「愛国」問答
これは「ぷちナショナリズム」なのか

香山リカ＋福田和也　著　　中公新書ラクレ（定価720円）

　日本の若い世代の右傾化がいわゆる「勝ち組」「負け組」の二手から来ていると論じた「ぷちナショナリズム症候群」。その著者、香山リカと、保守派の論客で知られる福田和也との対談をまとめたもの。近年、日本が対外的にはアメリカのナショナリズムに追随し、国内でも確実にナショナリズム化が進行している要因を、ポップカルチャー、言論界、アメリカとの比較などで双方の考えを展開している。
　香山は、前著でのべた「二手からの右傾化の波」が、本人には無自覚のまま確実に浸透しでいることへの疑問と、それが現実なのだから、と考える現実主義への反発を福田に問うている。福田は、アメリカがみずからを怪物と自覚している事実など現在のアメリカの状況、アメリカに抵抗するヨーロッパの状況をとく。
　最後に香山は、国の強弱のバランス以外で日本が主体性をもつこと、「勝ち組」以外の抜け道、さまざまな人が生きる「ゆるい社会」を模索する。私たちへの問題提起として受けとりたい。（謙）