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部落問題資料室
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主張

 

土地差別を許さないとりくみを全国的に強めよう

「解放新聞」(2014.08.25-2680)

 一昨年11月に和歌山県で発覚した「Y住宅販売会社差別事件」にたいする第2回糾弾会を7月末におこない、Y住宅本社の責任、事件の原因や背景など全容がほぼ明らかにされた。
  Y住宅社員による競売物件の調査および競売仕入チェック表(社内文書)への差別記載など事件が発覚していらい、行政機関の指導や調査、そして和歌山県連と連携しての事実確認会がおこなわれてきた。さらにその過程で、和歌山県をふくむ全国13府県の支店でも同様の「差別調査・書き込み」の事実が判明し、各府県連でも事実調査や確認がおこなわれてきた。そうした1年以上のとりくみをへて、4月の第1回糾弾会に続いておこなわれた。
  事件は、営業担当者が「同和地区の物件は売れない」「売れないと自分の成績に関わる」と考え、「同和地区の物件は扱いたくない」との思いから、競売物件をチェックし、「同和地区の物件だから扱わないでほしい」とのメッセージを本社へ送ったのである。しかし、本社では「見たことがない」「記憶にない」(本社役員)と今日まで無視し続けてきた。
  会社の責任について当初、「本社の指示ではないが」として担当者がおこした問題であるとの立場をとってきた。しかし、Y住宅が創業いらい35年間、社員研修などまったく部落問題にとりくんでこなかったことや企業内公正採用選考人権啓発推進員も担当者を報告しているだけという事実。さらに宅地建物取引業法(今回の事件は業法違反行為)の徹底もされていないなど今日までのY住宅の姿勢が土地差別を容認し、加担する企業体質を作りあげてきたのである。そのことが、今回の事件を引きおこしてきた最大の原因であり問題点である。
  この指摘にたいし糾弾会で役員から「決済をしている以上は当然見ている。「見ていない」というのは、「記憶にない」ということで黙殺したのだと思う。会社として、何にもとりくんでおらず、差別記載のチェックもできていないなど、会社のなかにそうしたとりくみや問題意識への環境がなかった以上、今回の5年分の調査以前から差別記載があったのであろうと考えられる」と発言し、Y住宅本社自身に問題があることを認めた。

 Y住宅販売会社差別事件の背景に、市民のなかに根強く存在する部落にたいする「忌避意識」があることはいうまでもない。そして、その市民意識をうけ入れ、あるいは同調し、土地差別を常態化させている不動産・住宅業界の実態がある。さらに、その業界を指導監督する立場にある国土交通省をはじめ関係行政の姿勢やとりくみにかかわる問題でもある。
  差別記載をした関係者は、異口同音に「同和地区の物件は売れない」と証言し、「顧客からも聞き合わせがある」と答えている。また、同僚や上司、同業者の集まりで聞いたといっている。さらに、日常的に行政窓口への「同和地区の所在確認」の電話が入り、以前から大阪をはじめ各地で土地差別事件がおきている。
  差別記載をしたY住宅関係者は、自身がもち続けてきた差別意識と経験や業界の状況のなかで、顧客のもつ意識と同調し、差別調査(差別記載)事件を引きおこした。そして、Y住宅本社は、差別記載のチェックも指摘もできず、放置・黙殺し続けてきた。糾弾会を通じて、創業いらい一度も研修もせず、今回のような差別行為を禁止する宅建業にとってきわめて重要な宅地建物取引業法ですら社員に周知徹底されていないY住宅の実態が明らかにされたが、これは今日の土地差別の実態からすると、ほんの氷山の一角といえる。
  国土交通省は、1996年に「宅地建物取引業の社会的責務に関する意識の向上について」、2001年に「宅地建物取引業法の解釈・運用について」と二度にわたって業界団体に通知をだし、その徹底をはかるとともに、昨年7月にも同様の文書を出している。しかし、今回の事件を通じて明らかなように、Y住宅をはじめ土地差別が常能化する不動産・住宅業界の実態からすると、実際のところ法の趣旨が現場の担当者に周知れていないなど、国土交通省の指導の効果があがっていないのである。また、国土交通省の文書は、関係8団体に出されているが、地方では、この8団体の一部しか組織されておらず、中央段階で止まっているのが実情である。
  さらに、業界自身のとりくみや自治体のとりくみが、一部を除いて、ほとんどされていないのが実態である。
  Y住宅販売会社差別事件は、こうしたさまざまな要因と背景のなかでおきたのである。

 Y住宅販売会社差別事件は、Y住宅の土地差別への同調と加担という責任とともに、今日のさまざまな課題を提起している。もちろん、Y住宅自身が事件を深く検証し、総括するなかで差別を許さない企業へと再生し、業界にその影響を与えていくことが重要である。
  また、土地差別を許さない社会の構築に向け①宅建業をはじめ業界団体への働きかけ②関係自治体への要請や交渉③国土交通省への交渉を徹底しておこなっていかなければならない。
  「文書通達」にとどまっている国土交通省にたいしては、点検や研修(差別行為の禁止など)の徹底。業界団体が自主的にとりくむためのサポートを求めていく。都府県など関係自治体は国土交通省と同様のとりくみが必要であり、より現場に近い存在として各協会や業者への直接指導を求めていく。さらに、業界団体へは「ガイドライン」の策定や研修の徹底など自主的なとりくみを強く求めていかなければならない。
  また、全国的な土地差別の実態をふまえ、とくに自治体や不動産・住宅関係業界へは、Y住宅販売会社差別事件の関係だけでなくすべての都府県連で早急にとりくみを展開していくことが必要である。
  Y住宅販売会社差別事件をはじめ一連の土地差別事件の背景に、市民のなかに根強く存在する部落にたいする「忌避意識」が存在することは明らかだ。今日、続発する身元調査や「出自」を探る行為の要因も部落への「忌避意識」のあらわれといえる。これは同時に、すべての差別事件にいえることで、そしてそのことは、あらゆる差別と人権侵害に連動することである。
  そうしたことからも、教育啓発の徹底、差別の禁止、被害者の救済を基本に「人権侵害救済法」の早期制定を求める運動を、さらにおしすすめていかなければならない。

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