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部落問題資料室
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原点に戻ることが重要ー過去帳開示問題と宗教教団のとりくみ

「解放新聞」(2014.05.19-2667)

 1979年に米国・プリンストンでひらかれた第3回世界宗教者平和会議での差別発言にたいする糾弾会のとりくみを契機に、宗教教団(者)によって部落差別撤廃に向けて結成されたのが、『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(同宗連)である。同宗連は、教義や教団の成り立ちなどの違いをのりこえ、それぞれの教団の主体性を尊重しながら、それまでの各教団の部落問題へのとりくみの弱さを反省し、部落問題解決に果たす宗教教団(者)の役割を自覚し、行動することで、宗教界そのものにも大きな影響を与えてきた。
  1981年の同宗連の結成後も、それぞれの教団では差別事件が起こり、あらためて差別体質の克服や同和・人権研修体制の充実などがすすめられてきた。また、とりくみのなかでは、教団の主体性を尊重しながらも、部落差別撤廃に向けた宗教教団や宗教者としてのありようをきびしく指摘してきた。とくに、仏教教団にたいしては、差別戒名(法名)や過去帳問題について、まさに宗教教団(者)として許されないことを確認し、さらに、それぞれの宗祖の教えに反するものとして、その反省にたったとりくみを求めてきた。

 差別戒名(法名)や過去帳のなかの差別記載については、今日でも、各教団とも積極的に改正作業にとりくんでおり、一方で過去帳の閲覧禁止措置も取られてきた。
  しかし、2012年にテレビ番組のなかで、タレントのルーツを探るという企画で、浄土真宗本願寺派の寺院が、過去帳(実際は門徒朋細簿であったが、寺院関係者は「過去帳」として紹介)を見せるという問題が起きた。われわれは、かつて過去帳が差別身元調査に使われてきたことをふくめて、これまでの教団のとりくみの内実をきびしく問い、教団全体の問題としての受けとめを強く要請してきた。
  それは、教団として、今日の部落差別の実態にどのように向き合ってきたのかを問い、その上で、過去帳の閲覧禁止という措置が教団・寺院・僧侶にとって、どのような意味をもっているのかという問題提起でもあった。「同宗連」の結成がそうであったように、各教団にとっても、差別の現実から出発し、差別と向き合うことによってしか、それまで差別を容認し、そうした社会意識に埋没してきた教団・僧侶の変革が可能になるはずがないという問いかけである。

 部落差別撤廃に向けて宗教教団(者)が果たす役割にたいするわれわれの期待は大きい。それは、多くの宗教教団(者)が、現代より深刻化している格差社会のなかで、平和や平等・人権という本来の人間としてのありよう、人間としての解放をめざしているところにある。
  しかし、浄土真宗本願寺派の過去帳開示問題以降も、浄土宗、真宗彿光寺派、天台真盛宗、浄土宗西山禅林寺派、曹洞宗と、あいついで過去帳開示問題が起きている。私たちは、各教団に抗議の申し入れをおこない、見解を明らかにするように要請しているが、まさに、これまでの部落差別撤廃に向けたとりくみが形骸化しているといわざるをえない。もちろん、安易に寺院にたいして過去帳開示を求める報道機関の問題も大きい。お寺に行けば過去帳が見られるということで、いまなお続いている差別身元調査を助長することになっていることを、しっかりと認識すべきである。
  まさに、なぜ過去帳が閲覧禁止措置になっているのか、これまでのとりくみを点検し、今日の部落差別と向き合う宗教教団(者)の姿勢が問われることへの自覚を深めてもらいたい。
  なぜ過去帳開示問題が連続して起きているのか、各教団はもちろん、仏教界全体の課題としても提起していきたい。

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