域や職場を含む日常生活のなかにあらわれる差別の実態を的確につかみとり、差別への怒りを結集するなかで、新たな運動展開と組織建設に向けたとりくみと結合していくことが必要です。
③これまでの運動と組織の改革・強化に向けた論議では、少子高齢化や若者の地区外流出、市町村合併による同和行政の転換や後退などの課題が明らかになっています。また、部落解放運動は、総体的に「運動の停滞」、「組織の減少」、「財政の困窮」、「人材の不足」という困難な状況に陥っており、これを乗り越えるための具体的なとりくみが求められていますが、まだまだ不十分です。こうした都府県連、支部の現状を直視しながら、課題の克服に向けた全国的な論議を積み重ねてきましたが、今後さらにその内容の具体化、実践交流をとおしての問題意識の共有化をすすめていきます。
  ④そのためにも、支部活動の強化が必要です。都府県連がそれぞれの支部活動の実態を十分に把握し、活動の活性化に向けた課題を明らかにしていくことが求められています。それぞれの支部の特徴、特色を生かしながら、あくまでも地域の生活に密着した課題にとりくむことをめざします。都府県連でも同様に、それぞれの組織の特性を生かし、新たな運動に対応しうる運動と組織の改革・強化に向けたとりくみをすすめることが必要です。この間、導入してきたブロック別執行体制は、そうした双方向の論議をすすめるためのものです。たんに中央執行部からの連絡事項の伝達ではなく、そのときどきの全国的な闘いの基本方向の意思統一はもちろんのこと、それぞれの都府県連のとりくみ課題の交流や成果の共有化をすすめ、都府県連相互のネットワーク機能の強化をめざします。中央執行部もそうした実践から学び、全国的なとりくみ方針に反映させていくための協議機関として機能させていくことが必要です。今後とも、地方協議会との連携も深めながら、都府県連組織の強化に向けて、柔軟で弾力的な運用で実効性のあるものにしていかなければなりません。
  ⑤組織建設の重要な課題として、各地域で生活に密着した運動課題の発掘とそれを具体化する「仕事づくりへの事業」のとりくみをすすめます。さらに、「人材育成本部」での論議を精力的にすすめ、社会性や公益性をもった「社会的起業・企業」のとりくみなど、すでに各地域でとりくまれている組織内外の先進的事例を集約し、経験交流、実践交流をすすめます。
  ⑥「人権のまちづくり」運動をはじめ、部落内外をつなぐ協働のとりくみをすすめていくことをとおして、社会連帯の実現をめざします。さまざまな分野で、部落の枠をこえた多様な協働したとりくみをすすめることによって、部落解放運動の可能性を大きく拡げていくことが重要です。

 

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