新年のご挨拶

差別―被差別の関係を解き放ち
人間と社会の変革にとりくもう

部落解放同盟中央本部
中央執行委員長
組坂繁之

 新年あけましておめでとうございます。
 昨年は、一連の不祥事をめぐり、部落解放運動は戦後最大といえる危機をむかえました。それぞれの地域で奮闘されている一人ひとりの同盟員の皆さん、部落解放運動に心を寄せていただいている皆さんに深くおわびいたします。この間、私たちは、内外の率直な意見を謙虚に聞き、襟を正し、組織の総点検・改革運動にとりくんできました。
 また、「部落解放運動に対する提言委員会」を設置するとともに、組織内外のえせ同和行為を許さないために「「えせ同和行為防止」全国連絡会議」もたちあげました。
 私たちは水平社宣言に示された運動の原点にかえり、地をはうようなとりくみを展開し、失われた社会的信頼をとりもどすために全力をあげなければなりません。こうした努力なしに部落解放運動への共感をよびおこすことはできません。
 いま、政府は戦争ができる国づくりをめざしています。そのために、人権・平和・環境・民主主義を守り、発展させようとする運動を押しつぶそうとしています。私たちがめざす「人権侵害救済法」についても、「人権擁護法案」をできるだけ早期に提出するとの小泉首相(当時)答弁を反故にしようとしています。さらに国会内外でとりくみを強め、なんとしても、通常国会で人権委員会を設置し、簡易に、迅速に、人権侵害からの状態を救済するための法律(「人権侵害救済法」)の成立をかちとらなければなりません。鳥取での人権侵害救済条例も、さらにいい中身をもたせ、早期施行をめざすとりくみをさらにすすめます。
 狭山第3次再審のとりくみでは、街頭での活動も加え、100万人署名を早期に達成することが求められています。その力で、弁護団が3月末に提出する新証拠・補充書と合わせ、事実調べ、全証拠の開示をおこなうよう、東京高裁・高検に迫っていかなければなりません。一人ひとりの同盟員がオルグになり、石川さんの無実を説明し、多くの人たちの声を集めるとりくみに、力を合わせ、心をひとつにする闘いを組めば、必ず勝利をおさめることができる、と確信しています。
 戦争へ向かう政府の政策のなかで、とくに教育現場での統制が強化され、民族排外主義が煽られ、いじめが増加しています。また、非正規労働者が増加し、高齢者や社会的弱者とされる人びとへの福祉が打ち切られ、セイフティネットも破られようとしています。そして、強者はさらに強者に、弱者はさらに弱者にという格差社会ができあがり、固定化されようとしています。
 こうした閉塞化した社会のなかで生きる人びとの不満などが、部落差別などの差別事件として増加しています。自分とは異なるものにたいして排除の論理が組み立てられることになります。行政書士などによる戸籍などの不正取得事件にとりくむなかで、新たな「部落地名総鑑」が回収されたり、「電子版・部落地名総鑑」が発覚したのも、こうした状況のなかからです。
 「部落地名総鑑」事件などの差別事件にたいし断固とした糾弾闘争にとりくみ、事件の社会的背景を浮かび上がらせ、その原因へ迫っていくことが大切です。
 私たちは今回の一連の不祥事を契機にした同和・人権行政への攻撃を許さず、人権確立社会の実現をめざすとりくみをすすめていかなければなりません。
 通常国会では、共謀罪の新設をはじめ、憲法改悪への道を歩むための諸法案や在日米軍基地再編などに関連する法案などが提出されることが予想されます。基地反対のとりくみを粘り強くすすめてきた地域の共同闘争に学び、連帯しながら、軍事力を背景に世界を意のままに動かそうとする米国に追従し、その手先に自衛隊を組み入れようとする策動に反対していかなければなりません。
 私たちの運動は差別―被差別の関係を解き放ち、人間と社会を変革していくとりくみです。それだからこそ、みずからを律し、組織と運動の社会的信頼を高めていくことが求められています。
 私たちのめざすものは、部落解放・人間解放であり、人類最高の完成を期す社会をつくりあげることです。この高い目標に向かって、今年も一歩一歩、ともに力強く前進し、部落解放運動の再生をかちとりましょう。

 

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