イタリア人の働き方
国民全員が社長の国

内田　洋子　シルヴィオ・ピエールサンティ　著　　光文社新書（定価740円）

　「現在、イタリアの企業人たちの間に流れるスピリットは、人間性回帰である。世界の大半が、利益追求に躍起になっているのをよそに、イタリアは個人の幸せを基盤にした、新ルネサンス時代を悠然と進んでいるのである」（まえがきから）
　本書は、現代イタリアを生きる事業家・職業人15人の列伝。靴磨き、水上タクシー運転手、…悪魔払い、スクープカメラマンと仕事はさまざまだが、それぞれ「一人で仕事を始め、会社を興し、実績を作り、名前が知られるようになった」人だ。
　「成功することは、すなわち金銭的に裕福になることと同一ではない。本当の成功は、自己実現できたかどうかにあるのではないか」と著者は語る。「強者」をめざすのでなく「自己実現」をめざすこと―「弱者」を食うのでなく「弱肉強食」社会そのものを食い破ることを言外に願っているのだろう。その違いは、「人間性回帰」の魂―人の世の冷たさが、どんなに冷たいか、人間を勦はる事が何んであるか」の認識にこそあるのではないだろうか。（K・S）