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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2124号/03.06.16

記憶の比較文化論
-戦争・紛争と国民・ジェンダー・エスニシティ

都留文科大学比較文化学科 編  柏書房(定価3200円)

書籍画像 「記憶」をめぐり、権力を厳しく糾したのが「女性国際戦犯法廷」。
 本著は「記憶」とは自分自身のアイデンティティの意識の中心をなし、現実世界を理解する能力を形成し、「個別的な記憶」と「歴史を通過し変容した記憶がある」という。国民国家を支配する権力は国民統合をはかるために、後者を道具化-編さんし、利用し、国民に受容させてきた。「つくる会」がまさにこの作業をおこなっている。さきの創始改名発言もこの脈絡にある。
 各論文は未来についての判断に大きな影響をおよぼす記憶がどのようにつくられてきたかを切開した。テーマは実に多岐だった。日本の戦争責任がどれほど無記憶化されてきたかが、日本文学や中国民衆の記憶から検証される。アメリカで96年に断行された大幅な福祉削減に、アフリカン・アメリカ人女性にたいする米国民の記憶がいかに利用されたかの論考も鋭い。個を語ることでコミュニティーに刻まれた分断の記憶を問い、昇華を試みる北アイルランドの章は光っていた。 (汝)

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