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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2425号/09.06.29
 手元の本に1葉の写真。1953年4月28日のものだ。松川事件の仙台高裁での論告求刑の日。被告20人全員の、法廷の廊下と思われる場所でのスナップ。右上に、若き日の佐藤一(はじめ)さんが写っている。同年、1審についで一さんは死刑判決を受けた
▼1審判決後、被告は4つの誓いを立てた。2審で必ず勝利する▽真実をあくまで守る▽家族と獄外の同志を激励する▽身体を鍛える。だが、勝利はかなわなかった。どれほど悔しかっただろう。しかも、2審後、一さんは病に伏し病院に収容された
▼28歳の時に東芝労連の本部から福島の東芝労組にオルグとしてはいった。しかし、49年8月の列車転覆事件の首謀者の1人とされ、死刑判決を受けた。「有罪の証拠は一つもないが、無罪の証拠ならいくらでもある」(広津和郎)といわれたのがこの事件
▼仙台の弁護士会が証拠不明事項の報告を求めたのが「諏訪メモ」。57年に毎日新聞が地検に存在することを暴露。開示され、全員が無罪となった
▼勝利したのが63年、ちょうど狭山事件が起こった年だ。一さんは著書を執筆し、狭山にも積極的にとりくんだ。みずからの経験から証拠開示の重要性を強調した。あるとき、狭山現地で一さんに出会ったことがある。1人で現地調査の最中だった。O証言の検証中だという。本当に熱心な人だと感心した
▼その一さんが亡くなられた。国家権力によるえん罪をなくすこと、という遺志を受け継ぎたい。合掌。

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