新年のご挨拶

対立と分断に抗して、連帯と協働の闘いをすすめ、
部落解放運動を大きく前進させよう

 

 新たな年を迎えるにあたり、部落解放同盟に結集する全国の同盟員と兄弟姉妹の皆さんの献身的な活動と、日頃より部落解放運動のとりくみに連帯していただいている皆様方に心より感謝申し上げます。

 今日の国際社会においては、ロシアによるウクライナ侵略戦争の長期化とともに、昨年10月いらいの、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘激化をはじめ各地で軍事的な衝突が続いており、対立や分断がいっそう深まっています。

 また、岸田政権は、内閣支持率の低迷を受けて、「減税」措置などを打ち出しましたが、一方で、軍事費の増大と、財源確保のための大増税をすすめる姿勢を転換しようとはしていません。さらに、統一教会問題や派閥の裏金問題で、内閣官房長官をはじめとした閣僚や党役員が交代するなど、政治不信がすすみ、岸田政権への批判が強まっているにもかかわらず、あえて憲法改悪の策動をすすめようとしています。

 しかも岸田政権は、アメリカ追従の姿勢をより強めながら、沖縄の辺野古新基地建設を強行するとともに、日米韓の軍事同盟化をすすめています。とくに、中国や朝鮮民主主義人民共和国への露骨な敵視政策や「台湾有事」などを利用して、憲法違反である武器の供与などの軍事的支援をおこなうことを常態化しようとしています。

 こうした情況に抗して、私たちは、連帯と協働を強化し、差別と戦争に反対する闘いを前進させていかなければなりません。

 昨年の部落解放運動のとりくみでは、「部落差別解消推進法」の具体化に向けて、インターネット上の部落差別情報の削除について、「プロバイダ責任制限法」を強化改正していく要請を強化してきました。また、昨年6月には、鳥取ループ・示現舎裁判の控訴審で、東京高裁が、今日的な厳しい部落差別の実態を指摘し、実質的に「差別されない権利」を認める画期的な判決を出しました。

 しかしながら、悪質な差別情報や差別動画はいまだに放置されたままであり、プロバイダによる自主的な判断だけに任せることなく、削除するためのしっかりとした立法措置が必要です。

 さらに、昨年11月には、大阪府連による差別動画削除に向けた裁判闘争がはじまりました。また、続いて埼玉や新潟でもとりくまれますが、全国的な支援のもと、裁判闘争での勝利はもちろんのこと、差別や人権侵害について、裁判に訴える以外に有効な手法がない実態をしっかりと訴えていくことが重要な課題です。

 2016年以降、「部落差別解消推進法」や「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」「アイヌ施策推進法」の個別人権課題の立法措置が実現しました。また昨年は、当事者団体の強い批判があったものの、「LGBT理解増進法」も成立しました。それぞれの法律には課題や問題点も多くありますが、そうした内容を共有しながら、国内人権委員会の創設を中心にした人権侵害救済制度の確立をめざすことが重要です。

 また、昨年には、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会による来日報告書が公表されました。報告書では、ジャニーズ事務所での性加害問題だけでなく、多くの人権団体や政府、企業などとも対話をおこない、部落問題、障害者や女性のなどへの差別や人権侵害事象についてもとりあげられました。さらに報告書は、こうした差別問題、人権問題の解決のために、国内人権委員会の設置を提言しています。

 昨年11月には、自民党差別問題に関する特命委員会の役員が決定しました。私たちは、与野党の人権議連を含めて、超党派でのとりくみがすすめられるように働きかけを強めていかなければなりません。

 国際的な人権基準ともいうべき国内人権委員会の創設に向けて、全力でとりくみをすすめましょう。

 狭山再審に向けた闘いでは、弁護団が22年8月に東京高裁に「事実取調請求書」を提出し、新証拠を作成した11人の専門家の証人尋問と、石川さん宅から「発見」された万年筆インク資料の鑑定を裁判所が実施することを求めてきました。

 とくに、狭山事件の重要な争点である万年筆については、「発見」された万年筆インクには、被害者が事件当日に書いた「ペン習字浄書」のインクに含まれているクロム元素が検出されないことを科学的に明らかにした新証拠です。この鑑定結果によって、「自白通り被害者の万年筆が発見された」という有罪判決の認定に合理的な疑いが生じたことになり、当然、東京高裁は、鑑定人尋問、インク資料の鑑定をおこなわなければなりません。

 私たちは、弁護団の「事実取調請求書」提出を受けて、東京高裁の大野勝則・裁判長にたいする緊急要請署名にとりくみ、昨年末までに、52万筆以上の署名を集約してきました。しかし、大野勝則・東京高裁裁判長は、何らの判断をしないままに、昨年12月12日に定年退官しました。

 後任の家令和典・裁判長にたいして、あらためて鑑定人尋問、インク資料の鑑定の実施を求める署名活動や、新証拠の学習と教宣活動を強化していきましょう。なお、弁護団事務局長として精力的な活動をすすめてこられた中北龍太郎・弁護士が、昨年12月8日に逝去されました。長年にわたる再審実現に向けたとりくみに感謝するとともに、哀悼の意を表します。

 私たちは今後とも、石川一雄さんの無実の訴えに応え、再審実現に向けて全力をあげて闘い抜きましょう。

 新たな年も、このように重要な闘いに全力でとりくんでいかなければなりません。国内外で差別排外主義が強まっている時代情況のなかで、私たちの部落解放運動の果たす役割は、ますます重要になっています。部落解放運動の新たな展望を切り拓き、勝利の年にするためにともに奮闘しましょう。

2024年1月

部落解放同盟中央本部
執行委員長 西島 藤彦

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